インタビュー
更新日:2010年2月5日
食堂かたつむり
「食事に秘められたパワーを改めて実感できる映画にしたかった」多くの女性から支持を集め、40万部を超える小川糸の人気小説を映画化した『食堂かたつむり』(2010年2月6日(土)より公開)。柴咲コウ演じる倫子が、恋人に財産を奪われ、失恋のショックから声を失いながらも、夢であった料理人を目指し、料理によって確執のあった母親との絆を取り戻していく心温まる感動物語だ。監督を務めたのは、CMやアートディレクターとして幅広く活躍し、2003年に『ウール100%』で長編映画デビューを果たした、新進気鋭の女性監督・富永まい。原作を読んで、映像のイメージが一気に浮かんだという彼女に、今回単独インタビューを行った。
劇中では、人形劇のような愛らしいアニメーションの中に、リアルな食材や動物がCGでデコレーションされた奇想天外な世界、そしてユニークな歌とともに物語が繰り広げられる。その劇中歌について「物語は恋人に裏切られた倫子が、実家に帰ってきたところから始まるんですが、過去の話が重たいので、深刻に理由を話すより、笑って歌にするほうが観客も入りやすいと思い、歌詞を私が書きました。主人公が話せないことで、倫子の感受性の豊かさを、別の方法で自由に表現したかったんです。現実の世界にある、ちょっとしたファンタジーを、不思議な音楽と映像でみせることで、『こんなノリでいきますよ〜』という、準備体操として歌を用いました」。これまで、アニメやPVなどを数多く手掛けてきた監督が作り上げるコミカルで摩訶不思議な映像が、物語の深刻さを中和し、観る者に心地よい安堵感を与えている。
さらに、“食べることは生きること”という本作のテーマを表現することにあたり監督は「例えば、急いで電車のなかで食べたアンパンがその日のお昼の力になっているのに、人って食材に感謝して頂くという当たり前のことを、ついつい忘れてしまいがち。食べものには魔法のような力があって、すべてをうちのめされた人が、食べ物を食べることで元気を取り戻すことが出来る、食事に秘められたパワーを改めて実感できる映画にしようと心掛けた」とコメントした。
「余貴美子さんは魅力的な母親を演じてくれました」また、本作の重要なスパイスになるのが、余貴美子扮する倫子の母親・ルリコ。倫子を女手ひとつで育てあげた自由奔放なスナックのママ、ルリコは、飼っている豚のエルメスに、ブランド物の特注の餌を与え、鼻にパックをしてあげるなど、とにかく溺愛。
母親役・余について「ルリコは娘の変わりに豚を愛していているんです。そんなエキセントリックな母親を余さんは、『こんな人いないよ』と観客に思わせることなく、すっとんきょんだけど芯の部分で温かみある『こんな人いる、いる!』という魅力的なルリコを演じてくれました」と絶賛。
また、本作のエンディングには、豚にまつわるさらなる驚きの“結末”が用意されている。そのラストについて監督は「誰でも一度、感情移入したものを手放すのは、すごく難しいこと。この母親にとって一生料理人になる娘に、生きることを教えることが出来る、たったひとつの贈りものだったと思う」と語った。
生きていくうえで食べること、親が子を思う愛情など普遍的なテーマを丁寧に映し出した本作は、観る者の心を温かな余韻で満たしてくれるだろう。
富永まい東京都出身。ピラミッドフィルムに入社し、CMディレクターとしてキャリアを積み、数多くのアニメーションやショートムービーを手がける。2003年に『ウール100%』で長編映画デビュー。以後、PVやNHK教育テレビでアートディレクションを務める。2008年からはピラミッドフィルムから独立し、フリーランスとして幅広く活躍の場を広げる注目の女性監督。
(C) 2010「食堂かたつむり」フィルムパートナーズ
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