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インタビュー

『リンダリンダリンダ』山下敦弘監督インタビュー

『リンダリンダリンダ』山下敦弘監督インタビュー
 
『どんてん生活』『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』などで知られる大阪芸術大学出身の山下敦弘監督。これまで自らが語るように監督自身を投影出来る要素を含んだ作品を製作してきた。しかし、今回は「THE BLUE HEARTS」「女子高生」「コピーバンド」と、監督のイメージからも遠く離れた題材の映画『リンダリンダリンダ』。山下敦弘監督に与えられた計算式「THE BLUE HEARTS」+「女子高生」=。この解を監督はどのような手段で導き出したのか?

_____いつも、自分の中にある何かしらの経験だとか想いだとかそういったものを通して映画をお作りになってきたと思うんですが、今回はまったくそういったものがないところからのスタートだったとお聞きしましたが?

山下敦弘監督「文化祭は経験したことがあるので、そこはもちろん入りやすかったんですが、主人公が4人の女の子というところは、正直手応えとかも現場でさえ分からなかったというのが本音です」

_____具体的にどんな文化祭を過ごされたんですか?

監督「高校の時は、文化祭なんて、という感じで斜めから見ている顔をしながら、一番期待しているやつでしたね(笑)。何か事件おこんじゃないかなとか、女の子から呼び出されるんじゃないか(笑)とか、一回もそんなことはないんですけど、一番どっかで期待していたやつでしたね。高校3年生の時に、映画を作ったんですけども。それは、『ビー・バップ・ハイスクール』のコピーみたいなものなんです。その時は、全然恥ずかしくなかったけれども、結局、X-Japanをコピーしている友達と同じだったんですよ(笑)。X-Japanになりたいのは分かるけど、それは違うだろなんて、否定していていも、結局自分も同じだったんですね。満足感に浸っていて」

_____それではTHE BLUE HEARTSについては?

監督「兄貴がちょうど世代で、僕は小学生だったのでテレビから流れてくるTHE BLUE HEARTSは知っていましたね。兄貴の世代はちょうど、バンドブームが青春時代の世代だったので、家でガンガン(音楽が)かかっていたんです。だから、自分から音楽を聴こうと思わなかったんです。音楽を進んで聞かなかったんですけども、それでもTHE BLUE HEARTSはカラオケ行ったら誰かが唄うし、強烈な印象というものがありましたね」

_____話は少し変わりますが、今回始めて35ミリで撮られたようですが?

監督「自主映画からやって来て、単純に35ミリに憧れがありました。プロデューサーの狙いとしてあったし、そこで、ハイビジョンとかそういったものを使うというのは、アイデアの中になかったです。高崎のシネコンでラッシュを見た時は、恥ずかしくてしょうがなくて(笑)。すごくクリアじゃないですか、35ミリって。しかも大スクリーンで映写してくっきり分かるんで。完成してみて、大きい劇場で試写とかしているのを観て、今までの映画とやっぱり違うし、自分の映画でこういった(大きなスクリーンの)劇場でかけれるというのは、単純に嬉しかったですね。見えすぎて恥ずかしいというのは、ありますけど(笑)」

_____35ミリに初挑戦して、女の子4人という自分の中にない題材で映画を作ったわけですが、出演者4人の印象というのは?

監督「映画の中での彼女たちの醸し出す雰囲気と普段というのは、そんなに変わりないと思います。ただ、ソンさん(ペ・ドゥナ)は本当はもう24とか5なんで、普段よりも映画の中の方が幼く演じている感じはしますね。普段は、大人っぽくてちょっと、ドキッとするというかほかの子たちに比べると、大人っぽかったですね。役者さんのホテルはみんな同じだったので、見ていて4人が徐々にワイワイやるというか、仲良くなっていったので、これはもうほっときゃいいやって感じで見てましたね。お菓子で喜んだりしている姿は、なんかいいなぁとおもいましたね(笑)。

_____ペ・ドゥナさんの起用については?

監督「僕、韓国映画ってあまり見ないんですけども、エルマガジンの仕事で『ほえる犬は噛まない』っていう映画を観る機会がありまして、ポン・ジュノ監督とその前に会っていたこともあって、電話でペ・ドゥナさんに会わせて下さい、なんてお願いして、口約束で了解して貰ったり、とにかくタイミングが良かったのか、正直思いついた時、無理だろうなと思いながらも、接点はなくはないなと思って、出て貰えちゃいました(笑)」

_____そういった経緯でペ・ドゥナさん出演と言うことが決まったわけですが、実際に唄のことや言葉で難しさがあったんじゃないですか?

監督「歌に関しては不安があったんで出演交渉したすぐ後に、韓国に行ってカラオケで唄って貰ったんです。彼女はKiroroの歌を、唄ったんですけども日本人より上手いんじゃないの?って思うくらい上手かったんですよ、うん。後、言葉の壁で苦労するというのは、撮影前はリアリティなかったんですよ。同じアジアだからかなぁ、なんかいけるんじゃないのみたいなかんじで、あんまり考えてなかったんですけど、逆に難しいところもありましたね。見てるものとか、感覚も近いんですけど、微妙にやっぱりずれていて、そこがもどかしいというか。とくに、ペ・ドゥナさんの方がイライラしてましたね。身振り手振りで伝えられるところもあるんですが、それ以上となると通訳を通さないといけない。その通訳の存在が、ペ・ドゥナさんはイライラしてた感じでしたね。僕がもう少し英語出来れば良かったんですけども、全然できないんで。でも、彼女はそういう時すぐに顔に出るんですよ(笑)。かなり鈍感な僕でも、分かるんですよ。だから、分かりやすくてよかったですね(笑)。後、彼女は無意識を芝居出来る人だと思います。何も考えていない顔を演技出来る頭の良い人だと思いますね」

_____ほかの出演者の方はどうだったんでしょう?

監督「香椎由宇さんは写真で見てすごい美人だなぁと思ってたんですけど、実際会うとすごく幼いんですよね。やっぱり高校生だなというか。その時、僕はまだTHE BLUE HEARTSのコピーバンドをする女の子たちの映画っていうところで、まだ悩んでいる部分があったんですけども、彼女が『女の子がTHE BLUE HEARTSやるって格好いいですよね』とボソッといったんですよね。それで、今の高校生でもそう思うんだと。それで、彼女は結構男っぽいところがあるんでギターに良いなと。ベースの関根史織さんは、やっぱりミュージシャンを1人入れたいよねというところからですね。最後に決まったのが前田亜季さんだったんですが、前田亜季さんは、普段会うと普通の女の子なんですね。それで、芝居するとやっぱり子役からやって来ているベテランというか。そのギャップがすごいんですよ。子役からやってきてるんで、体に染みついているんじゃないかなと思いますね。普段は本当に何も考えてないように見えるんですけど。でも考えてるし、とにかく驚かされましたね」

_____最後にペ・ドゥナさんが「リンダ リンダ」を唄うのを見て思わず泣きそうになったそうですが、それはどんな気持ちで?

監督「もらい泣きですね(笑)。ペ・ドゥナさんが唄いながら泣いてきているのを見て、自分も泣けてきたんですよ。人が一生懸命やっているところを、斜めから見てしまうところがあったんですけど、そういうところも超えて感動してしまった。おじさんになったのかなぁ(笑)。そういうものを否定したくないという気持ちに変わってきているのは確かです。それに、ペ・ドゥナさんが日本語も分からず日本に来て、最終日にあのシーンを撮ったんですけど、あそこまで来たのに感動したというのもありますね」

まさにどうなるか分からない文化祭とも呼んで良いような流れの中、完成を迎えた『リンダ リンダ リンダ』。一生懸命やる姿を素直に認められたと語る監督の言葉の中に、この物語の全てが詰まっているのかも知れない。新展開?を見せた山下敦弘ワールドの今後にも期待!

Text:松村貴樹
山下敦弘監督
山下敦弘監督プロフィール
1976年、愛知県生まれ。高校時代から映像制作を始め、大阪芸術大学在学中、熊切和嘉監督と知り合う。『鬼畜大宴会』のスタッフとして参加し、その後、同期の人間たちと『腐る女』『断面』などの短編を製作。『どんてん生活』『ばかのハコ船』など、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭を始め国内外の映画祭で高い評価を得る作品を製作。