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ロリータとヤンキーという女の子2人が主人公の『下妻物語』(2004)で、映画ファンのハートを鷲掴みにした中島哲也監督が、またもやこれまでに類を見ない新たなヒロイン像を誕生させた。男にめちゃくちゃにされながら、激動の人生を歩んだ女性の一代記。すでにベストセラーとなっている原作の重いイメージとは異なり、中島監督の手によってミュージカル要素満載のエンタテインメント作品に仕上がった『嫌われ松子の一生』。意欲作を携えた監督とともに、撮影中はかなりしごかれたという主演女優・中谷美紀が来阪。メルヘンチックな作品のイメージにぴったりのホテルのチャペルで記者会見が開かれた。
__『嫌われ松子の一生』を映画化しようと思ったきっかけは?
中島監督:川尻松子という女性のエネルギッシュで愚かだけど、ものすごく前向きっていうキャラクターにすごく感情移入できたんですよね。前々からそうですけど、自分が映画を撮るときの主人公は、「欠点をたくさん抱えてる人」で、(それが自分にとって)好きなキャラクターでもあるんです。そういう意味で川尻松子という人は、ほとんど欠点だらけみたいな人で、自分が描きたい人物としては格好の材料だったんですよね。欠点を生きるエネルギーに変えている人を、思いっきりテンション高く描けたら、新しいジャンルの映画が出来るんじゃないかと思いました。
__撮影現場では、監督からは非常に厳しく指導されていたと伺いましたが。
中谷:ほとんど毎日怒られていましたので、数え切れないくらいの厳しいお言葉を頂きました。「殺してやる」に始まり、「降ろしてやる」、「顔が気持ち悪い」とか。実は私、何を言われたかを毎日、日記に付けておりまして、それが気付いたら240ページを越える一冊の本になってしまいました。「嫌われ松子の一年」(ぴあ株式会社刊/現在販売中)というタイトルなんですけれども(笑)。
中島:撮影現場では遠慮することなく、思ったままを口にさせて頂きました。自分の中に溜め込んで、“ストレスフル”になりたくなかった。その言葉が少し過激すぎたり、放送禁止用語であったりしたことは、今となっては反省反省で(苦笑)。
でも、そういう中で、中谷さんといろいろ言い合えた。映画をご覧になった方が、ちょっとでも川尻松子に興味を持って、好きになって頂けたら、現場で言い合ったりしたことも意味があったという気がします。
__中谷さんは、今でも監督を恨んでいますか?
中谷:撮影中は「いつか殺してやる!」と思っていたんですけれども、日記が出版されることになって、気持ちも少し浄化され、さらに出来上がった作品を観たときには、この「天才監督」の素晴らしさを改めて痛感しました。自分自身を地球でもがき苦しむ人間に例えるならば、監督は宇宙を司るもののように大きな存在だと思い、今は感謝の気持ちでいっぱいです。
__川尻松子を演じたことによって、自分自身に変化は生まれましたか?
中谷:こだわりがなくなりました。松子という女性は本当にこだわりがなく、ためらったり、慎んだりということがなくて、どんどん前に進んでいく女性でしたので、私自身も現場において、常に次に進んで行くよう気持ちを切り替えていました。
また、作品との関わり方についても、自分の演技プランをまったく持ち込まずに、すべて「天才監督」に委ねようと思って撮影に臨みました。自分の指針や経験に頼らず、人に頼ってみようと思えた初めての作品かもしれません。それは自分にとって、非常に怖いことでしたが、監督のことを信じてよかったと思っています。
__中島監督が、この作品を通して感じた中谷美紀の魅力は?
中島監督:まず、美人女優であるということ。やっぱり全国公開される映画の主演女優は美しくなければならない。
中谷:「気持ち悪い」って言ったじゃないですか!?
中島監督:気持ち悪さも含めて美しいっていうんですかね。妖艶っていう言葉が正しいのかな。あと、毒も吐く、監督に絶対負けない。面白い人ですよね。僕は彼女と撮影してる日々がすごく楽しかった。途中で降りますって言われてもしょうがないくらいハードな現場でしたから、ちゃんと最後まで僕らに付き合って、演じ切ってくれた中谷美紀さんを、プロの女優さんとして尊敬しています。
二人は同日行われた試写会の舞台挨拶にも登場。上映終了後の興奮冷めやらぬ中、観客たちのなかなか鳴り止まない盛大な拍手に迎えられた。
このときには、真っ赤なドレスに身を包んだ中谷から会場の1名に、著書「嫌われ松子の一年」がプレゼントされるというサプライズも。中島監督は、「ほとんど僕の悪口が書かれています。読んだら焼き捨ててください」と痛恨のコメント。中谷からは「ホントは“嫌われ哲也の一年”にしたかったんですけども」との突っ込みが入るなど、絶妙な掛け合いで、会場が笑いに包まれた。
舞台挨拶の最後、中谷はこう締めくくった。「この作品に出演できたことを一生の誇りに思っています」。中島監督も会見の中で、中谷のことを「一生思い出に残る女優さん」と語っていた。2人の一生涯にかけがえの無いものを残した『嫌われ松子の一生』。この映画を観れば、そんな作品に関わった人たちの重厚な思いが、松子の怒涛の人生ともに押し寄せてくる。
Text:今井裕紀子
『嫌われ松子の一生』公式サイト |
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中谷美紀 プロフィール
1976年、東京都生まれ。TVドラマ「ひとつ屋根の下」(1993)への出演を皮切りに、「ケイゾク」(1999)、「永遠の仔」(2000)など、話題作に多数出演。また映画では、大森一樹監督作『大失恋』(1995)でスクリーンデビューを果たし、利重剛監督作「BeRLiN」(1995)では映画初主演、さらに滝田洋二郎監督作『壬生義士伝』(2003)、大谷健太郎作『約三十の嘘』(2004)など、作品ごとに異なる顔を見せ、演技の幅を広げる。最近では、社会現象ともなった『電車男』(2005)のヒロイン、エルメス役での好演も記憶に新しい。 |

中島哲也監督 プロフィール
1959年、福岡県生まれ。CMディレクターとして、卓球やバーベキューでバトルする山崎努と豊川悦司が印象的な「サッポロ黒ラベル」、木村拓哉出演の「JRA」など、映像センスの光る数多くのCMを世に送り出す。TVにおいては、「世にも奇妙な物語/ママ新発売」(2001)、「私立探偵濱マイク/ミスターニッポン〜21世紀の男〜」(2002)などを製作。映画としては、オムニバス映画『バカヤロー! 私、怒ってます/第二話 遠くてフラれるなんて』(1988)で監督デビュー。その後、永瀬正敏主演作『Beautiful Sunday』(1998)などを手掛け、嶽本野ばら原作の『下妻物語』(2004)で、その非凡な才能を開花させた。 |
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