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2005年の第17回小説すばる新人賞受賞作を映画化した『となり町戦争』(2007年2月10日より公開)は、かなり“異端的”な内容である。その理由は、戦争の中にある日常を描くのではなく、日常のひとつとして組み込まれている戦争をとらえたところ。ここで描かれている戦争は、人々に隣接しているにも関わらずひたすら抽象的で、その毎日はごくごく平穏なのだ。
主人公・北原修路は平凡な営業マン。ところがある日、自分の住む町が、隣の町と戦争を始めたことを知る。さらに役場から偵察員として戦争に参加するよう要請が・・・。しかし戦時中だというのに、危険にさらされる場面に一向に出くわさない。いつもの定食屋で、いつものうどんをすすりながらナイターを観戦。暇があればバッティングセンターで球を打ち込む。「本当に隣町と戦っているのか」。彼は、意識を “実体の見えない戦争”に何とか向けようとするが、横たわる“本質”をなかなかすくいあげることができず、もがいていく。
そんな『となり町戦争』の公開を前に、先日、主演の江口洋介と監督の渡辺謙作が来阪。「見えない戦争」という映画的には非常に困難なテーマを、どのように料理したのか。話を聞いた。
__江口さんにとって北原修路役は、これまででもっとも難しい演技を要求されたのではないですか。
江口:「普通」や「何もしない」ということが求められていましたからね。これまでは医者など何らかのキャラクター付けをした役が多かったですが、今回はまったく違う。「どうすれば無気力に見えるか」がポイントだった。監督からも「何もしないでください」と言われて。でもそれは自分の中で計算しづらいところがある。だから現場に行って、演じる直前に「どうしようかな」と考えていましたね。
__「目に見えない戦争」というテーマを敷いた原作を読まれて、どうお感じになりましたか。
江口:戦争がまったく描かれず物語が進んでいく。最後の最後まで「我関せず」というような主人公は、気がついたら戦争の真ん中にいる。だけどそれは小説だからこそできる“空想”です。これを映画にすると聞いて、「いったいどういう見せかたができるんだろう」「どう演じれば良いのだろう」と。原作者の三崎亜記さんも「これをどうやって演じているのですか」と心配していたくらいですから。でも主人公のキャラクターや内容は、小説とはちょっと違うので、何とかなったかな。
__監督も、この原作を映画化するのは難しいと思われたのでは。
渡辺監督:原作だけを読むと、確かにそうかも知れません。だけど脚本ができた地点である程度、映画としての形が見えていたんです。ラブロマンスの要素を大きく取り入れ、ラストにも変化を加えていたから。だからそれほど難しいとは思いませんでしたね。
__原作の魅力はどこにありますか
渡辺監督:三崎さんが「文学でしかできないことをやろう」としているところですね。そういう気概にシンパシーを感じまして。僕も「映像ならではのものを作りたい」と思っていたので。だから、三崎さんの書いた題材を映画にしたくなりました。
__戦争シーンを見せずに戦争を伝えるのは、大変だったのでは。
渡辺監督:原作ではそういった描写はまったくありませんよね。でも映画ではさすがにそれはできない。“戦争”をどこまで映すか。死体や血、武器を出そうかどうしようか。それを踏まえた上で、できるだけ最小限のもので表現していきました。
__ただやはり、戦争について一石を投じている作品でもありますよね。
江口:もし戦争に巻き込まれたとき、自分だったらどうするか。今、僕たちにとって戦争は、決してリアルなものではないのかも知れない。でも世界のどこかで必ず戦争は起こっている。誰もが「戦争反対」という意見を持っているだろうけど、現実的にみると傍観者になっていることのほうが多い。ただ、無関心過ぎると、この映画の主人公のような道を辿らなくてはならないかも知れませんよね。
__それでは最後にこの映画の見どころを。
渡辺監督:個人的には、江口さんに対する演出に力を注ぎました。だから江口さんのいろんな表情を観て欲しい。かっこいいところもあれば、だらしない部分も見せてくれる。そこに注目です。
江口:映画を観終わって「どこか引っかかるなあ。何だこの気持ち悪さは・・・」というような、違和感を持って欲しい。そこが、この映画の“不条理”な部分に転がっていくはず。そのあたりを、観た人みんなで話し合ってみるとおもしろいかも。
Text:田辺ユウキ
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江口洋介 プロフィール
1968年、東京都生まれ。1987年に映画『湘南爆走族』で本格的デビュー。その後、「東京ラブストーリー」(1991)や「ひとつ屋根の下」シリーズ(1993/1997)などのテレビドラマに多数出演し、人気俳優の仲間入り。「白い巨塔」(2003〜2004)も高視聴率を叩き出す。映画代表作は『スワロウテイル』(1996)、『戦国自衛隊1549』(2005)など。今後は映画『アンフェア the movie』(2007年3月17日公開)などが控えている。 |

渡辺謙作 プロフィール
1971年、福島県生まれ。1990年に荒戸源次郎事務所に参加。1998年に『プープーの物語』で監督デビューを果たす。2000年には大森一樹、祭主恭嗣とともに『博多ムービー ちんちろまい』を手がける。2004年には永瀬正敏と宮崎あおいをキャストに迎えた『ラブドガン』を発表し、注目を集める。また過去には俳優としても活動しており、江口洋介とワンシーンのみ共演した『流★星』(1999)、奥原浩志監督作『波』(2001)などに出演している。 |
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