第42回 ライブ繁昌亭で会いましょう

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第四十二回 笑福亭学光 辛いとき悲しいとき 本当に必要なのは“笑い”かもしれない

銀行マンから転身!
落語家になったのは「若気の至り」!?

なんで落語家になったかって?

みんなに言っているんですけど、“若気の至り”です(笑)。お笑いや落語は好きでしたけど、まさか落語家になるとは思わなかったですねえ。

地元の徳島で銀行に就職していたんですけど、「これで一生が決まるんだろうか?」とか考えてしまって、結局辞めてしまったわけですねえ。やめた後は後悔しましたよ。なんで辞めたんやろうって(笑)。

それから大阪に出て来て、具体的な目標のないまま、パルコ10円寄席とか島之内寄席、田辺寄席とかを見ているうちに、「落語家さんってええなあ」って思うようになったんです。

その中でも「“笑福亭”っておもしろいなあ」って思ったし、笑福亭っていう名前がやっぱりカッコ良かった。大阪らしいし、そんな名字の人なんかいないでしょ?もちろん、うちの師匠、鶴光の落語も好きやった。角座(※1)で「手水回し」「三人旅」なんかも聴きましたね。

でも弟子になれる当てもないから、いろんな人に「落語家になりたいんです!」って言っていたらなれるかもわからんなあって、会う人会う人に「僕、落語家になりたいんです!」って言って回ってたんです。そしたら運良く「紹介しようか?」っていう話になったんですよ。ホンマに運が良かった。

※1 道頓堀角座。1952年に開場した大阪市中央区の道頓堀にあった演芸場、映画館。1950〜1960年代の演芸ブームでは、漫才や落語の公演が多く行われたが、のちに映画館となり、2007年閉鎖。

笑福亭学光師

破門!?締め出し!?
失敗だらけの弟子時代

弟子時代はいろんな思い出がありますよ。

ちょうど一緒に入門したのが、当時まだ高校生の「笑光」。彼と二人で毎日叱られ倒して、破門になって土下座して謝ったり、追い出されたり、その繰り返しでしたね。寝坊したり、遅刻したりと些細なことなんですけどね。

僕は「破門や!」言われても、なんとか謝って戻れたんですけど、笑光は結局戻れなかった。なにしろ僕は運転免許を持っていましたからね。運転できる奴が一人は必要(笑)。で、その破門された笑光が今の“嘉門達夫”なわけです。

一番叱られたことですか?う〜ん、一番きつかったのは、師匠と師匠の奥さんと一緒に釣りに行ったときのことかなあ。僕は師匠と一緒に、奥さんは別の筏に乗っていて、僕らは結構大漁だったんですけど、奥さんの方はあまり釣れなかったんで、ちょっとイライラもしていたんでしょうね。僕らが奥さんたちの筏の前を通り過ぎる瞬間、師匠が「この筏がこのまま日本海に流されていったらいいのになあ」って、奥さんの筏を指して言ったんです。それで僕が、「そうですねえ」って。

すると奥さんが「あんた弟子やろ!?そうですねはないやろ!?私帰るッ!」って激怒。歩いて帰ろうとしたんです。なんとか一緒に来ていた知人が探して車に乗せて帰ったんですけど、それから僕、家に入れてもらえなかった(苦笑)。

他にもいろいろしくじって、ここでは言えないこともいっぱいありますわ。でも、師匠にしくじるよりも奥さんにしくじる方が多かったかもしれないですねえ。ホンマにお世話をかけました。

笑福亭学光師

ラジオ番組で命の危険!?
伝説のドッキリマイク!

ラジオやテレビにもいろいろ出させてもらいましたが、やっぱり師匠がMCを担当したオールナイトニッポンのコーナーが一番思い出深いですよねえ。ご存じの方もいると思いますが、『ドッキリマイク』のラジオ版です。いろんなことを一人でやらされましたね。1本1万円のギャラをもらうために(苦笑)。

何日もかけてカセットマイクを持って街に出て、道を尋ねるふりをして、通行人に何かを言うんです。その指令は子供たちのハガキのリクエストなんですよ。例えば天神橋では「通りすがりの人にゴリラと言え」という指令。

僕「ゴリラ」。通行人「なんやねん!」。僕「しりとりですよ〜。ゴリラのラは?」。通行人「ら、ら、らっきょ!」という感じで。

何人か録っていくうちに、ゴルフバックを提げたオッチャンが歩いてきたんで、その人にも「ゴリラ」「なんやねん!」「しりとりですよ。ゴリラ」「なんでこんな街中でそんなこと言わなあかんねん」って言われて、パッとみるとそのオジサンの身体に入れ墨が見えたんですよ!どうしよ〜!!って焦ったんですけど、どうしようもなくて、また「ゴリラ」って。するとオッチャンが「なに言うとんねん!モノの言い方ひとつで命ホカスこともあんねんで!!」って。うわ〜!!って真っ青になったけど、言うことないからまた「ゴリラ」(笑)。「向こう行けや!あほんだら〜!!」。

怖かったですねえ。今思えば、よくあんなん放送できましたわ〜。

ホンマに大変なことばっかりでしたけど、今思えばいい経験になってますよね。度胸も付きましたしね(笑)。

笑福亭学光師

“笑い”が人を元気にする!
“笑い”が人を勇気付ける!

僕は落語家としての活動の他に、「お笑い福祉士」という活動もさせてもらっているんですよ。えっ?今までの話とは全くイメージが違う?そうでしょうねえ(苦笑)。

この「お笑い福祉士」というのは、僕が個人で認定している資格なんです。福祉施設などを訪問して、落語だけじゃなく“笑い”を届けるボランティア芸人のこと。きっかけは徳島で僕が講師をさせてもらっていた『楽しい学校』という落語学校。授業の一環で、福祉施設を訪問していたんですけど、その生徒さんたちに、「資格を作ったらどうですか?」と言われて作ってみたんです。軽い気持ちで作ったんですけど、今は1〜6級、初段や2段まであって、200人くらいの認定者がいるんですよ。

こういった活動を始めようと思ったのは文福さんの影響が大きいですね。営業で地方を回ったときに、「ボランティアで施設も回ろう!」って誘ってくれたんです。そして12〜3年前から、中国に学校をつくるような活動にも参加させてもらったり。今は学校の備品や施設の他に、日本の人形やこいのぼりを持って行ったり、反対に現地の子供の絵を日本の子供に届けたりというようなこともしています。

こういった活動で「笑いが人を元気にしたり、勇気付けたりできるんだなあ」っていうことを学びましたね。

“笑い”とは、「悲しいとき、辛いとき、悩んでいるときにこそ必要なモノ」だと思うんです。「お笑い福祉士」の方から聞いた話なんですが、その方が同僚を脳梗塞で亡くし、お通夜に行ったときのこと。ご遺族から「あんた落語家になりたかったんやろ?今から落語やってよ!」って言われたんです。できないと断ったんですが、「私らこんなときやから笑いたいねん」と言われて、落語を演じたんだそうです。すると辛い思いをしたその家族が笑ってくれたんですって。

それを聞いて思ったんです。お金に余裕があって、時間に余裕があって繁昌亭に来ている人ばかりじゃないのかもしれないなって。ひょっとしたら「明日死のう」って思っている人がいて、その一席の落語、一つの笑いでホッとして、もう一遍考え直すっていうことがあるのかもしれない。

“笑い”ってそんな力があるのかもしれないですよね。

笑福亭学光師

もっともっとつながってほしい!
「お笑い福祉士」を人々の架け橋に

去年の11月に「介護フォーラム」というものに出させて頂いて、そのときに横に座っていたのが内閣府政策統括官の村木厚子さん。2人で介護の話もさせてもらって、3月に出版された「お笑い福祉士」の本の原稿も読んでもらったんです。そのとき頂いたアドバイスが「お笑い福祉士をこれからどうしていくっていうことを入れたらどう?」ということ。

現代の日本では、田舎でも都会でも、1人暮らしのお年寄りがたくさん存在します。徳島にいる僕の母親もその一人。そういった人たちが孤独を感じ、一人で死んでいく。母親もそうですけど、自分がそうなったらって考えると辛いでしょ?

だから、「お笑い福祉士」の人たちが、そういった人たちと地域をつなぐ架け橋のようになったらいいなと思ったんです。

寄席なんかはそういうことができるいい機会ですよね。繁昌亭の他にも地域寄席や、手作りの小さな寄席がいっぱいあるんです。そこでそういった人たちがコミュニケーションを取れる場になればなと。「お笑い福祉士」がいて、そこに人が集まってくるような、そんな場を作りたい。

もう僕、落語家辞めてそういうことに専念しようかな(笑)。って思うくらい「もっともっと人々がつながっていかないかな」って思うんですよね。

笑福亭学光師

子供を虜にする腹話術
小学校の講演で様々な経験も

僕は舞台で、腹話術や南京玉すだれもさせてもらっています。繁昌亭ではやっぱり「落語をしたい」って思いますけど、子供たちの前だと、「腹話術をして笑わせたいな」って思いますよね。小学校に講演に行ったら、ほとんど腹話術。腹話術で1時間笑わせます!退屈させないですよ。

小学校くらいだと、僕の腕がないのか、落語ではまだまだ笑わすことが難しいんです。だけど腹話術をすると子供たちの目つきが全く違うんですよね。

本当に足で地べたを叩きながら笑うんです!「こんな笑い方があるんや!」って、僕も小学校に行って初めて気が付きました。低学年だったら、もうバタバタバタって笑ってくれるんですよね。

本当に子供たちは面白い!正直最初は怖かったですけど、今は何が起こるかが楽しみにもなってます。

ある小学校で、「なにもん?」って聞かれて「ドラえもん」って答えたら、「しょうもなッ!」って言われたので、「なにもんに見える?」って聞いたら、「お地蔵さん」って言われたんです。

それを舞台でしゃべると、僕は正直にしゃべっているだけだけど、子供たちがもの凄く笑ってくれるんですよね。「僕らは子供たちを決め付けていたし、君らも落語を決め付けてる。でも、そんなんやないんやで」って、人権講演も交えながら楽しんでもらっています。

子供たちとの触れ合いは、こちらも発見することがたくさんありますね。

笑福亭学光師

四天王(※2)も参加する阿波踊り
故郷・徳島の自慢!

笑福亭学光師

上方落語協会には「はなしか連」という阿波踊りのグループがあるんです。

徳島出身の僕は、その連長を務めさせてもらっています。毎年、徳島の阿波踊りにはみんなで参加していますよ。

文枝師匠も阿波踊りの大ファンで、亡くなるまで毎年来て下さいましたね。春団治師匠も参加してくださいますし、上の人たちとの交流にもなっています。凄く体力が要りますから痩せますよねえ、この体型を見て頂ければ説得力があるでしょ(笑)。

今年3月には「お笑い福祉士」の全国大会を徳島で開催したんですが、「せっかくやから」と、阿波踊り会館で阿波踊りを見てもらったり、懇親会ではみんなで踊ったり。腰が痛いと言いながら、皆さん楽しんでいましたね。

故郷の良いものをみんなが認めてくれたらやっぱり嬉しい!

阿波踊りは徳島の自慢ですから。

※2 戦後衰退した上方落語を立て直した、六代目 笑福亭松鶴、三代目 桂米朝、五代目 桂文枝、三代目 桂春団治のこと。

本の出版に落語会
多方面で活躍中!

今年3月に『めざせ!お笑い福祉士』という本を出版させてもらいました。名前の通り、「お笑い福祉士」とはなんぞやから始まり、基本的な落語の演じ方や、腹話術、南京玉すだれの基礎も写真付きで解説しています。

それに芸名を付けて頑張っている各教室の生徒さんの紹介もしています。例えば定年してすぐにリウマチになって、医者から「薬はない。楽しいことをしなさい」と言われて通い始めた人。視力障害があって、何もできないと思っていたところ、この落語に出会った人。ガンに侵されながらも頑張って活動している人。普段の仕事をしながらストレス発散で落語を始めた人。みんな何かしら頑張っているところをこの本でも紹介できたらなと思って出版することにしたんです。店頭で見かけられたら、是非一度手に取って見て下さい。

それからこんな落語会もやらせてもらっていますよ。

◎『オーク弁天寄席』
毎月第4水曜日 19時〜 弁天町市民学習センター・講堂
旭堂南鱗さんと一緒に開催している会です。毎回いろんなゲストにも参加してもらっています。なんと無料!の勉強会。毎月ネタがなくて「覚えなきゃ!」と必死です(苦笑)。

◎『繁昌亭ゴールデンウィーク特別興行』
5月5日(土)18時〜 前売2,500円 当日3,000円
学光の腹話術を観に来て下さい(笑)。

5月のGW興行やお正月は、繁昌亭でも腹話術で出させてもらってます。

「日本一の腹話術」!なんで日本一かというと、人形の口も動くし、私の口も動く!!
誰も真似ができない(笑)。

笑福亭学光師
ご購入はこちら

私のいきつけの店「中国料理 興發楼(こうはつろう)」

笑福亭学光師

中国料理 興發楼(こうはつろう)

TEL:06-6354-3847
住所:大阪府大阪市北区天神橋2-2-22
交通手段:地下鉄谷町線南森町駅 JR東西線大阪天満宮駅
営業時間:?
定休日:?

私が繁昌亭の出番前に寄るのがコチラ『中国料理 興發楼(こうはつろう)』さんです。お昼の定食やチャンポン、中華丼なんかもオススメですよ。昼は11時から15時まで、夜は16時30分から開いているので、繁昌亭の昼席前にランチをするのもいいですし、終わってから、ゆっくり夕飯とお酒というのもいいですよね。昼席は16時過ぎに終わって、その時間に夜の営業が始まっているお店ってまだ少ないでしょ?ですからありがたい。でも僕は意外とデリケートなんで、連日の出番となるとお酒が飲めないんですよ。緊張しちゃって(笑)。皆さんは是非お酒もいただいてくださいね。

今月のプレゼント

笑福亭学光師の直筆サイン(手拭又は色紙)をプレゼント

ライブ繁昌亭をご覧のみなさまの中から、
笑福亭学光師の直筆サイン(手拭又は色紙)を抽選で各1名合計2名様
にプレゼントいたします!

プレゼント応募はこちら

【取材・文】宮本雅 【写真】矢野凌介

プロフィール 笑福亭学光

1954年(昭和29年)
3月6日 徳島県出身。
1975年(昭和50年)
10月「笑福亭鶴光」に入門。


主な会は「オーク弁天寄席」「学光寄席」。
「お笑い福祉士」の講座は、徳島・高松・大阪などで開催しています。高座に上がる前に必ずすることは歯を磨くこと!そして繁昌亭の出番なら、天満宮に「111円」のお賽銭でお参りをすること。「111円」の理由は…、定かではないそうです。


繁昌亭出演スケジュール ※[朝席・昼席・夜席]共に直近の日付を表示します


【昼席】2012年5月13日(日)、【昼席】2012年5月20日(日)
【昼席】2012年5月22日(火)、【昼席】2012年5月23日(水)
【昼席】2012年5月26日(土)、【昼席】2012年5月27日(日)

【夜席】2012年5月5日(土)、【夜席】2012年5月27日(日)

笑福亭学光師