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パワハラに遭ったらどうするべき?弁護士に教わる心の守り方

パワハラ(パワーハラスメント)という言葉が浸透した現代ではありますが、その言葉の定義に悩まされている人は多くいます。

「自分が今されていることってパワハラなのだろうか? パワハラと呼べるレベルではないのかな?」

そう悩んで、心の内につらさを抱えこんでしまってはいないでしょうか。

「その行為がパワハラに当てはまる・当てはまらないは別として、ご自身がつらい思いをしているのであれば、何であっても解決の道筋を探るべきです」と弁護士の川内康雄さんは語ります。

そこで今回は、パワハラと思われる行為をされたときの相談窓口や証拠の集め方・信頼して相談できる人の見分け方を弁護士の視点からご紹介します。

川内康雄

弁護士

2000年~2001年10月までイギリス・ドイツに本拠を置く法律事務所で渉外業務に従事。その後大阪の弁護士事務所でIT法務の経験を積み、2006年4月i法律事務所を設立。中小規模のITベンチャー企業を中心に、法務のアドバイスを行っている。

何をパワハラと呼ぶのでしょうか?

弁護士は「裁判で勝てるか負けるか」を基準にパワハラを考えます。具体的に言うと、加害者の行為が厚労省の発表している「職場のパワーハラスメントの6類型」やその他の裁判例が示した基準に該当するかどうかを確認します。

しかしその行為がパワハラの6類型に当てはまらなくても、自分がつらい思いをしているのであれば、そのようなストレスは早く解決をしないとメンタルヘルスに悪い影響を与えます。ですので早く何らかの形で解決すべきです。以下に、解決の糸口となる相談窓口や信頼できる人の見分け方をご紹介します。

参考: 厚生労働省「職場のパワーハラスメントについて」

パワハラはどこに相談をすればよいでしょうか?

1.各都道府県の労働局

労働局は無料で相談を聞いた上で、個人と会社の間に立って仲裁をしてくれます。ただし中立であるが故に、完全に相談者の味方をしてくれるわけではありません。

2.法テラス

法テラスで弁護士・司法書士に相談するのもひとつでしょう。お金はかかりますが、弁護士は相談者の味方をしてくれます。心強いのは、労働局よりも法テラスかもしれません。

3.自治体の弁護士相談

自治体主催の弁護士相談会は、ほとんどの市町村が開催しています。ほとんどが無料なので、まず話を聞いてみたいという方におすすめです。予約ができたり夜間相談を受け付けたりしている自治体もあるので、会社勤めの方にとって使い勝手がよいというメリットがあります。

パワハラの現場での対処法はありますか?

残念ながら、怒鳴る人や陰湿な人の行為をその場で止める方法はありません。
ですので、パワハラ現場では、第三者にパワハラを信じてもらえる証拠と状況を作るようにすべきです。日本の裁判は証拠主義なので、いざどこかに訴えるときのために「いつ」「誰に」「何をされたか」を記録しておくのはとても大切なことです。パワハラ行為が認められるには、ある程度の継続性が必要となるので、その都度証拠を残すようにしましょう。またそのような準備は心の余裕につながると思います。

【証拠として有効なもの】

音声の録音

スマートフォンの録音機能で録ったもので十分です。ただし会社の機密事項などを録音・社外持ち出すことは避けた方がよいので、取り扱いには注意が必要です。

メールや各種メッセージツールの文章

文章のやりとりも証拠になります。後から文章修正できる機能をもつアプリケーションは、パワハラの証拠が削除されてしまう前にその画面をスクリーンショットしておけば証拠として有効です。

日記

録音や文面の履歴に残せないパワハラ行為があった場合は、日記につけておきましょう。継続して記録をすれば、パワハラの証拠として活用できます。

その他

例えばむちゃなサービス残業を強いられている場合は、ご自身と会社の時計を一緒に写真を撮れば過労働の証拠になります。この他、スマホアプリでご自身の位置情報のスクリーンショットを撮れば深夜まで職場にいたことを証明できますし、交通ICカードの利用時間の履歴も残業の証明になります。

パワハラに悩むということは、守ってくれる人がいないということでもあります。心の傷を防ぐには、社内で守ってくれる人を見つけることも大切かと思います。社内に仲間を作るということは、証言者を作るということでもあります。心の支えとなり、証言者となってくれる信頼できる相手を作りましょう。

信頼して相談できる人・相談すべきではない人はいますか?

信頼できる人としては、産業医・内部通報窓口を担当している弁護士があげられます。 産業医はパワハラ専門外の内科医が多いので、相談者の話をひとまず聞いて別の専門家を紹介する対応になるかと思います。産業医は守秘義務があるので、相談者は悩みを心おきなく話せます。内部通報窓口を担当している弁護士も同様に職業として守秘義務がありますので、社員の相談内容を口外することはありません。話すことで気持ちが楽になるのは事実としてあるので、産業医・弁護士に相談してみてもよいでしょう。

一方、社内のもめ事を嫌う人や相手の味方になってしまうような人は相談をしない方がよいです。また立場が上の人に相談するということは、会社そのものに相談をしているということと同義でもあります。ご自身の相談内容が上層部へ伝わる可能性があると理解しておきましょう。

パワハラを告発することで自分の立場は悪くなりませんか?

日本企業は社外に社内問題を公開されることを嫌う文化があるので、パワハラを告発した人の立場は悪くなることが多いと言えます。 問題を社外に出したくないからこそ、内部の話し合いの場を設けている会社が多くあります。大きな会社の場合は匿名性の内部通報窓口があるので、そのような場を利用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

ご紹介したように、パワハラを相談する窓口はいくつかあります。しかし、それらは平日にしか開いていなかったり、少し足を伸ばさなくてはいけない場所にあったりして、心が傷ついたときにすぐに手当てをしてくれる存在ではありません。
メンタルヘルスを考えるのであれば、まずは信頼して相談できる身近な人を見つけましょう。次に自分を守る証拠を残す、そしてさまざまな相談窓口を利用して対策を考えてみることをおすすめします。

監修

i法律事務所 川内康雄弁護士

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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