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関西の専門医が語るドクター's コラム

末梢前庭系|めまいの症状と病気

めまいの症状と病気・治療方法[1]:末梢前庭系めまい

頭を大きく動かしたときなどにおこる回転性のめまい(聞こえの症状:なし/1回:10~20秒)

≪良性発作性頭位めまい≫

突然のめまい(回転性・数秒間)が、寝返り・起床動作・着床動作などの頭の動きを伴う動作により、反復して起こります。聴こえの症状(耳鳴り、難聴)はありません。嘔吐を伴うこともありますが、神経症状はありません。多くの場合、1週間ほどで徐々に改善してゆき、9割は3カ月以内に完全に治ります。

良性発作性頭位めまいは、もっとも多いめまいであると同時に、治りやすいめまいでもあります。
ある程度落ち着いてきたら、積極的に体を動かすようにすることで、より改善を促します。めまいを恐れておとなしくし過ぎると、かえって長引くこともあります。

原因 多くは不明ですが、心理的・肉体的なストレスや過労も誘引になるとされます。
病態 耳の中の「内耳」にある“耳石”という小さな石が、本来の位置から外れ、頭を動かすたびに内耳の中を転げ回るために、めまいが起こるとされています。
治療 「めまい止め」が有効です。循環改善剤、ビタミン剤、抗不安薬なども使用します。また、専門の医師であれば、「浮遊耳石置換法」という理学療法を行うこともあります。この方法によれば、1回ですっかり治ることもあります。症状が落ち着いてからは、リハビリも有効です。

耳鳴りや難聴を伴う回転性のめまい(数時間~数日続く)

≪メニエール病≫

回転性のめまいが数10分~数時間続いたり、耳鳴りがしたり、難聴(単に耳が詰まった感じのこともある)になったり、これらが同時に突然起こります。この3つは「メニエール3徴」と言います。
多くは嘔吐を伴いますが、神経症状はありません。亜型では、全ての症状が揃わないこともあります。
数週間から数か月の間隔でそれを反復します。耳の症状は反復するうちに徐々に悪化する傾向があり、めまいはなくとも耳鳴りや難聴が残ることがあります。3分の1程度で、片耳だけではなく両耳に起こることもあります(発作のタイミング、病気の程度は左右それぞれ別個です)。

原因 不明です。心理的・肉体的なストレスや過労が誘因になることも多くあります。
また、ときに雨や台風などといった天候の影響を受けることもあります。
病態 耳の中の「内耳」の水ぶくれ(内リンパ水腫)です。
検査 グリセオールテストといって、グリセオールの点滴をすると改善することがあります。
治療 内リンパ水腫の改善にはイソバイドなどの利尿薬を使うほか、循環改善剤、ビタミン剤、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を使います。症状に対して、めまい止め、吐き気止めを使います。また、精神安定剤も有効です。場合によっては手術をすることもあります。

※「突発性難聴」の約半分に一過性の単発のめまいを伴い、メニエール病との区別が困難な場合があります。治療はメニエール病とほぼ同じですが、利尿剤は使わず、プロスタグランジンを使います。早く(1週間以内)治療を開始しないと難聴が残ってしまうこともあります。


鼻をかむなどしたときおこる難聴を伴うめまい

≪外リンパろう≫

めまいと難聴(+耳鳴り)が突然起こります。反復はせず、神経症状もありません。
めまいはフラフラした動揺感が続くことが多く、徐々に悪化したり、悪化と改善とを繰り返すことがあり、変動します難聴はしばしば進行または変動し、水の流れる感じ(音)がする場合もあります。
鼻をかむなどしたときに《耳の中で何かがはじけるような“ポンッ”という音や感覚があって、その後から耳が聞こえにくくめまいが続く》というような場合には、とくに疑わしいめまいです。

原因 耳の中の「内耳」にある、リンパを入れた袋が弾けて、リンパ液が中耳に漏れ出してしまう病気です。
病態 鼻をかんだり、重いものを持ったり、排便の際に力んだりすることで起こります。そのほかに、くしゃみ、咳、などの日常動作でも起こるほか、ダイビング、飛行機など、空気圧の変化でも起こります。また、交通事故、頭部打撲、平手打ち、耳かき事故、などの外傷で起こることもあります。
検査
  • 聴力検査
    難聴が見られ、変動することが多いとされています。
    大きな音を聴くとめまいがする(Tullio現象)、耳に圧力をかけるとめまいがする(圧ろう孔テスト)などが見られる場合もあります。
  • 眼振検査(フレンツェル眼鏡)
    病気のほうの耳を下にして横になると、眼振(眼の揺れ・振るえ)が見られることもあります。
  • そのほか、診断のために手術をして耳の中を確認する場合もあります。
治療
  • 安静:力んだり、鼻かみなどをしないようにして、上体を30度ほど起こして寝た状態で数日間様子をみる
  • 薬物療法:吐き気止め、循環改善剤、ビタミン剤、イソバイド、ステロイドなどを使う
  • 外科的治療:手術をして耳の中にリンパ液の漏れがあれば漏れているところを塞ぐ

激しいめまいと嘔吐を伴うめまい(聞こえの症状:なし/数日以上続く)

≪前庭神経炎≫

突然、激しい回転性のめまいが起こり、多くは嘔吐を伴います。激しい発作は初めの1回だけですが、その後も回転性めまいが数日間続き、起き上がれない状態になります。1週間ほどで通常の生活に戻ることができ、めまいは通常1カ月以内に軽快します。
しかし、その後も2~3カ月間軽いめまいがあり、ふわふわした浮遊感はさらに数カ月続くこともあります。耳鳴り・難聴などの聴こえの症状はありません

原因 不明ですが、ウイルス感染説が有力とされています。
病態 耳の中の「内耳」の情報を脳に伝える「前庭神経」の炎症と考えられています。
治療 めまい止め、吐き気止めのほか、抗不安薬、循環改善剤、ビタミン剤などを使います。症状が落ち着いてくれば、積極的に身体を動かしてリハビリをします。

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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