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その咳は本当に風邪?マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎

かつては4年ごとに流行し、オリンピック病とも呼ばれていましたが、近頃では毎年発症患者が確認されているマイコプラズマ肺炎。子どもがかかりやすい病気とされていましたが、実は大人にも感染します。
乾いた咳が続く場合、それは単なる風邪ではなくマイコプラズマ肺炎かもしれません。

風邪に似た症状と、長引く乾いた咳

マイコプラズマ肺炎は「肺炎マイコプラズマ」という微生物の影響で起こる呼吸器感染症の一種で、特に秋から冬にかけて発症率のピークを迎えます。約40%の子どもが1歳までに、さらに約65%の子どもが5歳になるまでに感染経験があるとされています。主な症状は長引く咳ですが、5歳未満の子どもが感染した場合は症状が軽く、感染に気が付かない場合も多いようです。
マイコプラズマ肺炎の感染経路は飛沫感染と接触感染で、感染力は比較的低いとされています。濃厚な接触によって感染することが多く、家庭や職場、教室など閉鎖的な場所では蔓延しやすくなります。潜伏期間は2~3週間で、発熱や頭痛、倦怠感など風邪と同じような症状を発症します。その後3~5日で、マイコプラズマ肺炎の症状の特徴ともいえる痰(たん)が少ない乾いた咳が出て、徐々に悪化していきます。咳は、3~4週間続くといわれています。

大人の方がこじらせる!?

例年、患者数の約8割は14歳以下ですが、成人の報告もあり、一般的には成人のほうがこじらせやすい疾患です。多くの人は気管支炎ですみますが、肺炎となり重症化することも。症状が風邪と似ていることから、風邪と自己判断し治療が遅れてしまうこともその一因とされています。風邪と同じような症状でも咳が止まらない、夜間に激しい咳が続くという場合は早めに受診するようにしましょう。
マイコプラズマ肺炎が疑われる場合、病院では血液検査やレントゲンによって診断します。抗生物質によって治療しますが、マイコプラズマ肺炎には一部の抗生物質しか効きません。薬を飲んでも咳が止まらない場合は、早めに医師に相談するようにしましょう。

合併症の危険性

長引く咳を伴う呼吸器感染症であるマイコプラズマ肺炎は、さまざまな合併症を起こすことがあります。特に、喘息を持つ子どもの場合、喘息発作を起こし悪化する危険性があるので注意が必要です。
また、脳炎や脳症、じんましん、肝炎などの肝機能障害などの合併症を起こす場合もあります。

抗生物質が効かないケースが急増中!

マイコプラズマは生物学的には細菌に分類されますが、一般の細菌とはまったく違う性質を持っています。大きな違いは、一般の細菌に見られる細胞壁を持っていないことです。そのため、細胞壁を壊して細菌を殺す作用を持つペニシリン系などの抗生物質は、効き目を発揮することができません。
治療に用いられるのはマクロライド系と呼ばれる抗生物質ですが、ここ数年、このマクロライド系抗生物質が効かないマイコプラズマ肺炎が急速に増えています。年々患者数が増えているのは、これが一因とも指摘されています。

マイコプラズマ肺炎を防ぐには?

マイコプラズマ肺炎を防ぐには?

マイコプラズマ肺炎には、予防接種などの予防法がありません。そのため手洗いやうがいなどを日常的に徹底することが重要です。また、患者との接触を極力減らしたり、人ごみを避けることも感染予防に有効です。

子どもからの感染に注意

マイコプラズマ肺炎は、特に5~14歳の子どもが発症しやすいとされています。幼稚園や学校など閉鎖的な場所での集団生活の中で、感染してしまうことが多いようです。そのため、児童や教員の健康を守るための「学校保健安全法」によって、一定期間の出席停止となります。
しかし、マイコプラズマ肺炎は子どもだけの病気ではなく、大人でも発症する可能性があります。特に幼稚園や小学校、中学校に通う子どもがいる方は要注意です。
マイコプラズマ肺炎にかかると免疫はできますが、その効果は長続きしません。再度感染する可能性もあるため、周囲に感染者がいる場合は注意するようにしましょう。

歩きまわる肺炎

マイコプラズマ肺炎は、症状の個人差が大きく、症状が軽い人は、そうとは知らずに外出して、感染を広げてしまうことがあります。そのため「歩きまわる肺炎」とも呼ばれています。 マイコプラズマ肺炎に感染・発症した場合、他人に感染させないことも重要です。飛沫感染を防ぐためにマスクを速やかに着用したり、マスクがない場合はティッシュやハンカチ、手や腕などで口元を押さえ、人に向かって咳が飛ばないようにするなど注意しましょう。また接触感染もありますので、手洗いやうがいを意識的に行い、身の回りを清潔に保つように心がけましょう。咳エチケットや清潔への意識で、病気の蔓延を防ぐことができます。

咳が続くときは百日咳の可能性も

マイコプラズマ肺炎の症状の特徴は長引く乾いた咳ですが、同じく咳が続く病気に百日咳があります。以前は乳幼児の患者が大半を占めていましたが、現在は成人の患者数が約半数を占めています。というのも百日咳は乳幼児期にワクチン接種をするため、乳幼児はある程度発症を予防できますが、ワクチン接種から年数がたち免疫が薄れている成人は百日咳にかかりやすくなっているのです。
乳幼児がかかると死の危険性もある病気ですが、成人の場合はさほど強いものではなく、咳が長引くだけということもあります。ただし、合併症を起こすこともあるので、長引く咳が気になったらすぐに受診するようにしましょう。

監修:かわぐち呼吸器内科クリニック 川口 俊先生

日本内科学会認定内科医
日本呼吸器学会 認定専門医、指導医
日本呼吸器内視鏡学会 認定専門医、指導医
ICD制度協議会認定ICD(感染コントロール医)


かわぐち呼吸器内科クリニック

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