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体調不良は夫のせい?夫が妻を病気にする「夫源病」

夫源病

皆さんは「夫源病」という言葉を耳にしたことがありますか?これは夫の何気ない言動に対する不満がストレスとなって溜まり、妻の体や心にさまざまな症状を引き起こす病気のことです。
いったい夫のどんな言動が妻の健康をおびやかし、病を発症するほどの悪影響を与えてしまうのでしょうか。「夫源病」について詳しく知り、予防・改善に向けて健やかなる一歩を踏み出しましょう。

夫源病とは

夫源病とは読んで字のごとく、夫が源(原因)となって、妻の体や心が不調になる病気です。医学的な病名ではなく、石蔵文信・大阪樟蔭女子大学教授が、男性更年期外来で中高年の夫婦の患者さんを診察する中で気付き、命名しました。

夫源病は夫の何気ない言動に対する不満、あるいは夫の存在そのものが強いストレスとなって、自律神経やホルモンのバランスを崩し、妻の心身にめまい、動悸、頭痛、不眠といった症状が現れます。症状だけを見れば、40~60代に起こりやすい不定愁訴である更年期障害にも似ています。このことから、従来は「更年期障害」とされてきた中年女性の体調不良の原因の多くは、実は夫にあるのではないかとの見方もあります。
夫源病は必ずしも更年期の女性だけに見られる症状ではなく、3,40代の若い世代や60代の女性にも多く見られます。つまり、夫(パートナー)を持つ女性なら、誰でも夫源病にかかる可能性があるのです。

これが夫源病のサイン

夫源病の具体的なケース

このような症状は思い当たりませんか?

  • とにかく夫が家にいる週末は頭痛。平日も夕方からイライラする
  • 夫に急に怒鳴られたのを機に動悸が始まり、唾が飲みこみにくくなった
  • めまいに悩んでいたが、夫が長期出張に出たら治った
  • 夫の身勝手な発言を聞くと、顔ののぼせやほてりが起こる

出張などで夫が不在のときには症状が出ない(軽くなる)、夫の言動によってその症状が重くなる、などの因果関係に心当たりがある場合は、夫源病の疑いが濃厚です。

医師からこんな病名を宣告されたら「夫源病」を疑え!

  • 本態性高血圧症(原因が特定できない高血圧)
  • 突発性頭痛、突発性難聴
  • メニエール病(めまい、耳鳴り、難聴を伴う原因不明の病気)の疑い
  • うつ病

上に挙げた病気の多くは、はっきりとした原因がわかっていないものです。これらの病気と診断され、通常の治療を続けてもなかなか症状が改善されない場合は、一度夫源病を疑ってみましょう。

妻のストレス源になりやすい“夫”とは

あなたの家庭は大丈夫?夫源病危険度チェック

チェックシートで確認してみましょう。
(夫の場合は、自分自身の妻に対する言動を冷静に振り返ってチェックしてみてください)

夫の現状 チェック
人前では愛想がいいが、家では不機嫌
上から目線で話をする
家事に手は出さない(手伝わない)が口は出す
妻や子どもを養ってきたという自負が強い
「ありがとう」「ごめんなさい」のセリフはほとんどない
妻の予定や行動をよくチェックする
仕事関係以外の交友や趣味が少ない
妻が1人で外出するのを嫌がる
家事の手伝いや子育てを自慢する自称「いい夫」
車のハンドルを握ると性格が一変する

4個以下:セーフ
今のところ夫源病の心配は少なそう。時には喧嘩をしてガス抜きすることも大切です。

5~7個:夫源病予備軍
このままでは徐々に夫への不満が溜まり、夫源病になる可能性あり。夫の意識改革が必要です。

8個以上:明らかに夫源病
夫の存在そのものがストレスとなり、すでに心身に不調が現れているかも。早急な対策が必要です!

こんなタイプの“妻”が夫源病になりやすい

妻の側にも夫源病になりやすいタイプというのがあります。次の項目に当てはまるものが多い女性は、注意が必要です。

  • 我慢強くてあまり弱音を吐かない
  • 几帳面で責任感が強く、仕事や家事に手が抜けない
  • 感情を表に出すのが苦手で、人前で怒ったり泣いたりできない
  • 人に意見するのが苦手で、理不尽なことを言われても反論できない
  • 「いい妻」「いい母親」でありたいという意識が強い
  • 外面や世間体が気になる
  • 細かいことをクヨクヨと気に病む性格だ

上記に当てはまるタイプの人は、ストレスを抱え込んでしまいがちです。
いわゆる良妻賢母タイプの妻は「これくらいのことは、我慢しなければ…」「夫に従うのは妻として当然の務め」などの思いから、夫に対する不満を自ら否定して、知らず知らずのうちに大きなストレスをため込んでしまっていることも少なくありません。
また、「いい妻」「いい母親」でありたいという意識が高過ぎる人は、夫や子どもに対しても時に「いい夫」「いい子ども」であってもらいたいと過大に期待する傾向にあり、それが満たされないことがかえって自分自身のストレスとなる場合もあります。

今すぐできる 夫源病の改善方法

プチげんかの勧め
プチげんかの勧め

夫源病は、夫婦の会話がなくなることから始まります。
夫の言動を変えるには、自分の要求をまず相手に上手に伝えることが大切です。要求を押し付けるのではなく、「やってくれると嬉しい・助かる」こととして伝えてみましょう。 また、夫の言動にイラッときたら不満を貯め込まずに、その場で素直に気持ちをぶつけてみることが大切です。
自分の気持ちを素直に相手にぶつけると、相手も反論してきたり妻に対する不満をぶつけてくるでしょうから、当然喧嘩も起こります。しかし、口げんかは立派なコミュニケーションの一つです。夫婦げんかを恐れて黙り込んでしまうと、意思疎通がなくなります。一緒に暮らしているのに、相手が何を考えているかわからなくなってしまい、相手に対する嫌悪感は募る一方になってしまいます。
そこまで問題をこじらせないようにするために、気軽に本音を言い合える関係を築くことが、プチげんかの目的でもあるのです。

プチ別居の勧め

夫が黙り込んでプチげんかが成立しなかったり、「そばにいるのも不快」というほどに妻の嫌悪感が増大してしまうと、夫源病の症状はかなり悪化してしまいます。こうなると、一時的にでも夫から距離を置くほかありません。
そこで、妻がしばらく家を出て、お互いに頭を冷やすのにおすすめの方法が「プチ別居」です。
夜の外出から始めて少しずつ慣らし、3~4日の旅行をするなど、少し家を空けてみましょう。プチ別居で夫から距離を置くと、お互いが冷静になれて、夫の気持ちにも変化が生じます。妻のありがたみがわかったり、あるいは、「嫁さんがいない方が気楽なときもある」と気づいたりして、妻に対する態度が変わってきます。
プチ別居の目的は、「夫婦関係の再構築」です。相手と適度な距離感を取るための練習ともいえます。練習ですから一度だけでなく、時間を置いて何度か繰り返してみることで、夫を「妻の不在」に慣れさせ、少しずつお互いに心地よい距離感の夫婦関係を再構築していきましょう。

どうしようもないときは…一人でできるストレスマネジメント

夫へのイライラをグッと我慢してため込んでいると、そのうち、堪忍袋の緒が切れてしまい、夫源病が悪化してしまうことにもなりかねません。そうならないよう、怒りや不満を感じたときは、できるだけその場その場でストレスを解消できるように心がけましょう。
日々の怒りや不満をうまく自己処理するための、一人でできるストレスマネジメント法をご紹介します。

  • 大声を上げる、叫ぶ
    大声で叫ぶと、イライラした気分がスッキリします。とはいえ、なかなか叫ぶ場所がないのが現実です。そこでおすすめなのが、一人カラオケです。個室で感情移入できる曲を思いっきり歌いつつ、マイクで夫への不満などを声に出して叫べば、気分もスッキリします。
  • 泣く
    映画やドラマ、小説や音楽など、自分がどっぷりと感情移入できるものを活用して、思い切り涙を流して泣きましょう。不思議とストレスが涙と一緒に流れ去り、泣いた後は気分がスッキリするものです。
  • 愚痴る
    気の置けない友人などを相手に、不満や怒りを感じた出来事を素直に愚痴ってみましょう。聞き上手な相手だと、なおいいです。声に出す方がより効果的ですが、メールやツイッターなどでもいいでしょう。
  • ものに当たる
    人や動物に向ける暴力は断じていけませんが、クッションを殴りつけるなど、ものに当たるのなら、問題ありません。バッティングセンターやボクシングジムなどで、ボールやサンドバッグを「どつき倒す」のもおすすめです。
  • 秘密を持つ
    不倫や借金など、家庭生活を崩壊しかねない秘密は問題ですが、夫に内緒で少し贅沢な買い物をする、豪華なランチを食べる…といった程度の秘密なら、許容範囲のはず。ちょっとした罪悪感があると、夫に対しても優しく穏やかな気持ちになれます。

→eo健康 「怒りのコントロールはじめませんか?」

夫だけじゃない!その症状は妻が原因!?「妻源病」

これも読んで字のごとく夫源病とは逆のパターンで、妻の言動が夫にストレスを溜め込ませることによって起こる症状のことをいいます。動機、腰痛、めまい、頭痛など、自律神経の異常で起こる症状が主です。
男性は外出する機会が多く、夫源病に比べてなりにくいと言われていますが、妻源病の症状を訴えるのは家にいることが多くなる中高年の男性が大多数です。働いていたときには気にならなかった妻の何気ない一言がこたえるようになるのは妻源病のサイン。そこから息苦しさや動悸、めまい、頭痛などの症状が引き起こされるようになります。症状を進行させないためにも、夫源病と同じようにプチ喧嘩やプチ別居でお互いに心地よい距離感を見つけたり、ストレスを一人で抱え込まないようにしましょう。

共に生活をする夫・妻が原因で病気になる、というと非常にショッキングかもしれませんが、「夫源病」「妻源病」は快適な関係を再構築するための“チャンス”であると捉えることもできます。
夫婦・カップルが、お互いのペースを尊重し、本音を言い合いながら楽しく健やかに年を重ねて行ける…そんな関係を築けるよう、この機会に一度夫婦関係を見直してみましょう。

関連:10の質問に答えて分かる「更年期障害」診断チェックシート

監修:大阪樟蔭女子大学教授 石蔵文信先生

1955年、京都府生まれ。循環器科専門医。大阪樟蔭女子大学学芸学部健康栄養学科教授。
三重大学医学部卒業。国立循環器病研究センター、大阪警察病院などで勤務後、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授を経て、現職。
中高年の男性に多いメンタル疾患と生活習慣病などを「男性更年期障害」として診察するための外来を、大阪、東京で持つ。「男性更年期障害」の治療に効果があるとして、男性が料理することを推奨し、不定期で料理教室を開催している。近著に『なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略』(幻冬舎新書)がある。


大阪樟蔭女子大学:http://www.osaka-shoin.ac.jp/univ/

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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