
「映画ではスケールを感じられるけど、舞台ではワールドを感じて欲しいと思います」
舞台「黒部の太陽」は、ダム建設に携わる人々のドラマと映画化に奔走した人々の両輪で描く意欲作。この作品に出演する神田正輝さんにお話を伺いました。
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映画『黒部の太陽』はかつて一度もDVD化されていない幻の名画。この作品を舞台化するにあたり、神田正輝さんに出演の依頼があった時は驚きを隠せなかったようだ。
「最初、この話が来た時は『それは無理でしょ』って言ったの。だって、映画版は3時間もある大作だし、映画のカット割で、アップにする“寄り”があって、そのあと“ミドル”の引いたカットがあって、最後に大きく遠景から写すカットがあるからダムの壮大なスケールが出てる訳でしょ。しかもダム建設につながるトンネル工事の時に大量に水が出る訳だからどうするかなって。だから『タブーに手をつけたんじゃないの』って(笑)
トンネル工事で水が大量に出るシーンはスケール感を出すために、今回の舞台は特殊な手法で演出されるという。それは工事のリアリティを出すために実際に舞台上に水を流すという仕掛け。
「演出家とは一度話をしたけど、どんなふうになるか楽しみ。今回の演出は、映画の監督が務めるから、普通の舞台演出とは違うプランをいろいろ考えているみたい。水もね、最初は5トン、次は10トン、15トンと増えていって、今では20トン出すって言ってた。すごいよね、劇場が水びだしになって使えなくなっちゃうんじゃないの(笑)。監督は『観客席の前から5列目くらいはシートをかけてもらう』って言ってたから、ホントにすごい量の水が出ると思う。演じている僕らも水かぶる訳だから、幕と幕の間は着替えだけになるのかな」

今回の演出としてもう一つ話題を集めているのが映画版『黒部の太陽』のシーンをスクリーンで見せる一方、映画を制作する人々のドラマを演じる点。当時、「五社協定」という映画会社の協定があり、俳優は専属の映画会社の作品しか出演することができなかった。石原裕次郎さんと三船敏郎さんは違う映画会社に所属する俳優だったが、その壁を乗り越えて映画を作ろうとする映画人。神田さんは、黒部ダム建設のトンネル工事で、なんとしてもダムを完成させるという熱意を持って仲間をまとめ、工事を進める現場責任者を演じる。そして映画制作の場面では「五社協定」を破ってまで『黒部の太陽』を完成させようと奔走した映画人としての情熱がみなぎる三船敏郎さんを演じる。
「難しいのは、気持ちが一本ではないところだよね。劇での役を演じながら、映画の俳優の部分を演じるので。一人が同じ人を演じるけど、場面によって劇の中の役と映画の中の俳優が演じたところもやるということは、全然想像がつかないね。もしかしたら、千秋楽を迎える頃になってやっと自信持って演じてるかもしれない。それくらい難しいと思うよ。でも、観に来る人は初日、中日、千秋楽を見ると、役者の成長が見えて面白いかもしれないね。映画が元にはなってるけど、そういう意味では、今回の舞台は全く初めての作品をやる感覚だし、お客さんの方も新しい作品を観に来るつもりの方がいいかもしれないね」
映画制作当時のエピソードなどは聞いていますか?
「僕は裕次郎さんと同じ会社だけど、裕次郎さんは、この『黒部の太陽』はよく会社でお酒を飲みながら観てたみたい。きっとそれほど、この作品を作る時は大変だったと思うし、想い入れがあったんだろうね。なにしろ五社協定という枠を超えて俳優さんが主演してるわけだから」

黒部ダムは、現在でも日本で一番の高さを誇るダム。そんな大きなダムを建設する期限は7年。限られた時間で完成させなければならない中、冬でも現地に残って作業をした人々。過酷な労働環境の中でも仕事するのはダム建設にかける使命感。そこには舞台を作り上げていく過程で生まれる一致団結の精神にも似ているかもしれない。
「これから台本が上がって稽古をしていく中で、どんどん共演者と結束できていくよね。そして、今回は出演者のほとんどが男だから、男くさい。こんなに女性が出ない舞台も珍しいよ(笑)。唯一、僕だけは奥さんや子どもなど家族が出る役柄だから女性も出るけど。でも、それが当時の人々の使命感や熱意も表現できることになるかな。また、今回のお話は50年くらい前の話だから難しいのは、時代劇ほど古くはないし、現代といっても少し古い。たぶん30代の人は知らないでしょう。となると、時代設定がすごく難しいよね。僕は小学校の時、学校で観た記憶がある。だから僕と同じくらいの年代の人は観たことある人も多いと思う。でも、DVD化されていないから、知らない人は知らない人で、新鮮だと思う。観たいのに観れなかった人もこれから観たいという人も是非、今回の舞台を観て欲しいね。とはいえ、映像とは一線を引きたいな。映画ではスケールを感じられるけど、舞台ではワールドを感じて欲しいと思います」
毎週、ABC放送の『旅サラダ』に出演して今年で11年。毎週土曜日、朝からの番組に生出演している上、今回は舞台もやるので、ハードになると思う。けれど、僕は大阪に来ると時間がある時は、朝日放送からも近い肥後橋付近にあるイタリアンのお店に、顔を出すんだ。長い大阪滞在になると思うし、他にも素敵なイタリアンレストランを探せたらいいね。 |
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