Fried Pride インタビュー

圧倒的な歌唱力と、日本人離れした表現力を併せ持つボーカリスト・Shihoと、技巧派ギタリストの横田明紀男によるジャズユニット、フライド・プライド。彼らが、ファン待望の2枚組ライブDVD『Live In New York & Tokyo』をリリースした。1枚には、2005年、ジャズの聖地とも言われるニューヨークはブルーノートでの念願のステージを、もう1枚には、2006年、初めて日本語詞による楽曲を発表したアルバム『Musicream』のツアーファイナル・渋谷クラブクアトロ公演を収録。
ライブが「命」だというフライド・プライドにとって、近年の活動を語るのには外せない2つのステージ。新たな挑戦でもあった、この思い出深いライブを振り返ってもらいながら、彼らの輝ける瞬間を収めた今回のDVDについて語ってもらった。
__まず、ニューヨークでのライブについてですが、ジャズというジャンルに身を置く人なら誰もが憧れるブルーノートでのステージ。相当思い入れの強いものだったと思うんですが。
横田:ニューヨークでのライブは、体験したことすべてが印象深いです。それこそ、成田で飛行機に乗った瞬間からね。お客さんがちゃんと来てくれるのかさえも心配だったんだけど、2回の公演はどちらも満員になったし、本当にいい演奏ができました。意外とステージの老朽化が進んでいて、ピアノを動かそうとしたら、「床が抜けるからやめて」なんて言われたり、英語がまったくしゃべれないからMCも紙に書いたり(笑)、いろんなことがあったけど、そんな経験も全部凝縮されて、DVDに入っています。
__ニューヨーカーの反応は、どうでしたか?
Shiho:やりたい放題なところは、大阪のお客さんと似てますよ(笑)。隣の人なんて気にしないで、自分が楽しむという人が多い。あと、日本よりもずっと音楽が生活に浸透していることが羨ましかったです。ブルーノートのチャージの安さを見ても分かるように、ニューヨークの場合はすごいビッグネームでも30ドル。私たちのライブは、安くて5ドル、テーブル席は10ドル。それって、普通に「今日、ライブ観ながらゴハン食べない?」って言える金額じゃないですか? だから、ブラリと立ち寄ってくれたお客さんもたくさんいたんですよ。そうやって、まったく知らない人たちの前で演奏するのは、なんだかデビュー当時を思い出して新鮮でした。それが、自信にもつながりましたよね。
__もう1枚に収められた渋谷クラブクアトロでのライブは、初めて日本語詞に挑戦したアルバム『Musicream』のツアーの最終日ですよね。日本語で歌った曲を披露したときの反応はどうでしたか?
Shiho:日本語詞を自然に受け入れられたと、ブログに書き込んでくれた方も多かったですね。最初は自分でも戸惑いがあったんですけど、今は日本語、英語に関係なく喜んでもらえていると思います。今回収録されているライブは、ツアーのファイナルだったんで、2006年の集大成というか、ここで“全魂を放出!”みたいなステージでした。
__全体的にすごくシンプルにライブを見せる作りになっていますが、ギターの演奏などは、手の動きがすごくアップで見れたりして、DVDならではのカットも多いですね。
横田:どんどん制作側にリクエストしたんですよ。ギターソロのときは、カット割りをしないで定点で見せる方が、ギターをやってる人にとってはおもしろいだろうなとか考えながらね。音楽を聴かせるのに、カット割りで作り込むとか、映像のエフェクトを使うのはイヤだったから、僕たちが今、ここを見てほしいと思うところを、そのまま見せる作りにしてあるんです。
__場所に関係なく、ライブにおけるこだわりなどありますか?
Shiho:大阪のお客さんみたいに、勝手に楽しんでくれる場合はいいんですけど、どうしてもお客さんと私たちの間に壁が出来てしまうことがあるんです。そんなとき、昔、ケニー・Gがテレビで言ってたことを心がけています。ちょっとおかしな話をして笑わせることだったり、お客さんに向かって微笑むことだったり、そのときによって方法は違うけど、その壁を取り払うことを、ミュージシャンは怠ってはいけない。だから、私も必ず壁をなくす努力をしてますね。
横田:僕のステージの作り方は全部逆算方式なんです。ライブハウスのドアを出ていくお客さんの笑顔から考え始める。「楽しかった、また来ようね」っていうところから始まって、アンコールにはどの曲をやってって、遡りながらイメージングするんです。お客さんが喜んで帰ってくれないライブなら、やりたくないし、やる意味もない。それは自分に課したこだわりというか義務。絶対はずせない部分ですよね。
__最後に、今回のライブDVDの中での見どころを聞かせてください。
横田:僕はニューヨーク編のギターソロ! あと、渋谷編では、僕らのことをすごくわかってくれてる方が照明を手がけているので、そこにも注目してもらいたいですね。
Shiho:ニューヨーク編のほうには副音声を入れたんですけど、曲の解説やニューヨークでの裏話もたくさんしてるんで、そこもしっかり聞いてもらいたいです。まず1回目は、ライブだけを観てもらって、2回目は副音声の方も楽しんで頂ければと思います。
ギターの横田氏は、「堂山の交差点にいると幸せ」と意外な場所をチョイス。「パチンコ屋はあるし、「鳥とも」っていう大好きな焼き鳥屋さんもあるしね。あと、あの雑然とした感じが、僕の住んでた東京の蒲田っていう下町に何となく似てるんですよ。だから、あそこにいるとすごく落ち着くんです」。そんな堂山フリークの横田氏に対してShihoからは「本当はポルノ映画館があるからなんじゃないの?(笑)」と、痛烈なツッコミが…。 一方、Shihoは「京都の街がすごく好き」なのだそう。「実はいつも仕事で行くので、ゆっくり回れたことがないんです。でも、京都駅から仕事場へ向かうタクシーからの風景を見ているだけで、日本人でよかったなと思います」。
2001年、アメリカのコンコードレーベルから日本人としては始めてのデビューを果たす。その後、2004年に発表されたアルバム『That’s My Way』では、グラミー賞アーティストでもあるマーカス・ミラーやギル・ゴールドスタイン、マイク・マイニエリらとともにコラボレーションも行う。2005年には、5thアルバム『two,too』がオリコンジャズチャート3位を記録。2006年に発表された『Musicream』では、井上陽水の「リバーサイド・ホテル」、ゴスペラーズの「永遠に」など、日本語ポップスにも初挑戦し、新境地を開拓した。
■過去に登場したページ
フライド・プライド DVD/CDライブ盤特集
ライブレポート

