有山じゅんじ インタビュー

日本のリズム&ブルース史に燦然(さんぜん)たる輝きを放つ名盤、『ぼちぼちいこか』(1975年)を発表した伝説のユニットが、33年ぶりに復活! 当時、ともにジャケットを飾ったくいだおれ太郎と一緒に、有山じゅんじ、上田正樹が2008年版のラグタイム・ブルースを完成させた。レコーディング後も、変わることなくライブで東奔西走するレジェンド、有山じゅんじを大阪・梅田のRAIN DOGSでキャッチ。上田との出会い、オリジナル盤にまつわるエピソード、そして今回のアルバム制作への経緯など幅広く、そして“ぼちぼち”語ってくれた。

__音楽活動の始まりは、フォーク・グループ“5つの赤い風船”への参加でしたね。
もう41年も前やな…。中学生の頃、半年ぐらいおった。当時、オカンは“とりあえず高校へは行かなあかん”と。でもギターやり出すと勉強せえへんし、週末はずっと弾いてたから今、思えば、心配やったんちゃうかな。
__当時はブラインド・ブレイクやビッグ・ビル・ブルーンジーなんかを聴きながら練習されていたようですが、映像がない時代なので、分かりにくいですよね…。
かえって、そのほうがよかったんちゃうかなあ。レコードが擦り切れるくらい、必死で聴いた。今でも分からへんことは多いけどな、好きやわ。
__そこで会得された独自のフィンガー・ピッキングについて、“パチンコ奏法や”とおっしゃっていた記憶があります(笑)。
昔のパチンコは指を動かしとったからなあ(笑)。でも握るようになってからは、やればやるほどギター弾かれへんようになる(笑)。
__上田正樹さんとは、いつ出会われたんですか?
高校生の頃、心斎橋のヤマハにあったアマチュアのサークルに入ってて。そこにキー坊(上田正樹:以下・キー坊)もおったし、石田長生やアリスのべーやん(堀内孝雄)とか、みんなそこで知り合うた。それで20歳くらいのときキー坊に、新しいバンド始めよかと言われて一緒にやったのが、サウス(上田正樹とサウス・トゥ・サウス:以下・サウス)になっていったなあ。
__サウスのステージは前半(アコースティック・セット) と後半(バンド)に分かれていました。その前半の演奏から『ぼちぼちいこか』(1975年に発表されたアルバム。『ぼちぼちいこか '08フューチャリング くいだおれ太郎』収録作品の原曲が収められている)が誕生したのですか?
そうそう。それと、レコーディングのときにも作ったね。あーでもない、こーでもない言いながら。今思えば、アコースティックのブルースと、バンドによるソウル・ショウのどっちも見せるっていうライブ形態は、お客さんに楽しんでもらえたと思うわ。
__画期的なコンサートですね。
そのへんは、やっぱりキー坊のエンターテインメント性やね。みんなを楽しますことに、すごく長けてます。
__ジャケットはくいだおれ太郎くんとの3ショットですが、これはどのような経緯で?
当時はまだグッズなんて売ってなくて。でも太郎のことは子どものころから知ってるし、みんなの間でも有名やった。せやから“エエなあ”ゆうことになって。
__そして今、再び太郎くんと共演されました。何か縁を感じますね。
不思議やなあ。キー坊とは、“2人でどんなことできるか”ということで、たまたま去年から東京でやり始めてたんやけど。そのときは、くいだおれが閉店することなんて知らんし。符号が合うたんやね。それで僕らのほうからライブやりたいっていうのを店に言うたんやけど、向こうからも招待受けて、店舗の中でやりましたね。それが今回(『ぼちぼちいこか '08フューチャリング くいだおれ太郎』)のキッカケになって。
__そうだったんですね。ニューアルバムには、有山さんが作られた新曲「ぼちぼちいこか」も収録されています。この作品に限らず、有山さんの歌詞ってクライマックスの部分が短いから感極まるんですよ。
エエとこ突くなあ…。曲には、朗々と歌うものとか、盛り上がってサビが広がるのとかがあるやん。でも俺は、そういうことは、あんまり考えんと作る。聴いていただいて、いろいろ考えてもらえたらエエな。今まで作ってきた歌すべてがそうやけど、詩人みたいに空想では書いてへんから、リアリティがあると思うわ。
__『ぼちぼちいこか』から33年。最も変化したことは何でしょうか。
そらもう、すべてが変わったと思う。そうやって変わっていくのを見てるのが好っきゃから、これからも楽しみやねえ。eoでもそやし。光の時代やもんなあ(笑)。
__有山さんご自身が“俺、変わったわ”というところはありますか。
めちゃめちゃ変わったんちゃうかな。45歳ぐらいまではいろんなことに興味あったけど、50歳超えたら、音楽以外に興味ないから、気分としては高校生ぐらいに返った感じ。
__上田さんはいかがですか?
キー坊は…もともとああいう人やな。音楽バカというか、もちろんエエ意味でね。若いときから音楽しかない。プライベートでは、女性と別れたり、いろんなことがあったけど、音楽は変わらずにずっとある。
__最近、上田さんとライブでご一緒されたとき、「キー坊が、歌うことの楽しさと苦しさを教えてくれました」とおっしゃっていました。
20歳ぐらいのときはギター少年やった。今もギターがすごく楽しいんやけど、インストよりは歌が入ってるほうが好きやなあ。歌うことに関しては、若いときにキー坊が素晴らしいのを聴かせてくれたから、すごくよかった。この出会いがなかったら歌ってないかもしれん。
__そんな有山さんの最新の歌声が収められた『ぼちぼちいこか '08フューチャリング くいだおれ太郎』の魅力は?
音を足す(オーバーダビング)とか、そういうのやなしに“せーの”でやってます。“一番シンプルな形で何ができるか”で取り組んだから、2人のライブになったね。そっから、みんなにいろいろ感じ取ってもらいたい。
__原曲が生まれたのは30年以上も前なのに、古い感じがしないですね。
『ぼちぼちいこか』の曲は、時代に左右されへん。(スタイルが)シンプルやし、流行でやった音楽じゃないからね。若い人が初めて聴いても、エエと思てもらえるやろなあ。歌詞も、今聴いてもズレがないしね。
__アルバム・タイトルの、“ぼちぼちいこか”のニュアンスは、関西人なら共通していると思うんですが、あえて言葉で表現すると、どんな感じですかね。
う〜ん…いろんな意味があると思うんやけど、例えば“焦ってもしゃあないからゆっくりやろうや”みたいなこともあり、せやけども、大阪人というのは、それだけではいかない体質があると思うし。“自分でやれることはしっかりやれよ”という励ましも入ってる。15年前、サウスの再編成やったときに“心配すな安心すな”というタイトル付けたんやけどね。その通り、心配しててもしゃあないし、でも安心ばっかりもしてられへんていう。“ぼちぼちいこか”という言葉にも、そういう匂いがあると思うなあ。

