インタビュー

更新日:2009年10月9日

七尾旅人

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七尾旅人 インタビュー 最近、音楽やってて初めて楽しいって思えるようになってきた。枠組みとしてはシンガーソングライター。だが、いわゆるシンガーソングライター然とした“弾き語り”の領域には収まらない、最初からポップスと即興のボーダーを越えてくるエンターテイナー、七尾旅人。伊藤銀次プロデュースでデビュー、小林武史のレーベルに一時在籍などということよりも、電気グルーヴにも起用される、いい意味で奇妙なニュータイプ。コアな音楽ファンのみならず、今、その注目を集める彼が、DJ/ラッパー/トラックメーカー、さらに、年間100本近くのイベントにDJとして参加する“やけのはら”との共作シングル『Rollin' Rollin'』をリリースしている。一度聞けば、文字通り頭の中を回り出す、癖になるメロディとメロウなビート感。このシングルについて、来阪した七尾旅人に話を聞いた。

__このシングル『Rollin' Rollin'』ですが、2009年6月にリリースされたコンピレーション『PUBLIC/IMAGE.SOUNDS』に収録されていますよね。

七尾旅人

コンピは、まあキッカケというか、スイッチの1つにはなったんですけど、2人でなにかを作ろうって話は、すでにそれ以前から始まってました。

__やけのはらさんと共作することになったキッカケを教えてもらえますか?

ラッパーのイルリメ君(※1)から、「やけのはら君が『911FANTASIA』(※2)をすごく気に入ってた」って聞いて。まず、やけのはらってネーミングセンスの時点で、同時代的な、新しいDJ像みたいなものを感じて。その後、『百人組手』(※3)という僕のイベントに、イルリメ君がやけのはら君を同伴して見に来てくれたんだけど、全共演者と即興バトルして司会もこなすみたいな日で、慌しくて、挨拶するタイミングがなくて。それからしばらくしてようやく会話したんですけど、いただいたミックスCD『Summer Gift For You』が素晴らしくて。その後、彼の連載企画で対談して、意気投合したんですよね。

__どこかピンと来るところがあったんでしょうか?

向こうは、いわばB-BOYじゃないですか、で、僕はシンガー・ソングライターじゃないですか。でも何か自分に近いフィーリングを感じて。まあ、性格も音楽性も全然違うんだけど、どっか、資質が部分的に近いというか。単に世代的なことかもしれないですけど。批評的だけど熱があるというか。彼は詞を書いてラップするし、トラックも作るし、DJもするし、文章も書く。そういう、色んな要素の複合体っていうところも近いけど、マルチに器用にやる人って感じでもなくて、熱があるんですよ。

__なるほど。マルチでも器用貧乏という感じでもないですよね。

僕ら世代がなにかを真摯に見つけようとしたら、そうならざるを得ないのかもしれませんね。でも、そこに1本芯が通っててちゃんと、やけのはらっていう形を作ってる。それから彼の、わからない感じが好きというか。僕自身も、これからどこに行くか、よくわからないし。例えば関西では、OORUTAICHI君とかおもしろいですよね。彼も同い年。どこに辿り着く人なのかわからない。

__関東で出会えたというところはやはり大きいですか?

七尾旅人

僕は16で東京に出て来たんですけど、同世代の音楽仲間って本当にずーっといなかったしね。大阪はむちゃくちゃシーンに恵まれてて、おもしろい音楽がいっぱいある。人もいいしね。大好きです。山本精一さんや内橋和久さんのもとで若いうちから刺激を与え合って、みんなで伸びていくっていう構図があると思うんですけど。僕は最近、音楽やってて初めて楽しいって思えるようになってきた。30近くになってきて、やっと。

__それじゃ、これまでどのようにして制作のモチベーションを保ってらっしゃったんですか?

これまではキツ過ぎたのが、逆にモチベーションになったというか。冗談を言い合ったり、悩みを打ち明ける相手もいないし、ソロ形態だし、あきらめるときは死ぬ時だって思ってたから。『911FANTASIA』も(制作期間に)3年かかってるんですけど、2年、3年、気持ちも、お金も、時間も、何もかも注ぎ込んでやってると、引っ込みつかなくなるじゃないですか。もうこれと一緒に死のう、と思ってた。10代から、毎作品そうやって作って来ました。

__この『Rollin' Rollin'』の制作過程を教えてもらえますか?

一緒にスタジオに入って。持参した曲を聴いてもらって、ラップを書いてくれて、これが出来たという感じですね。だから、コンセプトありきで作ったというわけじゃないんですよ。いい意味で、全然気負いがないというか。自分としては、一緒に何か作って遊びたかったってだけなんですよね。この曲をP-VINE RECORDSが気に入ってくれて、こういう形(シングル)で出てるんですけど。

__歌のメロディとラップと、歌詞でもタッグを組まれていますね。

普段、ソロなので、歌詞をシェアして書くっていう状況も初めてだったし。『911FANTASIA』と較べて、リラックスしてる自分がいると思います。

__たしかに、共作でしか得られないリラックスがある、というか。

『911FANTASIA』を作り終わってから、憑(つ)きものが落ちたようになって、ふらふら遊び歩くようになって、仲間も出来てきて、いろんな人と一緒にやったりして。さぁ、これからおもしろくなりそうだな、という予感の中で、やけのはら君と出会って。ほんとに一緒に作れて良かったと思ってます。


<編集部注>
※1…二階堂和美のプロデュースをはじめ、他ジャンルのミュージシャンとも積極的に活動し注目を集めるラッパー/トラックメーカー
※2…七尾旅人の2007年作の3枚組アルバム
※3…七尾旅人 presentsによる2008年8月に行われたイベント
※4…ウェブ上で企画された七尾旅人とやけのはらの対談
※5…叙情詩人

撮影:渡邊一生

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