ライブレポート
更新日:2010年2月26日
Mamas Gun ライブレポート 2010.2.1@Billboard Live OSAKA
“ママズ・ガン”。音楽ファン、とりわけブラック・ミュージックを愛好する人にとっては、すぐにピンとくる響きだろう。そう、エリカ・バドゥの大ヒット・アルバムの名だ。それは、目を引くと同時に、“じゃあ、どんな音楽をやるんだ?”と猜疑心(さいぎしん)を抱かせた。しかし、作品のリリースに際して入ってきた情報によって、状況は変化する。コリーヌ・ベイリー・レイの作品への参加、ジャミロクワイのメンバーや、ホール&オーツのジョン・オーツ、さらにはマイケル・ジャクソンの『Off The Wall』『Thriller』にコンポーザーとしてクレジットされているロッド・テンパートンとの制作活動。ライブではデ・ラ・ソウルやラファエル・サーディックと同じステージに立つ、などなど…。リスナーの心情は、確実に“期待”へと変化し、1stアルバム『Routes To Riches』を手にした者は皆、一刻も早いライブを切望してきた。そしてついに、初来日。
メンバーが入場すると、すぐに演奏が始まった。シンセを中心としたビートレスな音像だ。そしてベース・ラインが放たれると、すぐにそれが『RICO』だと分かったファンたち。盛り上がりつつも、アンディ・プラッツ(Vo&G)の一挙一動が気になるよう。それもそのはず、音楽におけるプロフィールは先述したとおりだが、キャラクターについては未知なのだ。と、彼は持参したタンバリンを打ちながら軽快に歌っていく。ときにしゃがんで、最前列の女性の目前での歌唱も。一目惚れしたら即行動に移す、ノリの良い肉食系なのか!?
『YOU ARE THE MUSIC』では、ギターを抱えてマイクの前に。そして、一度弾き始めるも、中断して「(前日ライブした東京より)大阪のほうがアツいって聞いてたんだけど、本当だね!」と話すと、瞬時にして熱気を帯びる会場。今度はエンターテイナーとしてのアンディが飛び出した。『FINGER ON IT』では、 この曲が特に好きなのだろう、舞台にしがみつきながら歌う女性が。そんなファンを見つけると、そっと近づいて丁寧にマイクを向ける。さらに、一緒に歌うのだ。そこまでするアンディに、今度はジェントルな一面を見た。
スティーヴィー・ワンダーの『Superstition』を連想させるかのようなエレピの音色が映える『BIG BETTY』は、ファンキーなナンバー。ベースのレックス・ホランとお揃いのダンスを披露する姿は、お茶目そのもの。実に多彩な表情を持ち合わせる彼らのキャラクターは…“スタイリッシュにしてキャッチー”いや、“クールにしてフレンドリー”か。違う。これだけでは、まだ言い表せていない気がする。考えているうちに、ステージは終盤へ。リード・トラックとして、ラジオでも頻繁にピック・アップされていた『HOUSE ON A HILL』では、総立ちに。ソファ席で所狭しとダンスする人、勢いでステージ前に行くも、その迫真の演奏に見入る人、持参したアフロのヅラを被る人、仲間とともに肩を組む人たち…と、最後まで思い思いにステージを満喫したのだった。
これまで、たくさんの白人たちがブラック・ミュージックに挑み、成功してきた。ホワイト・ブルースの第一人者、エリック・クラプトン、ホワイト・ソウルの名を馳せたホール&オーツ、アーティスト名とともにホワイトなファンクをアピールしたアヴェレイジ・ホワイト・バンド。白人によるブラックなサウンドは、彼らや彼らの時代に出しつくされたかのように思っていたが…違ったようだ。アルバム『Routes To Riches』のジャケットを凌駕するかのような、カラフルな音楽=これまでにない音楽性を打ち出したママズ・ガンは、言うなれば“ニュー・ホワイト・ソウル”なるジャンルを誕生させたといってよい。そして、そんな音楽でもってリスナーを沸かす彼らは…本稿で述べてきたようにエンターテイナーで、ジェントルで、そしてクールにしてフレンドリー…つまり“スター”なのだ。
※掲載写真は東京公演のものとなります。
文:兼道松
- 01)INTRO
- 02)RICO
- 03)WISHING
- 04)YOU ARE THE MUSIC
- 05)FINGER ON IT(INTERLUDE)
- 06)POTS OF GOLD
- 07)LET'S FIND A WAY
- 08)BIG BETTY
- 09)CHASING DOWN SHADOWS
- 10)HOUSE ON A HILL
- 11)BITCH
- 12)PSYCHO TERRITORY
- Encore
- 01)YES WE CAN CAN
- 02)SUPA SNEAKERS
アンディ・プラッツ(Vo&G)、ジャック・ポリット(Dr)、レックス・ホラン(B)、ディヴ・オリヴァー(Key)、テリー・スピラー(G) の5人から成る、英国で誕生したバンド。楽曲制作において中心的役割を担うアンディ・プラッツは、1979年生まれ。父親の影響で、幼少時からビートルズやエルトン・ジョンに親しみ、間もなくピアノを習得する。10歳になる頃には、すでに作曲をしていたという。コリーヌ・ベイリー・レイのアルバムへの参加を契機に、その才覚にスポットが当たり、ロッド・テンパートン(マイケル・ジャクソンの『Off The Wall』『Thriller』の作曲に携わった人物)などの著名な音楽家たちから称賛されるように。ギタリストのテリー・スピラーとの出会いがキッカケでバンドを結成(バンド名は、エリカ・バドゥのアルバム『Mama's Gun』に由来)。アルバム『Routes To Riches』を発表し、各地で精力的にライブ活動を展開している。
http://varicount.com/mamasgun/
