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更新日:2011年12月22日
大人のための第九講座Tweet
今や1年の締めくくりとしてなくてはならない風物詩となった「第九」。しかし、名前は聞いたことはあるけれど、そもそも“第九”って何?という人たちや、クラシックはちょっと…という方も多いのでは。そこで、eo音楽では、まだまだ知られていない「第九」を大特集! さらに、関西から全国へと規模を広げる年末最大の音楽祭「一万人の第九」の後日レポートに加えて、指揮者の佐渡裕とゲストの平原綾香のインタビューも! 「第九」を知っている人も、まだ聞いたことがない人も、ここで第九に触れて年末を締めくくってみてはいかが?
年の瀬になると、どこからともなく聴こえてくる「第九」。老若男女誰もが知っている圧倒的に有名なメロディーと合唱「第九」は、どのような交響曲なのか? そこで、大阪音楽大学で合唱を担当、「第九」の合唱指導もされている本山秀毅教授にお話を伺ってきた。「第九」の構成、聴き所や、「第九」に限らずクラシックは難しく高級なだけの音楽ではなく、人々の生き様や世相とリンクしている事などなど…この記事を読んでいただくと、「第九」そしてクラシックへの印象は間違いなく変わるはず!
――「第九」は良い意味で誰でも知っているんですけど、いわゆる年末にあのメロディーを聴くという程度じゃないですか。詳しく深くは何も知らないので、サルでもわかる「第九」というと言葉は悪いですが(笑)、今日は先生に色々とお教え願えたらと思っています。
本山教授:サルでもわかる(笑)、わかりました。今や、俳句の季語になっているくらい日本ではポピュラーなものになっています。それは「1万人の第九」などもそうですが、合唱の楽しみ方との連動もあると思います。ベートーベンは9曲の交響曲を残していますが、唯一、歌詞をつけているのが「第九」なんです。年末の風物詩として日本で知られ始めたのは1960年代くらいですから、まだ50年くらいしか経っておらず歴史は浅いんですよ。でも普通は客席にいる人が、合唱に参加する事で舞台に上がれるというのは魅力的ですよね。ただ、あのよく知られたメロディーはあくまで一部分であるので、もっと全体を通して音楽を知って欲しいなと思います。あのメロディーが第4楽章に出てくるのは、もちろんご存知ですよね? でも知らない人も多くいて、「1時間近く待って、ようやく聴けた」なんていうエピソードも、よく聞きますよ。
――そうですよね。今、お話を聞いただけでも、交響曲に歌詞があるのが稀だという事などがわかって、大変興味深いです。
本山教授:「第九」はベートーベンが54歳の時に作った曲なんですが、それまでにも歌曲にしたりとかして似たようなメロディーをいくつか作っているんです。だから、生涯かけて作ったと言えるのですよね。初演時、ベートーベンは既に耳がほとんど聞こえなかったんです。オーケストラをまとめるために、もうひとり指揮の人がいたと言います。だから演奏が終わった後の客席からの大歓声も聞こえなくて、気付かせる為にソリストのひとりが彼を振り向かせたらしいです。とにかく、交響曲に歌詞を用いたというのは、当時は斬新というか…、前人未踏ですよね。ちゃんとアイデアが結実している。でも、当時は批判もあったみたいです。結果、好意的に受け入れられたとはいえ、続くロマン派の人も殆んど真似していないですし、近代のマーラーまで交響曲に本格的に合唱を用いた人はいなかったですから。
――なるほど、いかに画期的だったかという事が、よくわかります。先ほどお話にも第4楽章という言葉が出てきましたが、「第九」が4つの楽章にわかれている事を知らない人も多いので、1楽章ずつ、どのような特徴的な流れがあるかを教えてもらえますか。
本山教授:4つの楽章が積み重なることで歓喜が爆発するわけですから、その流れを知っておくことは大切な事です。第1楽章は、実に神秘的な始まり方をします。その後大きな激情を伴う音楽に発展する要素となっています。荘重な雰囲気は辛い事やネガティブさを現わしている様にも聴こえ、特に年末聴きますと、今年1年も色々あったなと感慨にふけることになるんです。第2楽章はテンポが速くて、イタリア語で「スケルツォ」、つまり、ふざけるようなという意味合いなのですが、大きなエネルギーを感じる事のできる楽章です。心地よい楽しさがありますね。第3楽章は心に染みるような穏やかなメロディー、そして第4楽章は、それまでの第1、第2、第3のちょっとした回想シーンも出てくるんです。それを打ち消すかのように現れる歓喜の歌…。年末、年の瀬のセンシティブな心持ちになっている時に、大きなインパクトがあるんです。1年を振り返れるんです。
――ここまでお話を聞いただけでも「第九」だけでなく、クラシックの捉え方が完全に変わってきました。クラシックは生真面目に難しく聴くものと勝手に思い込んでいたので、自身の生活を照らし合わすという聴き方は共感を覚えます。「第九」を年の瀬に聴く風習は、どのように定着したのですか。 本山教授:これもよく知られた話ですが、年の瀬に「第九」を演奏するのは日本だけです。ヨーロッパでは、指揮者にとって一生で一回指揮できるかどうかという交響曲なんです。日本は、若手の指揮者でもどんどん指揮していますけどね。最近では、ヨーロッパでも年の瀬に聴く機会も出てきたみたいですが、それは日本からの逆輸入とも言えるでしょう。一度向こうで4月に聴いた事があるんですけど、それはそれで楽しめました。僕は1988年までドイツに留学していたんですが、ちょうど翌年ベルリンの壁が崩壊したんですね。歌詞にも「全ての人が兄弟になる」というような表現があるんですが、その強烈なメッセージは、この交響曲はこのような場にこそふさわしいと感じさせてくれました。
「第九」に限らずクラシックも、失恋した時に思い出すポップスみたいな感覚でもいいんですよ。音楽は、必ずしも知識から入る必要はないですから。クラシックが高級という垣根やハードルの高さを崩してほしいですね。ベートーベン自体、先ほどお話したように聴力が無くなってきたという苦悩を感じていた時期に歓喜を表現していますから、生き様に深く関係していたことを知ってほしいです。
ベートーベンの時代は、そんなに多くの楽器があったわけではないんですが、例えばティンパニーは合図の性格を持つ重要な役割ですね。第2楽章のエネルギーが高まっていく時に登場します。第4楽章では、シンバル、トライアングル、大太鼓といった打楽器が、非常に効果的な役割を果たしています。トライアングルは、誰もが一度は鳴らしたことがある楽器かと思いますが、その正しい鳴らし方に注目しながら見るのもおもしろいです。
聴き方も色々あって、第3楽章は心地よいですから、ついつい眠たくなってしまう人もいると思うんです。「寝たらアカン!」という人もいますけど、寝るのは音楽的にリラックスしている証拠なので、個人的には寝てもいいと思うんです。気持ちよく眠たくなるくらいに、アルファー波が出ているわけですから。それで、第4楽章の冒頭ティンパニーで起こされる、と(笑)。
文:鈴木淳史
内観写真:大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス
本山秀毅 教授 プロフィール
京都市立芸術大学音楽学部声楽専修 卒業
フランクフルト音楽・舞台芸術大学(大学院課程)合唱指揮科 修了
現在、大阪音楽大学短期大学部 副学長
専門分野・主な担当科目:合唱指揮 合唱
関西での初演について余談
実は…今日取材していただいている11月17日は、「第九」が関西で、京都で初演された記念日でもあるんです。昭和11年の事なんですが、その時の合唱は大阪音楽大学の合唱が担当したそうです。これは最後に付け加えておきます(笑)。
第九特集特別編の最後は、やっぱり気になる12月以降の第九スケジュール。会場で今年の第九に触れてみよう!
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