特集:『ゆれる オリジナルサウンドトラック』発売記念企画カリフラワーズ×西川美和監督 メール対談


哀愁漂う詩の世界に、セクシーなホーンが絡み合った味わい深い“いぶし銀サウンド”が持ち味のカリフラワーズ。彼らが、オダギリジョー主演の映画『ゆれる』のサウンドトラックを手がけたという。実は、カリフラワーズはこの作品を製作した西川美和監督の処女作『蛇イチゴ』(2002)から映画音楽を担当しており、彼らと監督とはすでに親しい間柄。仙台のライブハウスで運命的な出会いを果たしたという両者は、それぞれの才能をぶつからせ、その相乗効果によって、互いに秀作を生み出してきたのだ。
そんな2アーティストに焦点を当てた今回、メール対談が実現。ふだんはなかなか口に出さない相手への思いを、西川監督→カリフラワーズのナカムラ(Vo.)へと送信してもらった。なぜ、 西川監督はここまでこだわり、彼らの音楽を自身の作品に起用するのか? これを読めば、なるほど納得なカリフラワーズの魅力が見えてくる。
◆バンドの音楽性、その魅力とは?
「楽しさと、反骨と、そして飽くなき挑戦のスピリッツ」 (西川監督)
西川監督 →
楽しさと、反骨と、そして飽くなき挑戦のスピリッツ。同じ「もののつくりて」としてのソウルを感じることができます。
美しさと汚らしさ、優しさと乱暴さ、古さと新しさ、実直さと悪ふざけ、色んな矛盾した要素を併せ持ちながら、絶妙のバランス感覚で繊細な境界線を歩んでいる音楽だというように感じています。まあ、とにかく音がきれいです。
ライブに行って、生で聴いたら音が大きすぎてよく耳が痛くなることがありますが、カリフラワーズに関しては絶対にそんなことがない。しっとりしたバラードだけじゃなくファンクみたいな曲でもアルバムで聴くのと同じくらい調和も取れているし、耳障りの良い音で聴かせてくれます。人に聴かせる音というものがどうあるべきか、というものを考え抜いている感じがします。
→ ナカムラ(Vo.)
やはり僕も監督とは芸術性とエンタテイメント性を併せ持つ、「もののつくりて」として共感する部分は少なくありません。
音楽も映画も、そもそも作者のエゴがなくてはできないものだし、僕自身、これでも結構複雑なことを考えているのですが(笑)、必ずしもそのすべてを伝えたいのではなく、願わくばお客さんがシンプルに自身の楽しみ方で楽しんで頂ける作品ができれば、なんて、むしのいいことを考えています。
◆『ゆれる オリジナルサウンドトラック』の注目曲はこれ!
「俺、「わっる〜い感じ」とだけ聞いたような気がする(笑)」 (ナカムラ)
西川監督 →
映画のオープニング曲の「ford falcon wagon 1964」は、猛(オダギリジョー)の身につけている都会的な雰囲気や、時に不快感さえ漂わせるような“不良性”、グルーヴしているけれど暗さが付きまとう感じなどをコンセプトに作曲をお願いしました。完全に私の音楽的嗜好のど真ん中ですが、ブラックムービーで主役のギャングが強盗に入りに行く感じになってしまった(笑)。
洋平(新井浩文)と猛が対峙するファミレスでかかっているBGMとして作曲してもらった「bluesn’」も、大好きな曲です。劇中のBGMというのは、シーンの性格と沿い過ぎていても不自然だし、反対に違い過ぎるとシーンの性格がつかみづらくなるので、曲調を考えるのが実はとても難しい。
落ち着いた感じの古いジャズの路線でお願いしたように思いますが、作曲を聴いたのは録音当日、本番のみです。つまりカリフラワーズのメンバーと清水光一さん(「trpidation」の作曲・演奏で参加)とのセッションで、ほとんどその場で生まれたもの。優しさとほろ苦さ、そして襲い掛かる疲労感。まさに人生の滋味のにじみ出た名曲です。
カリフラワーズのみなさんも、色々苦労しているんでしょうな。
「うちに帰ろう」は、この映画に登場したすべての人々に対する、作者(=私)のささやかな祈りのような感情を歌にしてもらったものです。後半のサビに入ってくるハモンドオルガンが、教会で聴く賛美歌を思わせ、何ともたまりません。
→ ナカムラ(Vo.)
あれ? 「ford falcon wagon 1964」って、そんな難しいことだったっけ?
俺、「わっる〜い感じ」とだけ聞いたような気がする(笑)。
全てが監督立ち会いの元で、ほとんどが画を見ながら録りましたが、BGMに関しては写真スタジオだのファミレスは本筋と関係ないし、好きにやらせて頂きました。
ラストの「うちに帰ろう」は、ラッシュを見てバーンと頭の中で流れてきた曲です。監督に聞かせてもいないのに「いいのができました。これで行きましょう!」と目茶苦茶なこと言って、自分の中では決まってました(笑)。最終的に採用になり、非常に嬉しく思っております。
仕事のときは、監督と結構喧々ガクガクですが(笑)、苦しみを経て生んだ『ゆれる』のサントラは、僕らカリフラワーズと監督の良い記念碑になりました。 もう1人、僕と共にカリフラワーズの立ち上げに参加してくれた、僕の最も尊敬するピアニストであり、ベーシスト、ミキサーとしても活躍する清水光一氏とまた一緒にアルバムを作れたことを光栄に思います。
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