特集 We Are The “大所帯バンド”

その量の多さで世間を驚かせた、フード業界のメガ・ムーブメント。ハンバーガーや牛丼、プリン…と話題になったが、次なる主役が出現しないでいる。そこで注目したいのが、“メガ・ミュージック”なる“大所帯バンド”だ。多勢に無勢とは言うが、確かに大人数でしかなし得ない芸当がある。つゆだく牛丼よろしくの“汗だくサウンド”、具材大盛りのハンバーガーを凌駕(りょうが)するかの厚みを誇る“多重奏音楽”を生み出す、大所帯バンドの魅力を探ってみよう。
“俺の話を聞け!”(「タイガー&ドラゴン」)でお馴染みのCRAZY KEN BAND。実は、総勢12人のメンバーを抱える大所帯バンドだ。各自の個性を生かした重層的なサウンドに、抜群のチームワークで作り上げるユニークなステージングは、まさに大所帯ならでは。そんな彼らが結成11年目にして、10枚目のアルバム『ZERO』をリリース。2008年のテーマは“音楽力”だと語るcrazykenに、じっくり話を聞いてきた。
__2008年のテーマに掲げている“音楽力”ってどういうものですか?
まっすぐに音楽をやるってことだね。スタートしたての頃は、いかに注目してもらうかってスケベ心で、余計なことばかりやってた。例えば、CKBにとって昭和歌謡は、数あるサンプルソースの1つに過ぎなかったんだけど、その部分だけを強調されて、昭和歌謡ブームを牽引するバンドみたいに扱われることが多かった。よせばいいのに、そういった状況を面白がって、調子に乗ってサービスしてね(笑)。後々、ツケが回って苦しむことになったね。本当に腹の底から思ってる事以外やっちゃいけないって教訓にもなったし、懲りたね(汗)。なんつったってCKBは“売れ線狙い”を止めた途端に売れたから(笑)。スケベ心があると、やっぱ音によくない陰が出るんだよ。まっすぐな音楽が持ってる力=“音楽力”を提示してかなきゃ嘘だよね。
__アルバム・タイトル『ZERO』について聞かせてください。
11年間という年月を積み重ねてきたって思うと、おごりも出てくるし、キャパも狭くなる。付加価値なんて付加価値でしかないから、それを放置しとくと、付加が負荷になって不可になる。余計な荷物は置いてかないと、重いじゃない? 淘汰(とうた)されてもなお残るもの、それが本質だと思うんだよね。ちゃんと点検整備して、“ゼロ”にチューニングする時期に来たんじゃないかな。携帯電話の数字は9の次が10じゃなくて0。10だとゴールしちゃう感じだけど、0だとまたここから始まるでしょ。これからもアグレッシブに活動していきたいね。
__具体的にどんな活動を?
一番好きなのはレコーディング。今はその楽曲を携えて全国ツアーだね。闇雲にライブをやりたいとは思わないんだよ。楽曲っていう出し物があるから、ライブをやる意味がある。楽曲がなきゃ何もしたくないね。“出物腫れ物所嫌わず”と言うけど、運転中、入浴中、食事中、歩行中、エレベーターの中、ATMに並んでいるとき、楽曲は作るって言うより、自然に出てくる。いい作品ができると、次もいいものを作りたいっていう欲が出てくるから無限なんだ。とにかく毎回、いいレコーディングを続けることがすべてに繋がるんだよね。
__今回のアルバムを一言で表すと?
“歌力”だね。今までは、歌もサウンドの一種っていう考えだったんだ。けど、今回は歌モノっていう概念で、歌を真ん中に持ってきた。歌が自然に出てくるように、余分な倍音をできるだけ排除して、1音1音磨いて仕上げた感じだね。僕は必ずしも“シンプル・イズ・ベスト”とは思わない。聴いた感じはシンプルな印象がいいけど、ただ音数を減らすんじゃなくて、スパイスとして隠し味を忍ばせたかったんだ。この発想はミキサー泣かせなんだけどね。だから、このアルバムは聴けば聴くほど味が出てくるサウンドになってるね。
__歌モノを作ろうと思ったのは何故ですか?
僕は自分の声があんまり好きじゃなかったのよ。ざらついてるし、ガラガラだし。だから10代の頃の夢は、歌手じゃなくて、職業作曲家になって、印税で儲けることだった(笑)。けど、CKBで10枚もアルバムを出しておいて、今さら「俺は歌より作曲だぜ!」なんて言い訳はダサイじゃん。最近、いい声か悪い声かは別として、エステルや、エイミー・ワインハウスとか、声にIDのあるシンガーが台頭してきたよね。そういうことにも勇気をもらえた。「声が好きです」って言ってくれる人もいるし。都合の良いとこだけ、真に受けてやってみるのもいいかって思ったわけです。
__このアルバムをどんな人に聴いてもらいたいですか?
目標としてるのは、聴く人を選ばない“全方向型音楽”。ウチの近所に、寿司も蕎麦もタイ料理も中華も洋食も、何でも出す大衆食堂があるんだけど、そこら辺の専門店より全然うまいし、値段が安い上に、クオリティが高いんですよ。見た目では期待をさせない、イメージ的には損してる店なんだけど(笑)。親父のレシピにセンスがあるというか、ポイントを押さえてる。CKBもそういう音楽屋でありたいね。
