3Dプリンタで“声の立体化”に挑戦!?

2017/07/24

WRITERテキスト:トライアウト・福井英明/撮影:野田真

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
3Dプリンタで“声の立体化”に挑戦!?

「マンガの吹き出しみたいに、しゃべった声が文字になって口から飛び出したら面白いのに」と思ったことはありませんか? そんな夢のような話に本気でチャレンジしてみました。どんな試行錯誤を経て、どんな作品が出来上がるのでしょうか。その一部始終を追いました。

3Dプリンタを研究する大学院生に協力を依頼

今回、制作してくれたのは、大学院生の秋山耀さん。大学ではプログラミング技術を磨き、モノづくりと、それを動かす情報づくりのプロフェッショナルを目指しています。
「昔からモノづくりには興味があって、高校生の頃に部活でイライラ棒を作ったりしていました。電流は流れないのですが、ブザーが鳴るようにしました」と、

秋山さん

そんな秋山さんに「しゃべったら、その文字が立体化して飛び出すものを作ってください」と究極のムチャぶりをしたところ、意外にも「頑張ればできそうだな」と感じたそうです。

実現に必要な3つのプロセス

さっそく設計について考え始めた秋山さん。クリアしないといけないプロセスを、整理しました。

【1】 どうやって音声を文字にするか
【2】 どうやって文字を立体化するか
【3】 どうやって立体化した文字を飛ばすか

どうやって、音声を文字にするか

まずは【1】ですが、これはマイクで拾った声を音声認識し、それをカタカナに変換するプログラムを作ることでクリア。秋山さんにとっては、お手のものです。

[1] 「IBM - Speech to Text 音声認識 | Watson Developer Cloud - Japan.」 https://www.ibm.com/watson/jp-ja/developercloud/speech-to-text.html
[2] 「ひらがな化API |ソフト・アプリ開発のAPIなら【gooラボ】.」 https://labs.goo.ne.jp/api/jp/hiragana-translation/
[3] Arduino. https://www.arduino.cc/

どうやって文字を立体化するか

次に【2】の、認識した文字を立体化するプロセス。まず秋山さんが考えたのは「認識した文字をその都度3Dプリンタで作成する」というものでした。しかし、これでは声を発してから文字が飛ぶまでに時間がかかってしまいます。そこで、全46文字のカタカナに濁点、半濁点、音引きを加えた49文字分の立体文字を用意しておき、認識した文字だけ取り出すような機構にしようと考えました。

どうやって立体化した文字を飛ばすか

最後に【3】の「飛ばす」方法ですが、最初は認識した文字だけをベルトコンベアに落とし、それを流す、という工程を考えました。しかし、「もっとラクにできないかな」ということで思いついたのが、ブロワで飛ばす方法です。文字を落とした所にブロワの風を吹きつければ、文字が飛んでいく仕掛けが作れます。

というわけで、たどり着いたフローチャートがこちら。これを基に、製作を始めます。

「いつも、きっちりとした設計図を書かずに作り始めるので、作りながら色々な壁にぶつかります。でもそれを解決していく過程が楽しいですね」という秋山さん。しかし、作り始めてから数々の事件が待ち受けていたようです。


【1】 文字バラバラ事件

3Dプリンタで立体化した文字を作ったのはいいものの……。

そう、「シ・ソ・ツ・ニ・ハ・ホ・ミ・ン」などはバラバラになるのです。そこで文字は透明のアクリル板に貼った状態で飛ばすことにしました。これで一件落着。全46文字のカタカナに濁点、半濁点、音引きを加えた49文字分の板を作りました。

レーザーカッターでアクリル板をカットして貼り付け

【2】 落下機構悩み事件

認識した文字を落下させる仕掛けですが、これが意外と難題。なんせ約49文字もあるものをどうやって制御するのか、なかなかアイデアが浮かびません。しかも時間と予算がないので、できるだけラクな方法を見つけなければ……。

最初に思いついたのはサーボモーターでアームを動かして、落とす機構でした。

しかし、サーボモーターを49個も制御したことがなく、かなりの時間がかかりそうだったので断念することにしました。
そして、思いついたのが、電気のON/OFFで出たり引っ込んだりする「ソレノイド」という部品を使う案。これに細く切ったマグネットシートを組み合わせることで落下する仕掛けを作りました。


通常はソレノイドの金属の軸とマグネットシートが磁力でくっついているので落ちませんが、軸が上がるとシートが離れて重力で落ちる仕組みです。

そして出来上がった機構がこちら!

機構

スイッチが入った所だけ、マグネットのフタがブラ~ンと開くようになっています。

【3】 回路設計ミス事件

文字の落下機構が決まったのは良いものの、動かすソレノイドは50個。それに対して、マイコンのピンは20個前後しかありません。そこで考えたのは、回路をグリッド状に組むことでスイッチの数を減らすことでした。

「これで解決!」と思ってテストしてみたところ……
あれ?動きません。「何でだろう?」と調べてみると、電気の通り道が1つではなく、こんな通り方をしてしまうことを発見しました。

これを解決するには、上向きに電気が流れないようにする必要があります。そこで、回路にダイオードを挟んで、電気が上に上がらないようにしました。今度こそ、解決です!

【4】 ブロワ騒音事件

文字を飛ばすのにブロワを使う、という案を思いついたのは良かったのですが、1つ問題がありました。そう、ブロワは「うるさい」のです。ブロワの音で、マイクの音声認識の精度が落ちてしまう懸念がありました。

そこで考えたのは、回路に電気が流れたらブロワのスイッチが入るようにする仕掛け。しかし、今回は市販のブロワを使っているので、改造するわけにはいきません。そこで考えたのは……

まずブロワの電源コードをスイッチ付きのタップにつなぎ、そのスイッチをアームで押す仕掛けです。音声を認識して回路に電気が流れたら、このアームも動かしてブロワのスイッチを入れる、という手法です。


数々の難関を乗り越えて、何とか完成した装置。その全貌がこちら。モジャモジャと絡まったコードが作業の大変さを物語っています。

さっそく遊んでみました。



これは楽しい!
今の所、「トマト」みたいに同じ文字が2回出てくる言葉は飛ばせないので、使える単語が限られているのですが、何やら大きな可能性を感じる装置です。

ブロワの向きや風の強さによっては全然飛ばなかったり、逆に飛び過ぎたり……コントロールの難しさが逆に楽しさを増してくれて、大の大人が真剣にハマってしまいました。

最後に、この装置をどんなことに実用できそうか、秋山さんに聞いてみました。
「作りながら思ったのですが、目覚まし時計とかに応用できるんじゃないでしょうか。音だけで起きなければ、マイクに向かって『起きろ』と叫んで、『オ・キ・ロ』の文字をぶつけるとか。あ、それなら叫んだ人が普通に起こせばいいか……」

最後まで、創造力豊かな秋山さんでした。

なんかこう、あれよね。そういう、未来から来た、あれがすごくあれよね

驚き

Zing! Twitterをフォローする

関連記事

  • LINEで送る
  • はてなブックマークに追加
  • +1する
  • POCKET
  • facebook
  • ツイートする
  • ツイートする
  • facebook
  • LINEで送る
  • +1する
  • はてなブックマークに追加
  • POCKET