建山和徳インタビュー(2)「『発達障害』という言葉がなくなる日まで」

2017/08/02

WRITERテキスト:トライアウト・福井英明/撮影:トライアウト・田村朋子

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建山和徳インタビュー(2)「『発達障害』という言葉がなくなる日まで」

アオクスルプロジェクトの「アオクヌル」キャンバス。右上に貼ってある養生テープが青なのも、建山さんのこだわりなのだとか。

悪意なく発達障害者を苦しめている危険性

――発達障害者支援に取り組む中で、課題に感じていることはありますか?

やはり、まだまだ誤解の多いテーマだと思います。まず、発達障害というと「子どもの問題」と思っている方が多いんです。でも本当は大人の問題でもあること、さらには遺伝が影響する可能性があることを知ってほしい。時々、「うちの子が発達障害で悩んでいる」と相談される親御さんがいらっしゃるんですが、実は親の方が課題を抱えているケースもあるんです。

でも「発達障害」と診断される人とされない人の境目は非常に曖昧で、結局は誰もが何らかの特性を持っているんです。それが日常生活に支障をきたすほど強く表面化する人もいれば、あまり表に出ない人もいる。表に出るけど支障はない、という人も。人によってバラバラなので、自分が発達障害の特性を持っていると自覚するのは難しいんです。

――自覚することって、やはり大切ですか?

とても大切です。私は発達障害者が生きやすい社会を作るためには「本人の自覚」と「周囲の理解」の両方が必要だと考えています。自分の特性を知って「自分はこういう人間なんだ」と自覚し、それを周りにも理解してもらうこと。それが第一歩かなと。自覚がないと周囲の理解も進まず、周りも本人も苦しむ状況が続くだけなんです。

さらに怖いのは、生まれつきの一次障害である「発達障害」は鬱(うつ)病など、二次障害である「精神障害」につながる恐れがあること。実は精神障害者の約半数は、根本の原因が発達障害にあると言われています。例えば、発達障害の特性によってコミュニケーションがうまく取れない人が職場でストレスを溜め込んだ結果、鬱病になることがあります。これは、根本にあるコミュニケーションが苦手な特性に対する周囲の理解があれば、防げるかも知れないんです。

精神障害になると、睡眠薬や精神安定剤などを処方されますが、これは対処療法なので発達障害の特性が原因の場合はそれを解消しないと意味がないんです。だから、転職や引っ越しなど、環境を変えることで鬱病が改善することがありますが、これは発達障害の特性上で困っていた部分が解消されるからなんですね。

私は20代の時に双極性障害(躁鬱病)と診断され、一時期精神障害者手帳を持っていました。そのため、色々な人から「建山さんは精神障害者だったのに、なぜ発達障害の支援をするの?」と聞かれますが、その理由はさっき言った通りですね。この2つは根本でつながっていることもあるので。

建山和徳インタビュー Vol.2 「『発達障害』という言葉がなくなる日まで」-画像-01

――ということは、発達障害への理解不足によって誰かを精神障害に追い込んでしまう可能性もあるのでしょうか。

あります。それも悪意なくやってしまうから怖いんです。相手の特性を知らないまま無理な仕事を要求してしまったり、叱責してしまったり……。皆が「当たり前」と思っていることが、発達障害者にとっては当たり前ではない可能性がある。そのことを理解することが大事です。

――誰かを追い込んでしまわないために、知っておくべきことは何でしょうか。

発達障害には、その根本の原因がいくつかあります。例えば「注意欠如多動性障害(ADHD)」でいうと、「聴覚過敏」や「視覚過敏」など体質としての原因があるんです。要は、それぞれの感覚が過敏に反応してしまうために集中が妨げられ、深刻な場合は仕事や日常生活に支障が出てしまうんです。

ここで、「あの人はADHDだから落ち着きがない」だけで片付けてしまうのが問題で、細かい原因まで突き止めていくことが大切です。「聴覚過敏」が原因なら仕事中にヘッドフォンを付けたり、静かな場所で作業ができるようにするなど、音に対する配慮をする。「視覚過敏」ならデスクをパーテーションで仕切って視界にたくさん情報が入らないようにするなど。原因さえ分かれば具体的な配慮の方法がわかるんですね。

街中を青くして、発達障害を知ってもらう

――発達障害への理解促進のためにこれから取り組まれることを教えてください。

特に力を入れているのが、大阪の街を青く染める「アオクスル」プロジェクトです。毎年4月に国連が定めた「自閉症啓発デー」と、厚生労働省が定めた「発達障害啓発週間」というのがあります。期間中、世界の各地でランドマークを青くライトアップするのですが、私は大阪の街を青く染めることで発達障害について知ってもらおうと考えたのが始まりです。

「アオクスルプロジェクトで子どもたちが自由に絵を描いた「アオクヌル」キャンパス

「アオクスルプロジェクトで子どもたちが自由に絵を描いた「アオクヌル」キャンパス。「色んな青があっていい」という思いで、サインペンやマーカー、ポスターカラーなど、何種類かのペンを用意した。

第1弾として、2016年に西成区で行われた「サクサク祭」をはじめ、何か所かで白いキャンバスに青のペンなどで思い思いにペイントしてもらう「アオクヌル」を行いました。そして2017年4月には事務所の入っているビルを青くライトアップしました。この取り組みを知った名古屋の方が、「名古屋でも同じようなことをしたい」と連絡をくださるなど、活動が広がっていくのが楽しみです。難しいことは後でもいいので、取りあえず「青」を見て「発達障害」という言葉だけでも知ってもらえたらうれしいですね。

事務所が入居するビルを青く染めた2017年4月の「十三アオクスル祭り」

事務所が入居するビルを青く染めた2017年4月の「十三アオクスル祭り」。2~4階の窓には青のセロファンを貼り、1階は青のスクリーンをかぶせたライトで照らしている。

また、今までの活動で得た知見を活かして、色々な人の特性を細かく診断するツールをつくりたいと考えています。さらに企業を経営者目線と外部目線で診断するツールもつくり、それを掛け合わせることで企業と人材のマッチングができるようにしようと。これは「みがく」での活動を通じてたくさんの当事者と接してきた私だからできることかな、と思います。

――ありがとうございます。最後にこの先の夢を教えてください。

私が精神障害の手帳を持っていたころから15年以上が経ちました。当時は、「気の持ちようだ」とか「気合いが足りない」と批判の対象だったのが、今は「メンタルヘルス」という言葉で少しずつ守られるようになっています。このような改善が発達障害にも起こってほしい。そして、最終的には「発達障害」という言葉自体を無くしたいんです。世の中に平均的な人なんていない。誰にでも少しずつ苦手なことがあって、その程度も人それぞれ、というだけなんです。それを皆が「個性のひとつ」と認め合う世の中にしたいですね。

「世の中に平均的な人なんていない」っていうのは本当にそうよね

なるほど
  • 建山和徳さん
  • プロフィール

    建山和徳

    一般社団法人みがく代表理事/ウェブレイス代表
    20代で双極性障害と診断され自宅に引きこもる日々を送るが、さまざまな人の支えによって社会復帰を果たす。2008年、Web制作事務所「ウェブレイス」設立。2015年、「一般社団法人みがく」設立。就労支援や啓発活動を中心に発達障害者の支援サービスに取り組む。最近は、4月の発達障害啓発週間に大阪の街を青で染める「アオクスルプロジェクト」に力を入れる。

    一般社団法人みがく:http://migaku.or.jp/
    ウェブレイス:http://webrace.jp/

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