Maker Faire Tokyo 2017レポート「ポジティブなものづくり」の魅力

2017/08/21

WRITERテキスト:トライアウト・福井英明/撮影:トライアウト・関水大樹

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Maker Faire Tokyo 2017レポート「ポジティブなものづくり」の魅力

ロボットやデジタルアートなどの電子工作から、木工・ペーパークラフトまで、あらゆる「ものづくり」のアイデア作品が集結する「Maker Faire Tokyo」が2017年も開催されました。2017年は約450組もの出展者が一堂に会し、技術力・発想力にあふれたユニークな作品を展示。年齢、性別、国籍を問わず、「ものづくり」を愛する数多くの来場者を魅了しました。

「Maker Faire」の原点は2005年にアメリカで生まれた、テクノロジー系DIY工作の専門雑誌「Make」。この雑誌を通じて、自宅のガレージや庭で独自のものづくりを楽しむ人たちのコミュニティが広がり、やがて大きな「メーカー・ムーブメント」へと発展します。そして、Makerたちが集まる「Maker Faire」は、サンフランシスコのベイエリアで初めて開かれたのを期に世界各地で開催されるようになりました。

日本では2008年、東京・隅田川沿いの一角で行われたのが始まり。当時は「Make:Tokyo Meeting」の名で、30組ほどの出展者が作品を発表しました。その後、2012年には「Maker Faire Tokyo」として大規模に生まれ変わり、昨年には400組以上の出展者と18000人を超える来場者を集めるまでになりました。

「Maker Faire Tokyo 2017」の出展作品の中にも、視点と発想の面白さを感じる作品がたくさんありました。取材した中から、その一部をご紹介します。


「全自動メガネ洗浄ロボ」
坂井 義治さん

その名の通り、メガネの洗浄をすべて自動で行ってくれるロボット。洗剤の吹きつけから水洗い、そしてブロワーでの乾燥まで一通りをこなしてくれます。

発明者の坂井さんは、以前からメガネを毎日洗うのが習慣だったそうです。ある時「朝、顔を洗って歯を磨く間にメガネの洗浄ができたらラクなのに……」と感じたのが発明のきっかけ。また、洗浄後のメガネを拭くのに布やティッシュペーパーを使うとレンズのコーティングが傷むため、ブロワーを使って非接触で乾燥させたいという思いもあったそうです。

最初は乾燥の工程だけを自動化したものの、だんだん洗うのも面倒になってきて、最終的に全工程を自動化することに成功しました。清潔と時短を両立したいメガネユーザーにとっては夢のような装置ですね。

坂井義治さん

「変な物を格安で自作することが趣味」という坂井義治さん。昨年はメダカに自動でエサをやるロボットを出展した。

「全自動メガネ洗浄ロボ」坂井 義治さん
http://makezine.jp/event/makers2017/m0041/


「日めくりメクリッパー」
ねくある(NEXT+α)

「日めくりメクリッパー」ねくある(NEXT+α)

「ねくある」は工業系の専門学校OBによる技術集団で、とにかく面白いものを発明するのがモットー。今回の展示は、日めくりカレンダーを毎日自動的にめくってくれる装置です。以前、研究室にあった日めくりカレンダーを見て「これ、誰かが毎日めくっているんだ。自動化してラクにしてあげたい」と思ったのが始まりだそうです。

2本のアームを使ってラバー面をカレンダーに押し付け、そのまま強引に下へズラすことでカレンダーを切り取っています。下へズラすための機構には「ソレノイド」という部品を使っていますが、これは電磁コイルの力で鉄芯を上下に直線運動させるもの。自動販売機や改札機、アミューズメント施設の遊具など、身近な機械に使われています。

その「ソレノイド」を使ったユニークな発明品を表彰する「ソレノイドコンテスト(主催:タカハ機工株式会社)」において、2017年の大賞に輝いたのが、この「日めくりメクリッパー」なのです。カレンダーのめくり方について、最初は下から1枚だけつまむような方法も考えたそうなのですが、試行錯誤の末に現在の形に落ち着いたそうです。

定期的に「Ctrl+S」を押してドキュメントの保存忘れを防ぐ「論文まもるくん」

他にも、定期的に「Ctrl+S」を押してドキュメントの保存忘れを防ぐ「論文まもるくん」など、ソレノイドを使ったユニークな作品を展示。

「日めくりメクリッパー」ねくある(NEXT+α)
http://makezine.jp/event/makers2017/m0056/


「おバカクラッカーランチャー」
ウルカテクノロジー

こちらはパーティーなどで大活躍しそうな作品。その名の通り、クラッカーをちょっと「おバカ」に発射してくれる装置です。

「パ~ン!」という爽快な音と紙吹雪で場を盛り上げてくれるクラッカーですが、さらに盛り上げるためにLEDライトや花びらの演出も加えられています。最後はモーターで糸を巻き上げることで自動的に発射します。

発明者いわく、インターネット経由で遠隔操作することも可能だそうで、「子供の頭につけておけば、イベント会場などで迷子になっても大丈夫」とのこと。(失礼ながら)この発想もなかなかの「おバカ」ですが「顔認証の技術と組み合わせれば、ネコやイノシシなどの害獣を追い払うのにも使えます」と、最後はマジメに語ってくれました。

脚を付けて4足歩行しながら発射できるタイプも。

脚を付けて4足歩行しながら発射できるタイプも。

「おバカクラッカーランチャー」ウルカテクノロジー
http://makezine.jp/event/makers2017/m0039/


「にゃぁぽっぽ」
nankasince2016

「にゃあぽっぽ」nankasince2016

「猫背をなおしたい」と悩む多くの人を救うかもしれない画期的な発明品がこちら。一見、ただのネコのぬいぐるみに見えますが、猫背になると「ニャー」と鳴いて知らせてくれる仕掛けになっています。頭のすぐ後ろから鳴き声が聞こえてくるので、装着している本人はドキッとするそうです。

背筋が曲がるとネコの腰あたりから出ている紐が引っ張られるため、そのテンションの変化を感知して鳴き声を鳴らしています。ちなみに、ネコの鳴き声はいくつかの種類から選べるそうです。さらに面白いことに、背筋を逆に伸ばし過ぎてハト胸になると、ハトの鳴き声も鳴らす仕組みになっています。これなら、美しい姿勢を楽しく身に付けられそうですね。

この装置の開発を思い立った経緯について、開発者の宗野さんに聞きました。
「私自身、昔から猫背を直したかったのですが、矯正ベルトを使うと筋肉が弱って逆効果……。でもネコの声が鳴ると思うと、恥ずかしいから嫌でも背筋を伸ばしますよね。つまり矯正するのではなく、羞恥心に訴えかけることで姿勢を正そうと思ったんです」。

開発者の宗野さん

本業はメーカーのエンジニアという開発者の宗野さん(右)。

「にゃぁぽっぽ」nankasince2016
http://makezine.jp/event/makers2017/m0286/


「MSゴシック絶対許さんマン」
白金鉱業

「MSゴシック」はWindowsのPCおよびMicrosoftのWordやExcel、PowerPointなどのソフトでよく目にする文字のフォント。「何となく、ダサい……」「仕事の文書っぽくて気分が下がる」と敬遠される方もいるようです。そんな「MSゴシック」で書かれたカードを勝手に捨てる、という冷徹なロボットがこちら。

これはフォントの違いをディープラーニングで見分ける人工知能と、ロボットアームを組み合わせたもの。複数のフォントで文字が書かれたカードの中からMSゴシックのカードを識別し、吸盤で持ち上げて捨ててしまうのです。今の所、カード全体を画像として認識しているため、書かれている文字が変わってしまうと識別できません。将来的には1文字ずつ認識させて、何と書いてあっても識別できるように改良していきたい、とのこと。

しかし、展示品よりも気になったのは、出展者の方が着ていたTシャツでした。

「親に向かってなんだそのMSゴシックは」Tシャツ

「MSゴシック絶対許さんマン」白金鉱業
http://makezine.jp/event/makers2017/m0235/


RC-DC(キューブ型卓上片付けロボット)
休日ロボットエンジニア

「RC-DC(キューブ型卓上片付けロボット)」休日ロボットエンジニア

お掃除ロボットはすっかり有名になりましたが、「片付け」をしてくれるロボットは見かけませんね。気がつけば散らかっているデスクの上を自動ですっきり片付けてくれるロボットがあれば……。そんな思いから開発されたのが、こちらの作品。

この作品のキモは「2台ある」ということ。デスクの上には細長いものから太いもの、柔らかいもの、堅いもの……と色々な形状の物体が散らばっています。それらを1台のロボットで片付けようとすると、物を移動させるための機構を無限に作らねばならず、大変。そこで視点を変えて、2台で協力しながら片付ける仕組みにしたそうです。

将来的にはお掃除ロボットとも組み合わせて、片付けから掃除までワンストップでできるロボットを開発して欲しい、と感じました。

「休日ロボットエンジニア」のお二人

会社の同期などが集まって休みの日にものづくりを楽しんでいる「休日ロボットエンジニア」のお二人。

RC-DC(キューブ型卓上片付けロボット)休日ロボットエンジニア
http://makezine.jp/event/makers2017/m0053/


「OctoChef」
OctoChef

こちらは、たこ焼きを自動で焼いてくれるロボットです。6軸の産業用ロボットアームを使い、生地を注ぐ→タコの切り身を入れる→形を丸く整える……までの工程を自動化しました。生地をちゃんと一定量ずつ注いだり、竹串でひっくり返したりするあたり、かなり精度の高いロボットのようです。

もともと、「産業用ロボットを一般家庭のキッチン作業に応用してみたら面白いのでは」という発想と、「たこ焼きパーティーで、いつも焼く作業に追われて食べられない人がいるのを解消したい」という思いを抱いたのが開発のきっかけだそうです。ロボットが焼くたこ焼き屋がオープンする日も近いかも知れません。

OctoChefさん

「OctoChef」OctoChef
http://makezine.jp/event/makers2017/m0066/


他にもあったアイデア作品の一部をご紹介!

「紙で作る山岳立体模型キット『やまつみ』」 やまつみ工房
http://makezine.jp/event/makers2017/m0258/

「紙で作る山岳立体模型キット『やまつみ』」やまつみ工房

地図の等高線に沿って切った紙をひたすら重ねて作る山岳模型があるのをご存じですか? それを一般の人にも手軽に楽しんでもらおうと、あらかじめレーザーカッターで切った紙にシール加工し、キットにしたのがこちら。出展者の方いわく「百名山すべて作るのを目指していますが、道のりは長い……」とのことです。

「最寄駅まで余裕で間に合うスマートミラー」ヘンリーウィー
http://makezine.jp/event/makers2017/m0140/
「最寄駅まで余裕で間に合うスマートミラー」ヘンリーウィー

ハーフミラーとディスプレイを組み合わせ、さまざまな情報を表示できる鏡を開発。最寄駅の電車の発車時刻と現在時刻を表示させることで、電車に乗り遅れることなく朝の身支度に時間を使うことができます。「朝、ギリギリまで寝ている」という開発者の方は、実際に日常生活でも使っているそうです。

「アイガモロボット」i-GAMプロジェクト
http://makezine.jp/event/makers2017/m0064/

「アイガモロボット」i-GAMプロジェクト

水田の雑草を防ぐ方法として古くから受け継がれるアイガモ農法。これはアイガモが足で水をかき回すことで水が濁り、雑草が光合成できなくなる、というからくりです。しかしアイガモは動物なので、毎日きっちり仕事をしてくれるとは限りません。さらにアイガモのフンは肥料になるため、どうしても肥料過多になってしまうそうです。

そこで誕生したのが、アイガモの動きを再現したロボット。これを水田に浮かべて自動で動かし続ければ、気まぐれなアイガモに頼らなくても減(無)農薬栽培のお米が食べられる、というわけです。

「電子部品のアクセサリー」さのもの
http://makezine.jp/event/makers2017/m0016/

「電子部品のアクセサリー」さのもの

一見普通のアクセサリーですが、よく見ると回路基板や抵抗器、コンデンサーなどの電子部品でできています。もともと趣味でアクセサリーづくりをしていたという出展者の石田幸子さん。友人が電子工作をしているのを見て、その部品を「カワイイ」と思ったのが始まりだとか。作品はインターネットで購入できます。 http://shop.sanomono.com/


●取材を終えて

Maker Faire Tokyo 2017の出展者は約450組。そのうち、ここでご紹介できたのは11組でしたが、どの作品も見る人を楽しませるユニークなアイデアであふれていました。開発のきっかけは作品によってさまざまですが、共通するのは「もっと楽しくしたい」「もっと良くしたい」という前向きな気持ちが発端にあるということ。そんなポジティブさから生まれるものだからこそ、「ものづくり」には人をワクワクさせ、夢中にさせる魅力があるのではないでしょうか。笑顔で語り合う出展者と来場者を見て、そんな思いを抱きました。

イキイキとものづくりしている人ってステキね

ほほえみ

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