天満天神繁昌亭 eo光寄席

マメ知識

落語を10倍楽しむために


「落語を楽しむ定席とは?」

eo光寄席の舞台となっているのは天満天神繁昌亭。上方落語の聖地と呼ばれています。では、日本全国にはいつでも落語を楽しめる演芸場はどれくらいあるのでしょうか。

もともと、東京には鈴本演芸場(台東区)新宿末広亭(新宿区)浅草演芸ホール(台東区)池袋演芸場(豊島区)国立演芸場(千代田区)の五席があり、根強い落語ファンに支えられてきましたが、関西には落語を常に上演する《定席》がなく、半世紀ぶりに2006年、天満天神繁昌亭が誕生しました。また、このところ全国各地に次々と定席が生まれています。

関西では昨年(2018年)に神戸の歓楽街の新開地に開席した「神戸新開地喜楽館」。こちらは繁昌亭の大入りを見て、地元の商店主が桂文枝師匠に手紙を届け、行政や市民の寄付三億円で建設。店主らでつくるNPO法人が運営しています。開業して一年。客足もよく、新開地の新たな名所として評判になっています。

同年に仙台市青葉区には「魅知国(みちのく)定席花座」が。また、名古屋には「大須演芸場」(2015年開席)。「横浜にぎわい座」は2002年から。

現在、全国には800人以上の噺家がいるとされます。これまでは、小さなホール、神社や寺の講堂、カフェなどで地道にやるのが常でしたが、ずいぶんと活動の場が広がって来ています。とはいえ、常設の演芸場は上記の10カ所ばかり。全国に広がるのは、まだまだ、これからでしょうか。

一方、人気者が出演する大ホールの落語会は相も変わらず盛況で、たとえば、桂文珍師匠は、20年3月に東京三宅坂の国立劇場大劇場で連続20夜の独演会を開催の予定。長らく続けてきた「大東京独演会」でしっかりと東京のファンの心をつかんできた成果です。国立劇場で20夜連続の独演会は前人未到の偉業でしょう。

小さな小屋で演者の吐息までもが聞こえるようなのもよし。立派な大劇場にて大人数で聴くもよし。落語の舞台はさまざま。形にとらわれず、ときに気軽に、ときにおめかしをして、上方落語をお楽しみになってはいかがでしょうか。

上方落語協会のホームページには、噺家さんのスケジュールが満載です。
https://kamigatarakugo.jp



「ちょっと通な、天満宮と繁昌亭の楽しみ方」

大阪天満宮を参拝して繁昌亭で落語を楽しむ。関西人に限らず、全国からツアーで訪れる方も多いそうです。今回は、この天満天神さんの少し通な参り方をご案内します。 天満宮は、ご存知の通り菅原道真公を本殿に。公以外にも天照皇大神、蛭子大神、応神天皇らが祀られています。繁昌亭の正面玄関の脇の道を歩くと見える祖霊社(それいしゃ)も、その一つ。 ここには祖先累代の霊をあわせて祀っています。境内には紅梅紫藤がさきみだれ、「星合の池」もあります。天暦3年(949年)に天満宮がご鎮座になったとき、この池水に霊光が映ったと伝承されています。昭和のはじめまで、このあたりでは歌舞伎が常打ちされ、あの吉本興業の発祥となった天満花月吉川館などの寄席も軒を連ねていました。

この祖霊社の境内に、なんと「話の神様」が祀られています。

「高坐招魂社」(こうざしょうこんしゃ)。

〜千早ふる神代の昔、天宇受売命は天岩戸前で舞い踊り、その姿を見た八百万の神々の笑い声に天照大神が惹かれ、天岩戸は開かれたと伝わる。笑う門には福来たるという国風が生まれ、往古より笑いの業に勤しみ励み、技芸を磨くものがあらわれた〜との御由緒のもと、上方落語協会は、平成29年10月18日に、大阪天満宮北側の星合池(通称・亀の池)のほとりに、境内社として、「高坐招魂社」を建立しました。

先人物故者の奉斎社殿として、上方落語の継承と発展に努められた先輩諸氏の功績を顕彰するものです。「話の神様」「技芸の神様」として、落語家のみならず、口下手で困っている方や、大事なプレゼンを控えている方、愛の告白を前にして、悩んでいる方々にとっても、ご利益がありそう。 そして、この社の隣に茶屋の「星合茶寮」があり、こちらの名物は「すべらんうどん」。受験の神様の天満宮にならって、「すべらん」。そして、噺家さんにはネタが「すべらん」というわけです。

なぜ、すべらんうどんなのか。これはお越しになった時のお楽しみとして、この場では控えましょうか(ヒントはお品書きにあります)。なかなかの美味で、お手頃なお値段。
春先の日差しが心地よい時期に、天満宮にお参りして、「高坐招魂社」でお話が達者になるように祈願して、すべらんうどんをいただいてから、繁昌亭の昼席を堪能する。ご利益いっぱいの半日が過ごせますよ。
そして、余裕があれば、高座がはねた後、天神橋筋商店街で寿司か焼き鳥でもつまめば、人生最良の一日になること、請け合い。


「やはり『笑い』は健康によい! ようです」

前々回のマメ知識でご紹介した「笑いでガン退治」の続報。大阪府立病院機構「大阪国際がんセンター」では、落語や漫才の「笑い」によって、がん患者の免疫力が向上するのかどうか、2017年に実証研究が行われていました。センターは吉本興業や松竹芸能、米朝事務所の協力のもと、「笑い」を鑑賞した患者と、しなかった患者の、それぞれ30人の血液を採取して分析しました。

その結果が先ごろまとまりました。笑いを鑑賞した患者の一人は、免疫細胞の一つである「NK細胞」の血中での割合が実験前の1.3倍に増えたことが確認されました。鑑賞した患者全体でも免疫細胞の増加の傾向が見られたそうです。

上手下手また、緊張や疲労、抑うつなどの6項目すべてで改善が見られ、がんの痛みも和らいだとか。「実際の治療に役立てるのはまだ難しいが、将来に期待したい」とセンター総長は語っています。古来「笑う門には福来たる」とされてきましたが、それが実証されたとも言えそうです。

ちなみに、この「笑う門には福来たる」というのは、日本や中国の東洋に限らず、欧米でも一般的で英語では次のような表現になるようです。

Fortune comes in by a merry gate.
「幸せは陽気な門に入ってくる」
ほぼ、そのままといっていいかもしれません。
もう少し古い表現ですと、

Laugh and grow fat.
「笑えば太るよ」
昭和の社長さんのイラストは突き出たお腹にダブルのスーツといったように、昔は太るということが幸せの象徴だったので、しかし、こちらは、今どきではちょっと、困りものでしょうか。



上手下手
「襲名とは、名を継ぐこと。いえ、命を繋ぐこと」

襲名を辞書で紐解けば、「親の名や師匠の芸名をつぐこと」とあり、能、狂言、歌舞伎、文楽、落語などの伝統芸能において、欠かせない慣習の一つですね。先代の名跡(みょうせき)を引き継ぎ、さらに、それを盤石のものとしてゆく。噺家の場合、一生のうちに一度あるか二度あるかという大きな契機です。

しかし、ここで一つ疑問がわきませんか。「襲名」を分解すると「名を襲う」となります。なぜ、名前を襲うのが、引き継ぐことになるのか。そもそも「襲」という文字には、「上を覆うもの」という意味があり、そこから「先代の次に覆いかぶさる」、そこから「襲名」となったとされます。先代の業績を飛び越えて成長していく…という願いが込められているわけです。世襲、踏襲などの「襲う」も同様の意味合いでしょう。

上方落語では、ここ数年大名跡の襲名が続いています。第八回eo光寄席で、トリに登場する七代目笑福亭松喬さんも、一昨年(2017年)10月に笑福亭三喬から七代目松喬を襲名しました。襲名にあたっては、実力、人望を踏まえ、一門の総意が必要。本人にも、大看板をしょって立つだけの心構えが欠かせません。もちろん、興行的に襲名披露公演と銘打って、全国を巡るのも大きな務めでしょう。

ちょっと思い起こすだけでも、2011年に、こちらも大名跡の、六代目桂文枝を筆頭弟子の桂三枝さんが襲名。(ちなみに、文枝さんは上方落語協会会長の重責を担いながら、現在、同一司会者によるトーク番組の最長放送世界記録保持者として記録更新中ですね。)

そして、松喬さんと同様に注目されているのが、桂春之輔さんの四代目桂春団治襲名です。初代春団治は、戦前のスーパースターで、古典落語にナンセンスなギャグを持ち込み、大胆に改革。〝爆笑王〟の名をほしいままにした名人です。また、先代の三代目春団治も、艶のある話ぶりで大変な人気を誇りました。三代目が2016年に亡くなり、弟子の春之輔さんが昨年(2018年)2月に襲名披露を行いました。名の大きさが人を育てる。さらなる活躍が期待されます。

襲名とは、ただ名前を継ぐのではなく、連綿と続く伝統芸能の命を明日に伝えること。昨今の落語ブームがいよいよ盛り上がりそうな予感がします。

※「新婚さんいらっしゃい」 195月現在



「笑いでガン退治」の実証研究 

2017年の5月から8月までをかけて、地方独立行政法人・大阪府立病院機構の「大阪国際がんセンター」が、吉本や松竹の協力を得て、笑いがガンに及ぼす影響の実証研究を行いました。その名も「わろてまえ劇場」。いかにも大阪らしいネーミングですね。

外来のガン患者に被験者になってもらい、センターのホールで、月に二度ばかり、漫才や落語をみる前後で、血液や唾液の検査を実施。ストレスや免疫細胞の変化を調べるというものでした。最終日には、桂文珍さんも登場して、大変な賑わい。調査結果は2018年3月に発表されることになっています。

「笑うのは健康に良い」という通説を改めて、科学的に検証しようと試みるのは、実は今に始まったことではありません。

例えば、「古典落語の笑いが日本人の脳によく効くんです」と謳う『脳を鍛える大人の落語』(きこ書房 2005年発刊)の著者 中島英雄医学博士は、こうも語ります。「人間は、笑うと脳から癒し系のホルモンと、活力が湧くホルモンが同時に出てくるのです」

中島博士の著作はこちら

今は亡き、中島博士は、脳の専門医でありながら、桂前治という高座名をもち、中央群馬脳神経外科病院の理事長を務めるかたわら、月に一度「病院寄席」を開いて高座にのぼり、近所の人たちや患者たちを相手に真打ち顔負けの落語を披露していました。

博士は、患者の協力を得て、落語を聞く前と後での様々の脳機能の変化を調査し、脳の部位別血流量の変化や、α波とβ波の増減など、これまで明らかにされていなかった笑いの好影響を数値化し、公表されています。

他にも、1991年(平成2年)に大阪ミナミの演芸場で実験が行われています。ガン患者を含む19人に吉本新喜劇を3時間見て大笑いをしてもらい、その前後でナチュラルキラー細胞(リンパ球の中にあってガン細胞を直接攻撃する細胞)の活性度を調べたのです。その結果、最初から低かった人、基準内だった人のいずれもが、活性度が上昇しました。つまり、笑いはガンに対する抵抗力を高めることが判明したのです。

笑うと脳が元気になり、やる気が出て、ストレスも緩和されます。思考力も向上するので、認知症予防にもなります。『笑いは神様が下さった万能薬』とまで言われます。

健康のためにも、ぜひ、時間があれば、繁昌亭などに足を運んでみてはいかがでしょうか。そうそう、今年の夏頃には、神戸新開地に「第二の繁昌亭」と言われる「神戸新開地・喜楽館」も誕生するとか。落語ファン、お笑い好きには、楽しみが増えますね。


上手下手
「上手下手」

古今東西、舞台では、客席から見て右側を上手、左を下手と呼びます。上手は変化を受け止めるもの。下手は変化をもたらすもの。というのが基本で、通常、上手には、年配者が座ります。落語の場合、たとえば、旦那が上手、来客が下手となります。そこで、一人芸である落語では、人物を演じ分けるのに、この上手、下手を巧みに使い分けます。首を左右に振りながら、こちらはご隠居さん。こちらは、クマさん、、といった具合です。
これは落語ならではの工夫。ところが、その基本を超えて、笑福亭福笑さんは、あえて正面を向きながら、人物を描き分けます。なぜか。客席と常に正面で向き合うことで、伝える力を倍増させるためではないでしょうか。上下に振り分けない。そういう革新的な演技スタイルも、見ものですね。


定式幕
「定式幕」

緑と茶色と柿色の三色の引幕が、中入りのときに引かれます。これが定式幕。もともとは歌舞伎の舞台で使われていたもの。歌舞伎の場合、演目、場面によって様々の幕が用いられますが、定式幕は開演と終演のときに使われます。また、幕の色目は、中村座、市村座、森田座など座によって少し異なります。さらに遡ると…舞台は、客の入りが水ものなので、縁起を担いで、仏教の寺院を飾った五色幕を用いたのが始まり。それを落語の高座に転用したのです。ちなみに、「定式」とは「常に使われるもの」の意味あい。

色目の鮮やかさも、さることながら、ここには、演者の願いが込められているわけです。そう思って、中入りどきの舞台に目をこらすと、それはそれで楽しいもの。テレビでは味わえない、寄席小屋ならではの、趣ですね。


めくり
「めくりとは?」

高座の下手(客席から向かって左側)には、芸人さんの名前が書かれた紙製の札を立てます。これを、「めくり」といいます。その日の出演者の札が綴じられており、高座上の芸人が入れ替わる毎に「めくっていく」ことから、この呼び名がつきました。

芸名は、「寄席文字」という太い書体で書かれています。文字を太くするのは、隙間を小さくするため。「客席が埋まるように」という縁起をかついだものです。また、「だんだん興行がよくなるように」と、少し右肩上がりに書きます。 何気ないところにも、寄席への想いが込められているのですね。


「マクラについて」

噺家さんが高座に上がって、すぐに、落語の本編が始まるわけではありません。多くの場合、お客さまへの挨拶や自己紹介を終えると、まず、軽い世間話や小咄を披露します。これを「マクラ」と呼びます。
このマクラが担う役割は、実はとても重要です。本編と関連した笑い話で、観客の緊張を解きほぐすとともに、噺家さんは、そのウケ具合から会場の雰囲気を把握します。また、古典落語を楽しむには、予備知識が必要な場合もあります。現在では馴染みのない言葉や風習をさりげなく解説するためにも、マクラが使われます。頻繁に天満天神繁昌亭へと通うような「落語通」となると、このマクラを聴いただけで、「お、あのネタをやるんだね」なんて分かるのだとか。


三味線
「寄席囃子」

寄席にはつきものの寄席囃子。三味線は「お囃子さん」と呼ばれるプロの女性が演奏しますが、太鼓や鉦などの鳴り物は、実は噺家の前座が担当しています。演者さんが高座に上がるときに、それぞれの「出囃子」が演奏されます。また、落語の中でBGMのようにお囃子が使われることもあります。これは「はめもの」といって、江戸落語にはない上方特有のものです。

その他にも、公演の始まりや終わりを告げる合図として太鼓が鳴らされます。開場と同時に鳴るのが「一番太鼓」。大太鼓が「ドン、ドン、ドントコイ(どんと来い)」と打たれます。開演五分前に鳴らす「二番太鼓」は、締め太鼓と大太鼓で「オタフクコイコイ(お多福来い来い)」と聞こえるように打ちます。終演時には「ハネ太鼓」が「デテケ、デテケ、デテケ(出てけ)、テンテンバラバラ…」と、お客様を追い出します。

本当にそう聞こえるかは前座さんの腕次第?ぜひ実際に足を運んで、耳を傾けてみてください。


「初めての寄席見物」

初めて寄席を見に行く人は堅いイメージがあるかもしれませんが、構える必要はありません。出演者や他のお客様の迷惑にならないようにさえすれば、自由で気楽な空間です。もちろん服装にも決まりはありません。おしゃれをする必要も、着物を着ていく必要もありません。とはいえ、せっかくのハレの日、ほんの少し着飾ってみるのも悪くないでしょう。買ったけれど着る機会のなかった着物を引っぱり出すのにも、もってこいの機会です。

繁昌亭は場内での飲食禁止です。ただし、寄席によっては飲食可能な寄席も少なくありません。客席へ出入りをする場合は、演目と演目の切れ間にしましょう。熱演の最中に立ち歩いては公演の妨げになります。なお、写真撮影や録音・録画は禁止されています。また、携帯電話はマナーモードにしましょう。

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