吉坊さん十八番の「芝居噺」のひとつ。
「温かい空気でお客とやりとりできる信頼感を得たい」
吉坊さんの見せる、亡き師匠ゆずりの洗練された高座は、必見!
『七段目』
ある大家の若旦那は、三度の飯より芝居が好き。家業もそっちのけで芝居小屋に通い詰めている。
そればかりか、日常の会話も歌舞伎の台詞でこなすほど。
その日も遅く帰ってきた若旦那。大旦那から説教を食らうと、これにも芝居口調で返す始末。
しびれを切らした大旦那は、若旦那を二階に追い払った。
しかし、当人は「これで好きなだけ……」と、ひとり芝居を始める。二階から響く大声に呆れた大旦那は、丁稚の定吉に命じて、これを止めに行かせた。
ところがこの定吉も、同じく大の芝居好き。相手ができ、「待ってました」とばかりに大喜び、二人で『仮名手本忠臣蔵』の七段目「祇園一力茶屋の場」の熱演をはじめるが……。
【桂吉坊さん プロフィール】
兵庫県西宮市出身。
大阪府立東住吉高校芸能文化科を卒業後の1999年10月、18歳で桂吉朝に入門。
実年齢よりも若くみられることが多いとのこと。大師匠である桂米朝宅で、住み込みの内弟子修行をしていた頃は、同行する先々で、米朝の孫と間違われていたそうです。
歌舞伎・能・文楽などの古典芸能に造詣が深く、ご自身も本格的な稽古を受けるほど。
能楽の謡は味方玄(みかたしずか)さん、鼓は大倉源次郎さん、日本舞踊は山村友五郎(ともごろう)さんに師事しています。
また、米朝一門らしく鳴り物も得意。太鼓・笛だけでなく、三味線や長唄も器用にこなします。
2008年には、繁昌亭大賞輝き賞、2014年には同・奨励賞を受賞。確かな実力から、着実にファンを増やしています。