大阪最強ラーメン店「カドヤ食堂」が阪神百貨店 スナックパークに出店を決めた理由とは
復活した名物店に強力な新店が加わったスナックパーク
2018年6月1日リニューアルオープンした阪神梅田本店(阪神百貨店)。なかでも注目を集めるのが、立ち食い店舗が軒を連ねるスナックパークの復活。阪神梅田本店の地下1階にあり、気軽に立ち寄って食べることができることから、大阪人であれば誰もが知る名物グルメスポットでした。
この通称“スナパー”がクローズしたのは2015年。今回の建て替え工事のためでした。そして今年4月、阪神梅田本店は新しい建物にスナックパークが復活することを発表。大きな話題となりました。
しかも、そのラインアップも目を見張るもので、以前からあり人気だった「阪神名物 いか焼き」「元祖ちょぼ焼き本舗」「御座候」「うまかラーメン」「たまご丸」のほか、「立ち喰い魚 ふじ屋(海鮮)」「牛焼 みらく(丼)」「道頓堀 赤鬼(お好み焼き&焼きそば)」「とり天うどん てんぼう(うどん)」「天ぷらの山(天ぷら)」「焼きスパ&ワイン ROMA-KEN(焼きスパゲッティ)」「魚がし日本一(寿司)」など精鋭ぞろい。
なかでも、ラーメンファンを中心にグルメブロガーを震撼させるほどの話題となったのが「カドヤ食堂」の出店。
2006年の「KANSAI1週間」ラーメン大賞以降、雑誌やテレビで高い評価を受け、ラーメンWalkerのグランプリ部門では何度も大阪の1位に輝き関西の店としては最初に殿堂入り。また、ミシュランガイドのビブグルマンにも2年連続選ばれ、関西No.1とも名高いラーメン店です。
グルメスクープ取材班としても気になるこの話題。6月1日を控えたオープン直前に、店主を直撃し、出店の理由やその想いを聞いてみました。
“子供の頃、スナパーの「カドヤ食堂」でラーメンを食べたのが
ラーメン好きになったきっかけです!”と言ってもらえたら最高です。
今回、西長堀の本店で取材を受けてくれたのは、カドヤ食堂店主の橘 和良さん。関西ラーメン業界が注目するラーメン店主のひとりです。
子供の頃の思い出が詰まった夢のような場所
- 単刀直入ですが、今回出店されたきっかけは?
- 「ボクは出身が加古川で、子供の頃両親に甲子園球場や阪神パークに連れきてもらって、そのときスナックパークでいか焼きやうどんを食べさせてもらうのが、最高のレジャーやったんです。そのスナックパークから、依頼が来たんですぐに受けてしまいした」
- これまで、何百もいろんな商業施設から誘いがあったんじゃないんですか?
- 「百もないけど、いろいろあったのは確か。でも、全部断ってきました。まったく違うことだったら、もしかするとあるかもしれないけど、『カドヤ食堂』のラーメンを食べられる店は今の2軒で十分」
- その方針を変えてでもスナックパークが魅力的だった?
- 「なんかボクの夢やなぁ。子供の頃のいい思い出があるスナックパークに出せるのは『夢』。いろんな話を断ってきてよかったなぁ、と思っています」
- しかも今回はワンコインでラーメンを出されるとか。大変だったんじゃないですか?
- 「宿題出されて、ものを作るのは、思ったより楽しかったです。正直、本店で出すラーメンはちゃんと原価計算したことなかった。今回は税込み500円、税金抜いて463円で売らないとあかん。人生で一番ちゃんと原価計算をしました(笑)」
- やっぱり苦しかったんですね
- 「それが違うんです。今まで取引していただいている食材の業者さんに、今回、スナックパークで、ボクが500円でラーメンを出すから食材を用意してくれるようお願いしたら、みんな予算に合うなかで、ちゃんとええもんを用意。そこから、さらに選ばせてもらったら、かなりいいもんができました。改めて“ものを作るって楽しいなぁ”って思いました」
- 本店に近いものになったんですか?
- 「そうですね。同じとはいかないけど、本店の中華そばに近い、鶏と豚の透明感のある清湯スープ。麺も平打ちの本店に近いものですが、立ち食いなんで、場所探しで食べるまでにちょっと時間がかかるかもしれんから、少しコシを出したり。専門的な話をするとカエシ(醤油ダレ)にしっかりを味つけるとか、本店とは違ったこともしつつ、でもカドヤ食堂の中華そばを感じてもらえるようにしています。あとは、お客さんが決めることやもんね。その評価もちょっと楽しみにしています」
↑阪神梅田店のカエシ。
- もしかして、本店のようにトッピングの中央に海苔も
- 「あれがあっての『カドヤ食堂』やから、やるつもりです。今はオペレーションが心配(笑)。でも味もかなりよくできていると自分でも思うし、“本店よりスナパーのカドヤの方がおいしい”って言われそう(笑)」
↑こちらが「カドヤ食堂 総本店」の中華そば900円。この後に続くスナパーの中華そばと比べてみてください。
- スナパーの担当者に要望とか出したことはありますか?
- 「ボクのスナパーへの想いとしては、昭和なイメージが強かったんで、あんまりおしゃれにせんといてほしいな、とかは言いましたけど、そないには強く言ってません(笑)。ただ、水だけは言いました。“水も食材”というのがボクの考えなんで、しっかりとした水用のフィルターシステムをつけたいというのはお願いしました。だからラーメンはもちろんですけど、一緒に飲む水もおいしいですよ」
↑店内に設置された水のフィルター
- スナパーであっても「カドヤ食堂」の高いクオリティは守るということですね
- 「そんなんは当たり前です。子供の頃のボクみたいな子が、スナパーの『カドヤ食堂』に来てくれて、将来本店に来て“子供の頃、スナパーの「カドヤ食堂」でラーメン食べたのがラーメン好きになったきっかけです!”とか言ってくれたら最高ですよね」
お店をチェック!
お店は、スナックパークの角。注文&支払い、受け取り、食器の返却がそれぞれ別になっています。注目は、注文&支払いと受け取りの間にある冷水機。橘店主自慢の水が飲めます。
製麺こそしていませんがスープやチャーシューはこちらで調理しています。
メニューチェック
「中華そば」500円
店主の橘さんが「もしかしたら『本店よりこっちの方が好きや』という方が現れそう」と危惧するほどの完成度。スープは最初に鶏の旨味をしっかり感じさせ、少し甘味を残す余韻が素晴らしい。ツルリとしたちょい細めの平打ち麺は、スープを絡めながらスルスルと口のなかに入ってきます。上品すぎないけど、「ええ中華そば喰った!」という満足を味わえます。
メニューは中華そばをベースに、さまざまなトッピングを用意。
特に注目したいのは、味玉。実は本店には味玉入りがないので「カドヤ食堂」では、ここでしか食べられません。
直感的に“おいしい”を感じる王道の中華そば
味としては王道の中華そばの“ちゃんと”作ったものです。普遍的においしいものは、よく考えて分析しつつ食べない限り、「あ~、おいしい」という感想を抱きつつむさぼり食べて満足感を得て食べ終えるだけだと思います。この中華そばは、そういうラーメン。よほどのラーメンファンでない限り直感的にそうやって楽しめるラーメンだと思います。
ラーメンWalker関西の構成や取材を担当していることから毎年年間100杯近くのラーメンを味わっている人間としては、今回、食べて最初に出た感想は、「これが500円!!!」。こんなラーメンを500円で出されると、多くのラーメン店の価値が下がっちゃうかもしれない。ある意味革命的なラーメンだと思います。
高田 強/フードライター
関西エリアを中心に雑誌やwebで飲食店やフードトレンドについての記事を執筆。現在は「関西ウォーカー」、「るるぶ大阪」、「おとなの週末」、「SKY WORD」、「関西・中国・四国じゃらん」などの雑誌、情報誌に寄稿。約月1回ペースで登場する関西テレビ「よ~いドン!」のほか、ABCテレビ「おはようコールABC」、「おはよう朝日です!」、読売テレビ「朝生ワイド す・またん!」などのテレビ番組にグルメ情報のナビゲーターとして出演。