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すり傷・やけど・ねんざに骨折…小児科医に教わる、子供に多いケガ10種類と応急処置方法まとめ

「階段から落ちて足をひねった」
「熱湯に触ってやけどをした」
「お手伝いをしていたら包丁で指を切った」
「公園の遊具から落ちておなかを打った」
「木の破片が指に刺さった」

こういったケガを子供がしたときにすべき、正しい応急処置法を知っていますか?

応急処置次第で、ケガの治りの速さに大きな違いが出ることもあります。そこで今回は、子供がしやすいケガを10種類ピックアップし、それぞれの応急処置方法やそのポイントを小児外科医の佐藤正人先生に教えていただきました。子供と過ごす時間が増える夏休み前に確認しておきましょう!

佐藤正人

公益財団法人 田附興風会医学研究所 北野病院

公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 外科統括部長・小児外科主任部長を務める。 日本小児外科学会指導医・専門医として小児外科全般の診療を行っており、特に小児内視鏡外科に通じる。

0.はじめに

以下にご紹介する処置方法は、あくまでケガの直後に行うべき応急処置方法です。

家庭での処置で治癒が見込めるのは、軽度のすり傷や切り傷・打撲程度です。子供がその他のケガをした際には、応急処置後に必ず外科で診察と治療を受けてください(※1)。すり傷や切り傷・打撲でも、範囲が広かったり程度がひどかったりする場合は、病院での受診をおすすめします。

※1 ケガの場合は子供でも小児科ではなく外科または小児外科を受診してください。

1.すり傷を負ったとき

皮膚がこすれたときなどに生じる「すり傷」。傷は浅く出血もひどくないケースがほとんどですが、傷口についた雑菌や汚れが原因で化のうしやすいので、軽視せずに適切な応急処置をすることが大切です。


・すり傷の応急処置法
まず水道水を出しっぱなしにして、患部にかけ流します。水流を使って、傷口に付着している土や砂・小石・ゴミなどを洗い流しましょう。洗浄が終わったら、乾燥させないタイプのバンソウコウで傷を覆ってください。一昔前までは「傷は乾燥させて(かさぶたにして)治す」というのが常識でしたが、今は逆。傷に生じるジュクジュクした体液を乾かさずにキープすることで自然治癒を促す「湿潤療法」が推奨されています。

また、基本的に傷口の消毒は不要です。消毒液には菌を殺す効果がある反面、健康な皮膚細胞も攻撃してしまう恐れがあるからです。そのため、消毒が原因で治りが遅くなる可能性も考えられます。

なお、すり傷の範囲や程度がひどい場合は、応急処置後に外科外来を受診してください。

 

2.切り傷を負ったとき

子供が切り傷を負ったら、応急処置後に外科外来を受診することをおすすめします。細菌が入った状態で傷が閉じてしまうと、感染症を引き起こす恐れがあるためです。


・切り傷の応急処置法
まず患部を直接ガーゼで抑えて圧迫し、止血しましょう。出血がひどい場合は、患部を心臓より高い位置に持ち上げると出血が早く止まります。出血が治まったら、傷口が汚れている場合は流水をかけて洗い流し、湿潤タイプのバンソウコウを貼っておきましょう。

 

3.刺し傷を負ったとき

とげや木片・古くぎ・鉛筆の芯・ガラスなどが刺さったり、これらを踏んだりしたときにできるのが「刺し傷」です。刺し傷を負ったら、必ず外科外来で診療を受けましょう。傷の範囲は小さくても深くまで達していたり、刺さったものが折れて傷の中に入り込んでいたり、傷についた汚れや菌が破傷風などの感染症を引き起こしたりする恐れがあるからです。


・刺し傷の応急処置法
浅い刺し傷の場合は、ピンセットなどで刺さったものを抜き、流水で表面を洗い流します。その後、患部にガーゼを当てて止血をしましょう。深い刺し傷の場合は、刺さったものを自分で抜こうとすると血管や神経を傷つける恐れがあるので、自分で抜かずに直ちに病院へ。傷が浅いか深いかの判断がつかない場合も、そのまま病院へ行くようにしましょう。

 

4.打撲(だぼく)を負ったとき

打撲を負うと、損傷した部分を修復するために患部に血液組織が集まってきて、皮膚が赤色~紫色になったり腫れたりします。軽度の打撲であれば特に心配はありませんが、打撲が広範囲にわたっていたり腫れがひどかったりするときは注意が必要です。内出血や骨折を起こしていたり、患部の筋肉が潰れていたりする恐れがあるからです。早急に外科外来を受診してください。


・打撲の応急処置法
軽度の打撲の場合は、タオルを巻いたアイスパックなどで患部を冷やしましょう。患部の熱が取れたら、低温やけどを防ぐためにアイスパックを外してください。数日で腫れや赤みは治まることが多いのですが、一向に治らないようであれば病院へ。

なお、腹部や胸部・頭部の打撲では、数日後に子供が不調を訴えるケースもあります。数日間、丁寧に様子を見てあげてください。

 

5.骨折が疑われるとき

骨やその周囲には血管や神経がたくさんあります。そのため、骨折すると強い痛みや腫れが生じたり、患部が不自然に変形したりします。しかし、ねんざや打撲でも似たようは症状が発症したり、乳幼児の骨折の場合は腫れがそれほど出なかったりもします。つまり、「骨折かどうか」の判断は一般の方では難しいのです。

そこで大事にしてほしいのが、「骨折が疑われる症状は、全て骨折として扱う」と考えること。「歩けるから大丈夫だろう」「そんなに腫れていないから大丈夫だろう」といった自己判断をせずに、骨折が疑われるときはすみやかに外科・整形外科外来を受診してください。

 

・骨折の応急処置法
まず、患部を締め付けている衣類を脱がせるか切り広げるかをして、患部を露出させます。次に、骨折が疑われる部分の上下の関節にまたぐように副え木(そえぎ)を当て、患部が動かないように固定します。副え木として使うものは、板やダンボール・靴ベラ・バット・傘・杖・雑誌・新聞紙など。固定できるものなら何でも構いません。すき間ができてうまく固定できないときは、タオルなど柔らかい布を挟みましょう。

「骨折しているかもしれない」と思ったら、とにかく動かさずに患部を固定することが大切です。神経や血管に傷がついてしまう恐れがあるので、骨の変形を戻そうとしたり、動作確認をしようとしたりするのは禁物です。

なお、患部の皮膚に傷や出血がある場合は、先にその手当をしてください。傷口から侵入した菌が骨髄に侵入し、治癒を長引かせたり化のうしたりする危険性があります。すり傷や切り傷の手当と同様に傷口を流水で洗い流し、その後に上記の方法で患部を固定します。応急処置後はすみやかに外科・整形外科外来で受診してください。

6.ねんざをしたとき

一口にねんざと言っても、関節のじん帯が一時的に伸びている状態から、じん帯の一部が切れている状態・じん帯が完全に断裂している状態まで、その程度はさまざまです。治療についても、簡単な固定で済むケースから手術が必要なケースまで多岐にわたります。

骨折と見分けるのが難しいので、「これって骨折? それともねんざ?」と迷ったら、骨折として扱うようにしましょう。


・ねんざの応急処置法
ねんざの応急処置法は、骨折と同じです。骨折の応急処置法はこちらをご確認ください ▶

 

7.肘内障 (ちゅうないしょう)

2~3歳の子供に多いのが、肘内障(ちゅうないしょう)です。このくらいの年齢の子供の関節はまだしっかりしていません。「急に腕を引っ張る」「腕を強く押される」などの、ちょっとした動作でも簡単に外れてしまうことがあるのです。子供が急に肩や手を動かさなくなったり痛がったりしたら、肘内障を疑って外科・整形外科を受診するようにしてください。


・肘内障の応急処置法
「肘内障かも」と思ったら、できるだけ患部を動かさないようにしながら病院へ。大人の力で無理やり関節をはめようとするのは、絶対にやめてください。

また、肘内障は再発も少なくないケガです。予防のためにも、腕を強く引っ張ったり押したりするような、肘内障の要因となるような動作は避けるようにしましょう。

 

 

8.やけどをしたとき

家庭内で起こりやすいケガのひとつが「やけど」。やけどは症状の程度によって3つの段階があります。応急処置方法のご説明の前に、この3つの段階と症状について説明します。それぞれの重度を認識しておきましょう。


・第一度
熱傷が皮膚の表面(表皮)のみのケースを指します。ひどい日焼けによる肌の赤みや炎症も、第一度に相当します。赤くなって痛みも生じますが、適切な応急処置をすれば痕も残らず、自然治癒が見込めます。

・第二度
熱傷が真皮におよんでいるケースを指します。患部が赤くなって水ぶくれができ、痛みもあります。皮下組織が残っているので皮膚は再生しますが、傷や皮膚の引き攣れ(ひきつれ)などが残る可能性があります。きれいに治すためにも、応急処置後はできるだけ早く外科外来を受診しましょう。

・第三度
熱傷が皮下組織におよんでいるケースを指します。患部は赤褐色~黒色、または白色になり、水ぶくれはできず痛みも感じません。自然治癒は難しく、入院や皮膚移植などの、外科的治療が必要になります。

なお、やけどの範囲が体の10%以上におよぶと、生命が危険にさらされている状態だと言えます。大至急、子供を医療機関へ搬送するように。


・一般的なやけどの応急処置法
手や足などにやけどをしたら、まずはできるだけ早く患部から熱を取り除きましょう。清潔な水道水を流し続けて、患部の周囲を15分以上冷やします。ここで大事なのは、患部に直接流水を当てないようにすることです。患部に水が直接当たると、水ぶくれが破けてしまうからです。水ぶくれが破けると、傷口から菌が入って症状が悪化する恐れもあります。

なお、冷やしすぎると凍傷(とうしょう)や凍瘡(とうそう)を起こすことがあるので、氷や氷水を使ってはいけません。


・おなかや背中など広範囲におよんでいる場合の応急処置法
広範囲にわたってやけどを負ったときは、大至急病院へ搬送します。衣類が患部にくっついている場合は、くっついた衣類の周囲をはさみで切り離し、タオルでくるんでから冷やします。


・顔にやけどを負った場合の応急処置法
顔にやけどを負った場合は、シャワーの水をかけるか、洗面器に水を張って顔をつけるか、水を浸したタオルで顔をくるむかして、患部を冷やしてください。

軽度でも、やけどでも傷あとが残る可能性はあります。冷やした後で病院へ連れて行き、適切な処置を受けましょう。鼻や口にやけどを負っている場合は気道熱傷を起こしている恐れもあるので、病院へ搬送してください。また、水を飲ませるのは控えてください。

 

9.おなかを強く打ったとき

ブランコやジャングルジムから落ちたり、鉄棒に失敗したりしておなかを強く打った場合は、皮膚表面の打撲だけでは済まないことがあります。子供が強くおなかを打ったときは、内臓破裂などの深刻な症状に陥っているケースがあるので次のポイントを確認してください。

 ● 意識障害はないか
 ● ぐったりしていないか
 ● 腹痛はないか
 ● 息苦しさはないか
 ● 吐いていないか

このような症状が見られたら、すぐに病院へ。また、内臓の破裂は時間が経ってから現れることもあります。ケガをしてから2~3日間は、子供の様子を細かく観察してください。

 

10.頭を強く打ったとき

転んだり高いところから落ちたりして頭を打ったときは、次のポイントを確認してください。

 ● 意識障害はないか
 ● 記憶障害はないか
 ● 頭痛はないか
 ● ぐったりしていないか
 ● めまいはないか
 ● 手足のしびれやまひはないか
 ● けいれんはないか
 ● 吐いていないか

こういった症状が見られたら、速やかに病院へ搬送しましょう。また、すぐに症状が見られなくても、24時間は慎重な経過観察が必要です。

 

まとめ

それぞれのケガの応急処置法を大人が理解しておけば、もしものときに焦らずに適切な対処ができるかもしれません。本記事を参考に、大切な子供の健康と命を守っていただければと思います。 また、繰り返しにはなりますが、ケガの程度は軽くても少しでも不安があれば、迷わず外科外来または小児外科外来のある病院にかかるようにしてください。

公益財団法人 田附興風会医学研究所 北野病院  佐藤正人

公益財団法人 田附興風会医学研究所 北野病院  URL: https://www.kitano-hp.or.jp/

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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