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大きくてしこりのあるニキビはどう治す?粉瘤との違いって?【皮膚科医監修】

赤くて大きい、しこりのある「しこりニキビ」ができたことはありませんか? 触ると痛かったり、ボコッと目立ってしまったりするこのニキビは、粉瘤というできものにもよく似ています。

そこで今回は、しこりニキビができる原因や治療法・粉瘤との違いについて、皮膚科医の中井大介先生に教えていただきました。

中井 大介

多根総合病院 皮膚科 副部長

京都府立医科大学を卒業し、同大学附属病院・京都第一赤十字病院・大阪厚生年金病院 (現Jcho大阪病院)・尼崎新都心病院の勤務を経て、多根総合病院に勤務する日本皮膚科学会専門医。

ニキビが“しこりニキビ”になるプロセス

ニキビとは、10~30歳代の青年期の男女にみられる、顔面・上背部・前胸部などの脂漏部位によく発症する毛穴に一致した炎症性の丘疹・膿疱を指します。増悪すると、嚢腫や結節を形成することもある慢性の炎症性疾患です。この小さなニキビが炎症を起こして悪化したものが、しこりニキビです。つまり、しこりのあるニキビ(嚢腫、硬結)は、ある日突然ポコッとできるわけではないのです。

そこでまずは、ニキビが悪化していくプロセスをご説明します。

●ニキビが悪化していくプロセス

▶第1段階:微小面皰(びしょうめんぽう)……ニキビができる1歩手前

毛包の開口部が狭くなり、過剰に分泌された皮脂が毛穴に詰まっている状態です。ニキビができやすくなっていますが、肉眼では確認できないレベルのものです。

▶第2段階:面皰(めんぽう)…… 白ニキビ、黒ニキビ

この段階にあたる初期のニキビは、「面皰」と呼ばれています。この段階で化のうや炎症は起きていませんが、毛穴の中では皮脂が更に貯留され、アクネ菌も増殖をしており、わずかに触れるようになってきます。

面皰には、毛穴が閉じている「閉鎖面皰(いわゆる白ニキビ)」と、毛穴が開いている「開放面皰(いわゆる黒ニキビ)」があります。

▶第3段階:丘疹(きゅうしん)膿疱(のうほう)…… 赤ニキビ、黃ニキビ

閉鎖面靤(白ニキビ)の毛穴の中でアクネ菌が増殖して炎症を起こし、赤く腫れた状態です。この状態を医学用語では「丘疹」と呼びます。いわゆる「赤ニキビ」と呼ばれるものは、この段階のニキビです。

さらに炎症が進むと、患部が化のうします。腫れが悪化すると、黄色い膿(うみ)が見える状態に。この状態を医学用語では「膿疱」、一般的には「黄ニキビ」と呼びます。

▶第4段階:嚢腫(のうしゅ)・硬結(こうけつ)…… いわゆる「しこりニキビ」

さらにひどくなると、毛穴の周りに炎症が広がります。皮膚の下には膿や血がたまり、ニキビは大きく腫れ上がった状態に。触れると痛みや硬いしこりを感じることも。このようなニキビを、専門用語では嚢腫・硬結ニキビ、一般的には「しこりニキビ」と呼びます。

ここまでひどくなってしまうと、炎症が治まって腫れが引いても、跡に残りやすくなりますさらに炎症が深部に及ぶと、皮膚のひきつれ・盛り上がったケロイド状の痕・くぼんだ跡が残る可能性もあります

それ、大きなニキビじゃなくて、粉瘤(ふんりゅう)かも!?

実は「大きなニキビだと思っていたら、粉瘤(ふんりゅう)という別のできものだった」というケースも。粉瘤と大きなニキビは見た目がとてもよく似ているため、見分けられないことがあります。しかし、両者はまったく別の症状で、治療法も異なるもの。粉瘤の特徴を把握して、ご自身の肌トラブルがニキビなのか粉瘤なのかを確認しましょう。

●粉瘤とは

粉瘤(アテローム・表皮のう腫)とは、皮膚の下に袋ができて、本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)と皮膚の脂(皮脂)が、剥げ落ちずに袋の中にたまってしまってできた腫瘍の総称です。

皮膚から半球状にポコッと盛り上がった形で発症します。老若男女問わず、誰でも・体のどこにでもできます。実は粉瘤の発生理由は、いまだに判明していません。

●ニキビと粉瘤の見分け方

・大きさ
ニキビの大きさは、どんなに炎症が悪化しても数ミリ程度です。一方、粉瘤はどんどん大きくなって数センチ・数十センチにおよぶこともあります。

・真ん中あたりに黒い点があるかどうか
粉瘤の表面をよく観察してみると、真ん中のあたりに「開口部」と呼ばれる小さな黒い点が見られます。ニキビには、このような黒い点はありません。開口部が見つけにくい場合もありますが、この有無が粉瘤とニキビを見分ける手掛かりのひとつになります。

ただし中心あたりに黒い点が見える黒ニキビとは、なかなか見分けがつかないこともあります。

・臭いにおいがするかどうか
粉瘤とニキビを見分けたいとき、「におい」を確認するのも良いでしょう。粉瘤は、袋の中にたまった老廃物が悪臭を放つことで知られています。ニキビは、基本的に悪臭はしません。

・年代や部位
ニキビは10代~30代の顔面・上背部・前胸部などの脂漏部位によく見られます。それ以外の年代で、または部位にできたものは、粉瘤の可能性が考えられるかもしれません。

 

●粉瘤になったらどうすればいい?

粉瘤はニキビと違って、セルフケアで完治させることができません。感染していれば切開などをして中の膿を取り出したり、腫瘍自体を袋ごと切除する手術が必要なので、病院での治療が必須となります。 あまりにも大きなニキビができてしまった場合は粉瘤の可能性も考慮して、皮膚科で診断をしてもらうと安心でしょう。

大きく腫れたニキビは早めの治療を!病院での治療法について

皮膚科のニキビ治療は、塗り薬の処方がメインになります。最近はニキビの外用薬にも様々なものがあるので、肌の状態を見ながら症状にあった外用剤を処方します。炎症症状が強い場合には抗生物質の内服薬を用いたり体質改善目的に漢方薬の内服薬を用いることもあります。また、日々のスキンケアや生活習慣・食習慣などに関するアドバイスをすることも。

ニキビの症状は悪化すればするほど、なめらかな肌状態に戻るのが難しくなります。また、炎症が長引くとニキビ跡や色素沈着を起こすこともだからこそ、ニキビはできるだけ早い段階で皮膚科を受診して治療を受けることをおすすめします。

ニキビを悪化させないために!今日からできるセルフケアのポイント

ニキビを悪化させないためには、皮膚科での治療と平行して、ご自身の生活の中にある“ニキビを悪化させる要因”を取り除いていくことが大切です。以下のポイントに気をつけてみてください。

●ニキビ治療に合わせたスキンケア・メイクをする

ニキビが気になるときに使う基礎化粧品は、ノンコメドジェニック、あるいはハイポコメドジェニックと明記されたものがいいでしょう。肌の乾燥が気になる方は、しっかりと保湿をしてください。

また、厚化粧や長時間の化粧もニキビにはよくありません。毛穴のつまりや汚れの付着が原因で、ニキビができやすい肌環境を作ってしまいます。

ニキビを気にしすぎて、1日に何回も洗顔をするのは控えましょう。洗顔料を使った洗顔は1日2回に抑えるように。

●食生活

ニキビ治療の補助的内服療法として、ビタミンA・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンEが用いられることがあります。

しかし、これらビタミンのニキビに対する有効性を確立するための臨床試験は行われていないため、ビタミン薬内服を推奨する十分な根拠はありません。

一番大切なのは、極端な偏食は避けてバランスの良い食事をすること。日頃の栄養不足や栄養の偏りをサポートする役割として、ビタミン剤を取り入れてみると良いでしょう。

●生活習慣を改める

ストレスはニキビの大敵です。ストレスの少ない規則正しい生活をおすすめします。

また、ニキビを潰したり触ったりしていると、炎症が悪化しやすくなります。つい気になってしまうかもしれませんが、ニキビには触れないようにしましょう。髪の毛がニキビにあたって刺激にならないような髪型にするのも大切です。

まとめ

なかなか治らない大きくて赤い“しこりニキビ”。

ニキビの最終段階ともいえる状態をセルフケアだけで完治させるのは難しいと予想されますので、ぜひ皮膚科に行って適切な治療を受けるようにしましょう。

またしこりニキビになる前の段階で、それ以上の悪化を食い止めることも大事です。「皮脂が多く、詰まりやすい」「ポツポツと小さなニキビが繰り返しできている」という方は、一度皮膚科で相談されてみてはいかがでしょうか。

多根総合病院 中井 大介

多根総合病院 URL:http://general.tane.or.jp/

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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