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大人の親知らずは抜くべき?抜歯後の痛み・腫れの予防・軽減方法などを解説【歯科医師監修】

「痛い!」というイメージのある親知らず。親知らずは虫歯や歯周病の原因になる可能性が高いため、早い段階での抜歯を推奨されることがあります。

そこで今回は歯科医師の粟谷英信先生に、大人の親知らずについてお話を聞きしました。親知らずを抜くべき年齢や、抜歯後の痛み・腫れを軽減する方法などをご紹介します。

粟谷 英信

姫路駅前グランツ歯科院長

姫路駅前グランツ歯科の歯科医師。口腔外科の出身で、親知らずの抜歯をはじめとした外科処置においての専門知識も保有。かみ合わせを考えた審美的治療や全顎的な機能性を考えたインプラント治療にも積極的に取り組み、世界水準の歯科治療提供をモットーにしている。

そもそも親知らずってどんな歯?どんな生え方をするの?

⚫親知らずとは

親知らずは前歯から数えて8番目の、最後に生えてくる永久歯です。上下左右に1本ずつあり、正式名称は第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)と呼ばれています。10代後半で生えてくることが多いのですが、まれに親知らずが無い人や、あっても骨の中で形成されて外からは全く見えない状態になっている人もいます。

⚫親知らずの生え方3タイプ

親知らずの生え方は、大きく3つのタイプに分けることができます。1つ目は「まっすぐ完全に生えているタイプ」、2つ目は「一部が露出していたり、斜めに生えているタイプ」、3つ目は「完全に埋まっているタイプ」です。

この親知らずの生え方次第で、口腔内トラブルのリスクが高くなるケースがあります。次項では、それぞれのタイプで起きやすいトラブルを解説します。

親知らずが原因で起こりうる口内トラブルは?

⚫親知らずの生え方別!起こりやすいトラブル

1.まっすぐ完全に生えているタイプ
まっすぐ生えて口腔内に完全露出し、他の歯と同じように機能している親知らずは、トラブルが起きにくいと言えます。ただし、このタイプの人はあまり多くはいません。

2.一部が露出していたり、斜めに生えているタイプ
親知らずが斜めや横向きに生えると、その一部分だけが口腔内に露出することがあります。一番トラブルが起きやすいのはこのタイプ。なぜなら、歯磨きがしにくいからです。隣の歯との隙間に歯垢や汚れが溜まり、虫歯や歯周病にかかるリスクが高くなります。

3.完全に埋まっているタイプ
親知らずが骨の中で横向きに形成され、完全に埋まっている人もいます。このタイプの親知らずは口腔内に露出していないため、虫歯や歯周病の原因となることはあまりありません。しかし、稀に骨の中に嚢胞(のうほう)という袋状の空洞を作り、それが骨を圧迫したり溶かしたりすることもあります。

 

⚫親知らずの痛み・腫れの原因は、虫歯や歯周病

親知らずの痛みの原因は、虫歯や歯周病などの歯の疾患にあります。前述したように、親知らずの一部が露出していると、隣の歯との間に歯垢が溜まりやすくなります。そしてそれが虫歯や歯周病に発展し、痛みを引き起こすのです。

誤解されている方もいるのですが、「親知らずが生えるとき、歯が歯茎を圧迫・刺激するから痛い」のではありません

⚫重篤な感染症に発展するケースも!?

親知らずがきっかけで起こりうるトラブルとして、感染症もあげられます。虫歯や歯周病が原因で生じた菌が骨に波及し、さらに血流に乗って全身に感染してしまうことがあるのです。

なかでも気をつけたいのが、蜂窩織炎(ほかしきえん)と呼ばれる病気です。親知らずが原因の蜂窩織炎は、親知らずのある部位のさらに深い組織(あごや首の周り)まで炎症が広がってしまっている病気で、発熱やけん怠感・顔の腫れなどを伴います。さらに炎症が広がると呼吸困難に陥ることも。このような場合、長期間の入院治療が必要になる場合もあります。

このように、親知らずを放置すると虫歯や歯周病を招きます。さらに、上記のような全身疾患に発展するケースもあるため、親知らずの適切なケアが大切だと言われているのです。

親知らずを抜いたほうがいいケース / 抜かなくてもいいケース

虫歯や歯周病が起こっている親知らずでも、軽度の場合は通常の虫歯治療や歯周治療で症状が和らぐこともあります。ただし、以下のようなケースは、抜歯が勧められます。

⚫抜歯が必要なケース

1.親知らずの生え方が悪く、虫歯や歯周病になっている
親知らずが中途半端に生えていたり、斜めになって生えていたりすることが原因で虫歯・歯周病の症状が見られる場合、応急処置をしても虫歯や歯周病を繰り返すことが多いので抜歯が推奨されます。

2.歯列矯正をする予定がある
歯列矯正をする予定がある場合・した場合も、親知らずは抜いたほうが良いと言えます。親知らずは、矯正戻りの原因となりやすいからです。

 

⚫抜かなくてもいいケース

親知らずがまっすぐ生えて正常に機能している場合、虫歯や歯周病にならなさそうな場合、完全に歯肉の中に埋まっている場合などは、あえて抜く必要はありません。必ずしも抜歯が推奨される訳ではないのです。

また、最近は虫歯や歯周病などで失くした歯の代わりに親知らずを移植するという治療法もあるため、「親知らずをあえて保存しておく」という選択肢もあります。

何歳で抜くべきなの?

親知らずの抜歯は、20代~30代のうちにするのが良いでしょう。若ければ若いほど骨がやわらかいので抜きやすいことが多いです。反対に高齢になればなるほど骨は硬くなり、歯は抜けにくくなります。さらに高齢になると糖尿病などの全身疾患を患っている方も多くなるため、外科処置自体にリスクを伴い、一般的な歯科医院では抜歯が難しくなる可能性も。

抜歯後の腫れや痛みを予防・軽減する方法

⚫親知らずの抜歯は痛い!?痛みはどのくらい続く?

親知らずの抜歯そのものは、麻酔がきちんと効いていれば痛くはありません。しかし、抜歯後は腫れたり痛みを感じたりする人が多くいます。特に親知らずが斜めや横向きに生えている方は、歯茎を切ったり骨を削ったりして抜歯処置がされるため、炎症が強くなる可能性があります。痛みの程度・期間は人によって異なりますが一般的な痛みのピークは抜歯の翌日または翌々日で、1週間ほどで治まります

⚫痛みを抑えるにはどうしたらいい?

抜歯処置後、ほとんどの歯科医院は鎮痛剤や抗炎症剤を患者に処方します。「痛み止めを飲んでも痛い」という場合は、歯科医院に相談を。薬を変えてもらったり、効果的な薬の飲み方を教えてもらったりすると良いでしょう。

また、痛みが強いときは冷やすのも効果的です。このほか、寝るときは枕を高くするのもおすすめです。顔に血流が集まると痛みが強くなるため、枕で顔を高くしてできるだけ血の流れをできるだけ下に向かわせるようにしてください。

⚫痛みを強めてしまう行動がある?

血流が良くなると、痛みが強くなります。抜歯後は、長風呂や激しい運動は控えましょうまた、飲酒も避けるように。

まとめ

親知らずは、必ずしも抜かなければならないものではありません。しかし親知らずが原因で、重度の虫歯や歯周病を引き起こす可能性があると考えておいたほうが良いでしょう。

また、こういった口腔内トラブルを防ぐためには、日頃からのケアが大切です。ヘッドの小さな歯ブラシを使って親知らずをしっかり歯磨きすることを心がけてください。自分でとりきれない歯垢は、定期的に歯科医院でクリーニングしてもらうのも良いでしょう。

姫路駅前グランツ歯科院長 粟谷 英信

姫路駅前グランツ歯科:https://glanz-dental.com/

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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