胸焼け・胃もたれは逆流性食道炎かも? 症状と原因・治療法

2019年9月5日掲載

「胸焼け・胃もたれがひどい」「酸っぱい胃酸が上がってくる」

こういった症状がある方は、逆流性食道炎の可能性があります。逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することによって上記のような症状や食道の炎症が起きる病気です。食生活の欧米化などの影響で、近年若い人にも増加していると言われています。

今回は、逆流性食道炎の症状や原因・治療法・予防対策などについて消化器内科医の赤松晴樹先生に教えてもらいました。

市立東大阪医療センター 消化器内科 副部長 赤松 晴樹

福岡大学医学部卒業後、大阪大学医学部附属病院の医局に所属。市立貝塚病院を経て、現在市立東大阪医療センターで消化器内科の副部長をつとめる。専門分野は内視鏡検査・治療をはじめ、消化器疾患全般。

逆流性食道炎は「胃食道逆流症」のひとつ

●逆流性食道炎の定義

逆流性食道炎は胃の中の酸が食道に逆流することによって、慢性的な胸焼けや胃もたれ・食道の粘膜にただれなどの炎症が起きる病気です。「胃食道逆流症」の症状のひとつで、正式には「びらん性胃食道逆流症」と言います。


【逆流性食道炎の症状】

逆流性食道炎では、以下のような症状が現れます。

・自覚症状

胸焼け・胃もたれ・胸のつかえ・酸っぱい胃液が上がってくる感じ・喉の違和感・慢性的な咳

・食道の炎症

粘膜のただれ


●炎症がなければ「非びらん性胃食道逆流症」

胃食道逆流症は食道の炎症の有無で、以下の2つに分けられます。

  1. 逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症):食道の炎症を伴う
  2. 非びらん性胃食道逆流症:食道の炎症を伴わない

非びらん性胃食道逆流症は、食道と胃の接合部が知覚過敏になっている状態です。そのため、わずかな胃酸の逆流でも自覚症状が出ます。精神的要因が関与していることも少なくなく、若い女性や痩せ型の方・神経質な方がなりやすい傾向にあります。

逆流性食道炎が起きるしくみ

胃と食道の境目には下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)という筋肉があり、それがギュッと締まることで胃酸の逆流を防いでいます。また、食道に胃酸が逆流しても、食道のぜん動運動によってすぐに胃に戻されます。しかし、何らかの原因で下部食道括約筋が弱まったりぜん動運動が低下したりすると、胃酸が食道に逆流し長時間とどまってしまいます。その結果、胸焼けや胃もたれを感じたり、食道にただれなどの炎症が起きたりするのです。

また食道と胃の接合部を締める役割をしている食道裂孔(しょくどうれっこう)がゆるむと胃の一部が食道側にはみだし、胃酸の逆流が起きやすくなります。このような状態を食道裂孔ヘルニアと言います。

このほか、胃酸過多や腹圧(胃をはじめとする内蔵にかかる負荷)の上昇も逆流性食道炎の原因になると考えられています。


●食道で炎症が起きる理由

 胃酸は、胃の中で食物の消化を助ける働きをしています。強い酸性の液体ですが、胃の壁は粘液で守られているため胃自体が胃液で傷つけられることは通常ありません(※1)。一方、食道は胃酸に対する防御機能を備えていません。そのため、胃から逆流した胃酸に長時間さらされると、ただれてしまうのです。


※1 何らかの理由で胃液が過剰分泌すると胃の壁も傷つき、胃潰瘍などの原因となることがあります。

逆流性食道炎の原因となりやすい人の特徴

●逆流性食道炎を招く4つの原因


1. 加齢

年齢を重ねると胃と食道の接合部の筋肉・下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)の働きが低下したり、食道裂孔が緩みやすくなったりします。すると、胃酸の逆流を抑える働きが弱まります。このほか、高齢になって腰が曲がると物理的に胃酸が逆流しやすくなります。


2. 食生活の欧米化

食生活の欧米化による高脂質・高タンパクの食事も、逆流性食道炎の原因です。こういった食事は消化しにくいため、胃の中に食べものが長時間残留します。すると、常に圧力が胃にかかっている状態になり、胃酸が上がりやすくなるのです。また、脂肪やタンパク質の摂りすぎによって胃酸の分泌量が過剰になるのも、逆流の原因だと考えられています。


3. お酒やタバコ・香辛料など刺激物の摂取

お酒やタバコ・香辛料など胃に刺激が強いものを摂取すると、胃酸の分泌量が増えます。また、下部食道括約筋の働きも低下させると言われています。


4. 胃に生息する細菌・ピロリ菌の不在

ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌で、胃酸を抑える働きを持っています。しかし、ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんなどの原因にもなりうることから現在では除菌治療が普及しており、それが逆流性食道炎の原因のひとつと考えられています。


●逆流性食道炎はこんな人がなりやすい!

上記の原因を踏まえると、以下の項目に当てはまる方は逆流性食道炎になりやすいと言えます。

  • 高齢
  • 食道裂孔ヘルニア
  • 暴飲暴食
  • お肉や脂物をよく食べる
  • タバコを吸う
  • お酒をたくさん飲む
  • ピロリ菌除去治療を受けた

食道がんを招くことも?逆流性食道炎の合併症のリスク

逆流性食道炎を放置していると、「バレット食道」や「食道がん」といった合併症をもたらす恐れがあります。

通常、食道の粘膜は扁平上皮(へんぺいじょうひ)という組織に覆われています。しかし、胃酸の逆流が繰り返されると、扁平上皮が円柱上皮(えんちゅうじょうひ)という組織に変質することがあります。この状態が「バレット食道」です。バレット食道そのものは、すぐさま命にかかわる状態ではありません。しかし、バレット食道は食道がんに発展するリスクをはらんでいるため、慎重な経過観察と対処が必要です。

薬で治る?逆流性食道炎の検査方法・治療方法

●まずは内視鏡検査で炎症有無の確認を

胃もたれや胸焼けなど逆流性食道炎が疑われる自覚症状があれば、まず内視鏡検査で食道の炎症の有無や程度を調べます。

内視鏡検査は「痛い」「苦しい」というイメージがつきまといがちですが、近年の内視鏡検査の技術は発展しています。内視鏡の入り口(口や鼻)には部分麻酔をするので、大きな痛みはありません。希望する方には、うっすら眠る程度の軽い鎮静剤の使用も可能です。内視鏡で炎症の有無を確認することが治療の第一歩とも言えるので、気になる症状がある方は怖がらずに内視鏡検査を受けましょう。


●逆流性食道炎の治療の基本は、薬と食事改善

逆流性食道炎の治療は炎症が軽度であれば、薬と食事・生活習慣の改善で治癒が見込めます。

ただし、薬や生活改善で効果がない・再発を繰り返している・食道裂孔ヘルニアをともなう難治性の食道炎などのケースでは、手術などの外科的アプローチが必要になることもあります。


●非びらん性胃食道逆流症の治療は、精神面からのアプローチも

検査で炎症が発見されなかったケースでも、基本的に胃酸の分泌を抑える薬の処方と食生活の改善指導を行います。症状しだいでは、消化管の働きをよくする漢方薬を処方することも。しかし、非びらん性胃食道逆流症は精神的な要因も大きく、それだけでは治らない方もいます。そういったケースでは、抗うつ薬などの向精神薬を処方することもあります。

逆流性食道炎の予防改善は、食事の見直しが大事

逆流性食道炎の予防改善では、食事の見直しが肝となります。逆流性食道炎と診断された方はもちろん、胸焼けや胃もたれが気になっている方は以下のポイントを心がけましょう。

  1. 暴飲暴食をしない
  2. 脂っこい食事を控える
  3. タバコ・お酒・香辛料など、刺激物を控える
  4. 早食いをしない
  5. どか食いをせず、小分けに食べる
  6. 食べてすぐ横にならない
  7. 就寝直前の食事は避ける

まとめ

胃もたれや胸焼けに悩んでいても、「いずれよくなるだろう」と放っておいてしまう方は多いかもしれません。しかし、こういった症状が出やすい方は往々にして食生活が乱れているため、そのままの状態では症状がおさまらないどころか余計に悪化する恐れがあります。

逆流性食道炎はすぐに命に関わる病気ではありませんが、食事をおいしく食べられなくなったり慢性的な不快症状が出たりと生活の質に影響を及ぼします。気になる症状がある方は、ぜひ一度お近くの消化器内科に相談してみてください。

市立東大阪医療センター 消化器内科 副部長 赤松 晴樹