家庭でも職場でもイライラする…。怒りとうまく付き合うアンガーマネジメントを学ぼう

2020年8月13日掲載

昨今の社会情勢により、多くの人が通常よりもストレスや怒りに敏感になっているのではないでしょうか。

「家で過ごす時間が増え、家族の些細な行動や言動に怒ってしまう」

「リモートワークで部下・上司・同僚にイライラしてしまう」

など、普段よりも怒りっぽくなっているという方もいるかもしれません。そこで取り入れたいのが、怒りをコントロールするための心理トレーニング『アンガーマネジメント』。

今回は、アンガーマネジメントの効果や具体的な方法を、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の松﨑晃一先生に教えていただきました。

松﨑 晃一 一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会

https://www.angermanagement.co.jp/

大学卒業後、大手販社に入社2年目で全国セールスコンテスト1位を獲得。その後、企業後継者として経営に携わるも、退職者が続出。経営に悩む中で様々な心理学を学び、アンガーマネジメントと出会う。現在は、創業五十年の企業を経営しながら、アンガーマネジメントの講師としても活躍。企業研修、セミナー等を行い、年間受講者数は1400名を超える。2019年にはLLCアロー・パートナーシップラボを起業し、共同代表に就任。「受講者に寄り添う研修」をモットーに、受講者からの紹介・リピート率は80%を越える。

【協会役職】
・参事 / 関東支部 支部長

アンガーマネジメントとは?

●アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手に付き合うためのトレーニング

アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手に付き合うための心理教育・心理トレーニングです。アンガーマネジメントを「怒らないようにするための訓練」と誤解している方もいるかもしれませんが、そうではありません。

「怒らない」を目的とするのではなく、怒る必要のあることには上手に怒り、怒る必要のないことには怒らなくて済むようになるのがアンガーマネジメントの目標です。

怒りを上手に扱うのは、実はとても難しいこと。感情に任せて怒った後に反省したり、反対に怒れなくて後悔したり、怒りを我慢してストレスが溜まったり…といった経験がある方は多いでしょう。そんな、扱いが難しい怒りをコントロールし、「怒り」に関して後悔しないようにするのがアンガーマネジメントの目指すところなのです。


●アンガーマネジメントはなぜ必要?

怒りは、人間に備わっている感情のひとつ。危険から身を守るための防衛感情でもあります。そのため、怒りの感情それ自体が悪いわけではありません。しかし、怒りを怒りとして表現するかどうかは別問題です。感情のまま怒りを表現すれば、伝えたいことも伝わらず人間関係にトラブルをきたしかねません。怒りを感じたときにその怒りを適切に処理するために、アンガーマネジメントが必要なのです。

怒りをコントロールするために。まずは怒りの「正体」を理解しよう

自分の怒りをコントロールするために、まずは「怒り」を分析し、その正体を理解しましょう。


●怒りは、自分の信じている「べき」が裏切られたときに生じる

誰の中にも、自分が正しいと思っている「べき」という価値観があります。「夫婦はこうあるべき」「子どもはこうあるべき」「マナーはこうあるべき」など。そして、この信じている「べき」が目の前で裏切られると、人は怒りを感じます


●怒りのメカニズムはライターの仕組みと似ている

この怒りのメカニズムは、ライターに例えると理解しやすくなります。ライターには燃料が入っていて、着火スイッチをカチッとすると炎がつきます。以下のように考えてみてください。

  • 燃料=マイナスな感情や状態
    不安・寂しさ・後悔・罪悪感・体調不良・寝不足・空腹など
  • 着火スイッチ=怒りを感じるきっかけ
    自分の信じる「べき」が裏切られたとき
  • 炎=怒り

燃料となりうるマイナスな感情や状態にあるときに、自分が正しいと思う「べき」が裏切られると、それが着火スイッチとなって怒りの炎が燃え上がってしまうのです。


●「べき」の価値観のすれ違いがトラブルを生むことも

「べき」の感覚は、人との触れ合いや教育・体験・時代背景などによって形成されるものです。「べき」はあくまで自分の価値観だと気づくこと、そして10人いれば10通りの「べき」があると知ることが大切です。この感覚を持っていないと、必要以上に怒りを感じてしまいます。また、感覚のすれ違いによってコミュニケーションがうまくいかなくなる恐れもあります。


【「べき」の感覚の違いによりトラブルが起きる事例】

会社の会議で、年配の上司が新人社員にプレゼンテーションのメモを取るように指示しました。すると、新人社員はスマホを取り出してホワイトボードの写真を撮影。それに対して、上司は「メモを取れと言っただろ」と怒ります。しかし、新人社員は「写真に撮ったほうが確実だし効率的なのにどうしてだめなのだろう」と釈然とせず、イライラします。このすれ違いの原因は、まさに「この場合はこうする」というそれぞれの「べき」の違いにあると言えます。

ダメなのは「怒りを感じること」ではなく「怒り」

前述した通り、怒りの感情を感じること自体は必ずしも悪いことではありません。しかし、問題となり易い「怒り」もあります。以下の4タイプの怒り方をしていないか、ご自身の言動を振り返ってみてください。


【問題のある怒り方4つ】
  1. 強度が高い
    どなる・キレる・感情に任せて怒り散らす
  2. 持続性がある
    思い出し怒りをする・ずっと根に持っている
  3. 頻度が高い
    しょっちゅうイライラしている・常に不機嫌である・怒りの沸点が低い
  4. 攻撃性がある
    他人に当たったり責めたりする・自分を責めて怒りを溜め込む・怒っていることを伝えたくてドアをバタンと閉めるなど態度で怒りを表明する

こういった怒り方では伝えたいことも伝わらず、トラブルが起こりやすくなります。またこれらは、後々自分が後悔するような怒り方だとも言えます。そこで重要なのが、怒りの感情とその表現方法をコントロールするためのアンガーマネジメントなのです。

アンガーマネジメントの具体的なやり方

それでは、アンガーマネジメントの具体的な方法をご紹介します。アンガーマネジメントでは、3つのコントロールを用います。

【1】怒りを感じたら6秒待つ

怒りを感じたら即座に怒りを表明するのではなく、心の中で6秒ほど数えましょう。怒りは反射的に湧き上がってくる感情ですが、6秒ほど経つと理性が介入しやすくなります。その結果、「これは怒っていいことなのか、それとも我慢した方がいいことなのか」を考えられ、理性的な言葉や態度を取り戻しやすくなります。


【2】思考コントロールのトレーニングをする

自分の中で、「許せること」「まあ許せること」「許せないこと」の基準を持つようにしましょう。具体的なテクニックとしては、頭の中に三重丸を思い浮かべます。

・「許せる」「許せない」だけでなく、「“まあ許せる”もある」という感覚を持つ

怒りやすい人は、何かが起きたとき「許せるか・許せないか」の二極で判断しがちです。(自分の価値観とは違うが、まあ許せること)がとても少ないのです。許せるか許せないかだけで判断するのではなく、「自分の価値観とは少し違うが、まあ許せる」という感覚を持つように意識しましょう。

・境界線が相手や機嫌によってブレないようにする

「普段は許容範囲のことでも、相手によって・自分の機嫌によって許せなくなってしまう」というのは良くあることでしょう。しかし、これでは相手はあなたにどう接したらいいのか分からなくなってしまいます。いつでも誰が相手でも“境界線のブレ”を起こさないようになるのが理想です。

・境界線を相手に伝える

自分の境界線の基準に基づいて、やってほしいこと・やらないでほしいことを人に伝えるのも大事です。これは、「べき」の価値観をすり合わせる作業とも言えます。価値観は人によって異なるので、あなたにとっての“当たり前”が相手にとっての“当たり前”とは限りません。伝えないと分からないこと・言わないからトラブルになることもたくさんあります。特に身近な人にはあらかじめ境界線の基準を伝えておくと、価値観のすれ違いによる軋轢が生じにくくなり、良好な人間関係を築けるようになるはずです。


【3】“行動を選択するトレーニング”をする

何か怒りを感じることが起きたとき、その出来事を「自分がコントロール可能な事柄なのか・コントロールできない事柄なのか」、さらにそれが「自分にとって重要な事柄なのか・重要ではない事柄なのか」を考えてみましょう。

具体的な方法としては、頭の中に“4つの箱”を思い浮かべて、怒りを感じた事柄を当てはめます。

そして、この振り分けにしたがって自分がどうすべきなのかを考えて行動を選択します


【例1】芸能人が不倫をしたニュースを見て怒りを感じた
  • コントロール可能か? → 不可能である
  • 自分にとって重要なことか? → 重要ではない

▶︎▶︎「気にしない・放っておく」という行動を選択する


【例2】部下からのメールの返信が遅くてイライラする
  • コントロール可能か? → 可能である
  • 自分にとって重要なことか? → 重要である

▶︎▶︎「メールには半日以内に返信してほしいと具体的な指摘をする」という行動を選択する

このように「コントロール可能かどうか」「重要かどうか」の2つの軸をもとに考えることで、例1のように不必要にイライラしたり怒ったりするのを防げます。また、例2のように怒りを“今後のための建設的なリクエスト”に替えることも可能です


●アンガーマネジメントはトレーニングによって身についていくもの

これらのテクニックは、知ったからすぐに実践できるようになるものではありません。アンガーマネジメントは言ってみれば自転車と同じ。自転車は、最初は一挙一動に意識を持たないと上手に乗れませんが、トレーニングを積めば意識せずとも乗れるようになるものです。アンガーマネジメントも、知識を得た上でトレーニングを続けることで自然とできるようになります。

また、アンガーマネジメントはひとりでトレーニングするよりも周りの人と一緒にやったほうが効果的です。例えば会社のチーム内や家族間で一緒に取り組むと良いでしょう。

まとめ

コロナの影響で、生活や社会が大きく変化している今。アンガーマネジメントは、これからの時代の“幸せに生きるための近道”だと言えるでしょう。旅行や外出などのアクティビティ機会が減って、生活の中でポジティブな要素を増やすのが難しい時だからこそ、ネガティブ要素を減らす努力はとても重要です。怒りの感情と上手に付き合えば、人間関係の軋轢を減らすことができ、自分自身も生きやすくなるのではないでしょうか。

なお、今回はアンガーマネジメントの基礎や知識をご紹介しましたが、もっと本格的に学びたい方は日本アンガーマネジメント協会の主催する講座を受けてみるのもおすすめです。オンライン講座も開催されていますので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。

【監修】一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会 松﨑 晃一