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関西の専門医が語るドクター's コラム

うつ病の治療法

軽いうつ状態なら大半の場合、十分な休息を取ることで自然と改善します。症状が重くなった場合には、いくら休息を取ってもよくなりません。周囲から「元気を出して」などと励まされると、余計に気分が落ち込んでしまいます。そうなると薬物療法や心理療法が必要です。また、治療と同時にストレスや負担を軽減しなければ、状態が好転せずに長引くこともあります。治療を開始する際には、以下の3点が重要です。

  • 「病気」であることを本人や家族が理解する
  • 本人が十分な休息を取れるよう、周囲が協力する
  • 病気がよくなるまで重大な決断はしないようにする

最初は少量の薬から使い始め、次第に各自に適正な量が処方されます。治療初期の段階では何もせず、十分に休むことから始めましょう。2週間ほどで薬の効果が表れ始めますので、そこから生活リズムを整えていきます。その後、良くなったり、戻ったりの波を繰り返しながら徐々に回復に向かいます。

薬物療法

薬を使ったうつ病の治療で、もっともよく使われるのは抗うつ薬です。うつ病は脳内の感情に関与する神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の不足が原因と考えられており、脳神経の一部の機能が正常に働かなくなる「機能性疾患」です。抗うつ薬は不足している神経伝達物質を正常な量(状態)へと調整する役割を果たします。
抗うつ薬を服用することになった場合、自分の判断で服用を中断してはいけません。崩れてしまった体の機能を補強・調整し、バランスを維持するために薬は欠かせませんので、神経の機能が正常に回復するまではきちんと服用を続けてください。
抗うつ薬は安全性に問題がなく、長期服用しても依存性や習慣性が少ない、安全な薬です。しかし、他の薬と同様に副作用を引き起こす場合もあります。発症例の多いものは、口の渇き、便秘、かすみ目、眠気、めまい、立ちくらみ、頻脈、発汗といった症状です。ときには排尿困難、吐き気、食欲低下、体重増加、手指のふるえなどが起こることもあります。発疹、けいれんの発作、不整脈、パーキンソン症状などの症例もありますが、ごく稀です。副作用の症状が現れた場合には、薬の減量や副作用止めの服薬などの対処を行います。


心理療法

うつ病の心理療法とは医師や臨床心理士との対話を通じて、気分の落ち込みの原因となった思考・行動・人間関係のパターンを探りながら修正し、平穏な状態に回復させるものです。さまざまな心理療法の中でも、とくに有効とされているのが「認知行動療法」です。
さまざまな状況や出来事に対する見方やとらえ方のことを「認知」と呼びますが、認知には肯定的なものから否定的なものまで幅広いものがあります。うつ病になった場合、認知は以下のような否定的なものに偏りやすくなります。

  • レッテル貼り:小さな失敗で「自分はダメだ」とレッテルを貼る
  • マイナス思考:些細なこと、良いこともすべて悪いように考える
  • すべき/せねばならない思考:何事についても「こうすべき」と考える

認知行動療法では、否定的な認知が起こる状況や原因、そのときの感情、否定的な認知以外に肯定的な認知はないか、などを医師や臨床心理士と一緒に検証します。そして、元通りの幅広い認知を見出すようにし、うつ病の症状を軽くしていきます。それと同時に、日常的な行動を検証したり、目標を設定するなどして自信や活動性を取り戻していきます。


入院療法

うつ病には休息が必要ですが、自分でうつ病だとは気付かず無理をする場合もあります。気が付けば「今日より明日はもっと苦しいはずだ」「生きている価値がない」など自分を追い込むような状態になっていれば、命を守るためにも入院を検討すべきです。
病院に入院することで、何よりも大切な休息の場を得ることができます。そして、自分自身の命を守ることもできます。さらに、家族や周りの人たちに「大変な状態に陥っている」ことに気付いてもらうことができるのです。

上記以外にも、入院には数多くのメリットがあります。食事までも含めた生活リズムの改善、症状の綿密な観察と対応、薬の使用に関する安全性と効果のアップ、自分自身の症状の把握など、数え上げればキリがありません。何よりも、医師や看護師などのスタッフが24時間体制で見守ってくれるので安心感は大きなものになります。
元気な心や体の状態に戻していくためにも、十分な休養、服薬と規則正しい生活、対処能力の向上という3点を実行しながら、ゆっくりと治療を続けていきましょう。

ドクター's コラム「うつ病」

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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