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関西の専門医が語るドクター's コラム

クローン病の治療法

クローン病の診断

患者さんの症状からクローン病を疑い、一般的な血液検査、糞便検査などを行い、さらにX線検査、内視鏡検査を行います。

1. 血液検査

クローン病の診断、症状の推移の把握に必要です。炎症の程度を診る指標としてCRP※、赤血球沈降反応などがあります。また、全身の栄養状態の指標として総タンパク質、アルブミン、総コレステロールなどがあります。血液検査では貧血の程度もわかります。
※CRP:炎症や組織細胞の破壊に伴って血清中に増加するタンパク質のこと


2. 糞便検査

潰瘍などからの目に見えない程度の出血を調べます。また、細菌培養を行って細菌性腸炎かどうかを見分けます。


3. 注腸X線検査

肛門からバリウムと空気を大腸に入れて、大腸にクローン病が発症していないかどうかを調べます。


4. 小腸X線検査

バリウムを口から飲むか、十二指腸まで入れたチューブからバリウムを小腸に入れ、小腸にクローン病を発症していないかどうかを調べます。


5. 大腸内視鏡検査

肛門から小型カメラを挿入し、大腸でクローン病が発生することの多い回盲部を調べます。病変を観察するとともに粘膜を少し採取して、顕微鏡で観察することでクローン病に特徴的な所見を見つけ出すことができます。


6. ダブルバルーン内視鏡検査

口、または肛門から小型カメラを入れて到達部に印を付け、後日反対側から小型カメラを挿入し、前回付けた印まで到達すれば、すべての消化管を調べたことになります。大腸内視鏡検査と同様に組織学的検査が行えます。なおこの検査には数日から1週間の入院が必要となります。

クローン病の治療

クローン病はそもそも原因が不明であるため、現在のところ根本的な治療法はありません。治療の基本となるのは「腸管の炎症を抑えること」、「症状の軽減を図ること」、「栄養状態を改善すること」です。薬物療法と栄養療法を組み合わせたコンビネーション療法が中心となります。手術療法もありますが、潰瘍性大腸炎の場合のように完全に治すことを目的とした手術ではなく、一時的に症状を軽減するためのものになります。

1. 栄養療法

クローン病では腸管の安静に加えて、腸管内からの免疫反応を引き起こさせる物質を取り除くことが重要であり、これを目的とした栄養療法には「完全中心静脈栄養法」と「経腸栄養法」に分かれます。「完全中心静脈栄養法」は、胸などの静脈に挿入したカテーテルから栄養を注入する方法です。腸管が著しく狭まっている場合や、高範囲にわたって発症が見られる場合など、経腸栄養法が不可能な場合に行います。一方の経腸栄養法は、鼻腔から十二指腸まで通したチューブから栄養を注入する方法です。経腸栄養法では、脂肪をほとんど含まない成分栄養剤、少量のタンパク質と脂肪含量がやや多い消化態栄養剤、カゼインや大豆タンパクを含む半消化態栄養剤が使われます。


2. 薬物療法

クローン病の薬物療法は、症状によって使い分けられます。

(1)サラゾスルファピリジン(サラゾピリン)
大腸にのみクローン病が発生する場合に用います。

(2)メサラジン(ペンタサ)
メザラジンは小腸大腸の炎症を抑える薬でクローン病の基準薬と考えられます。

(3)副腎皮質ステロイド
強力な抗炎症作用を持っており、急性期の治療に用いられます。

(4)免疫調整剤(アザチオプリン、6-メルカプトプリン)
この薬は副腎皮質ステロイドによる副作用がみられたときや、副腎皮質ステロイドの減量や離脱を必要とする場合、その他の薬が無効な場合、ろう孔を形成した患者さんなどに使用します。

(5)メトロニダゾール(フラジール)
肛門部にクローン病が発生している患者さんに有用です。


3. 手術療法

大量出血がある場合や、中毒性巨大結腸症、穿孔(せんこう)※、腸閉塞、癌の合併が起こっているときは緊急な手術が必要になります。また、内科的治療で好転しない場合や、膿瘍、内ろう、外ろう、難治性狭窄、肛門部周辺病変が起こっている場合で、患者さんの日常生活に支障がある場合は手術することがあります。

※穿孔(せんこう):穴があくこと。


4. 抗TNF-α抗体療法(レミケード)

クローン病では症状が悪化している時に腫瘍壊死因子「TNF-α」が増加しています。このTNF-αの作用を抑える薬として、抗TNF-α抗体が開発されました。この薬を投与すると、大半の人の症状が速やかに改善します。ただし効果は約8週間しか持続しない為、8週間毎の投与が必要となります。

食事の注意

クローン病の方の食事は、低脂肪、充分なカロリー、消化管に負担をかける繊維成分を控えた低残渣食が原則です。

・脂肪の多い食べ物は避ける
肉類、バター、卵黄、マーガリン、ごま油はなるべく避ける。
魚介類、しそ油、えごま油、なたね油は問題ありません。

タンパク質は植物性の食品や魚介類から摂る
魚介類では青魚(サバ、イワシ、サンマ)などが良いとされています。

・刺激物は避ける

・甘いもの、冷たいものには気を付ける

・外食はできるだけ避ける

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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