
命を脅かす病気のリスクを高める高血圧。「年に1度の健康診断では、血圧の異常がないから大丈夫」と安心している人も多いでしょう。しかし、病院で測った血圧は正常値なのに、家庭などで測ると高い数値になる「仮面高血圧」というタイプの人もいます。自分が高血圧であるという自覚がないために、見逃されてしまう怖いタイプの高血圧といえます。
人間の体では心臓から血液が送り出され、全身にめぐり、腕などの末梢にも届いていますが、その末梢の血管の圧力のことを「血圧」といいます。血圧が高くなると、血管に負担がかかっていき、血管はつまったり破裂を起こしたりします。そうなると「心筋梗塞・狭心症・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血」という突然死する可能性のある病気を引き起こしてしまうのです。実際、日本人の死因の約半数は血管の病気が原因になっています。
さらに、たとえ死を避けられたとしても、これらの病気は心臓や脳の病気ですから、麻痺が残ったり、寝たきりになったり、ということも少なくありません。
日本人の高血圧の患者は1000万人、予備軍も入れれば4000万人はいるといわれており、高血圧は多くの日本人が注意しなければならない病気といえます。

人間の血圧は常に変動しており、1日中、常に一定というわけではありません。一般的には寝ている間は低く、昼は高くなり、夜、家でリラックスすると下がるなど、そのときの状況や緊張状態によって変動します。たとえば、病院で血圧を測ると緊張して血圧が上がってしまう場合がありますが、これは「白衣高血圧」とよばれ、ほとんどの場合は治療の必要はありません。
逆に、病院で測定すると正常値なのに、家など病院以外で測ると高い状態が続くことを「仮面高血圧」とよびます。仮面高血圧の場合、病院での値は正常値ですから、本人にも自覚がなく、適切な治療を受ける機会もありません。しかし診察時以外の多くの時間で血管に負担がかかり続けますから、命を脅かす病気を発症するリスクが高くなってしまうのです。ちなみに、病院で測った血圧が正常の人のうち、10〜15%は仮面高血圧だといわれています。
「高血圧治療ガイドライン」(日本高血圧学会発行)によれば、仮面高血圧には以下のタイプがあるとされています。
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朝の血圧上昇が急激で、夜間も血圧が下がらず高いままの状態のこと。早朝5時頃は統計的にも脳梗塞を起こしやすい時間帯であることがわかっており、危険な病気のリスクが高いタイプです。
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一般的には夜には血圧が下がりますが、夜になっても血圧が高いままの状態のこと。睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害、糖尿病などの持病がある人に多くみられます。
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病院でも家でも血圧は正常値なのに、職場や家庭でなどストレスにさらされている昼間に血圧が高い状態のこと。精神的なストレスが原因で、肥満症や家族に高血圧患者がいる人に多くみられます。
以下のようなことがあれば、あなたも仮面高血圧の可能性があります。病院での血圧測定で正常だといわれている人は、チェックしてみましょう。

- 監修:上本町わたなべクリニック院長 渡邊章範先生
- 平成10年3月大阪市立大学医学部卒業。平成15年3月大阪大学大学院卒業(医学博士)。平成18年5月17日上本町わたなべクリニック開業。総合診療医として、テレビ・新聞出演も豊富。著書に「病気の9割はこれで治る!血管と自律神経」(主婦と生活社)、「その痛みやモヤモヤは 「気象病」が原因だった 気象の変化が、自律神経を狂わせる!」(青春出版社)がある。
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