Vol.04:アメリカで一番有名なJapanese!?

最高の指導とは相手の世界で、相手の言葉で

  • さて、実は中邑選手とはゴルフ雑誌の中でも対談したことがあるのです。(僕が一方的にお願いしただけなのですが)
    その対談の中で、スポーツの世界で才能が開花する最大のポイントは? との問いに、迷うことなく“100%イメージです”と中邑選手は断言しました。
    “多少の技術論、体力論もないの?”との問いには“それも含めてイメージできるかです”と答えました。 この言葉の意味、分かりますか? 本当に重い言葉ですよね。

    ここでゴルフの話になりますが、ゴルフにおいても同じことが言えると思います。
    数多あるゴルフ理論よりも、自分の頭の中でスイングがイメージできるか? あるいは指導する側の立場であれば、相手にイメージをさせられるか? がゴルフで言えば、最大のポイントになるわけです。
    つまり、練習や努力とは「良いイメージを作る」ことの一環の作業になるわけです。

    “一流の選手は一流のコーチになれない”という言葉を耳にすることがありますが、これは自分ができても、“相手にイメージさせることはできなかった”ということです。
    優れた指導者になるためには(これはゴルフであっても仕事であっても)、教えられる側の世界に入り込んで、その相手に届く言葉でコミュニケーションをとれるかどうかが、重要なポイントになってきます。

    この対談の時には、中邑選手に人生初のゴルフを体験してもらいました。 190センチ近くある強靭な肉体から放たれるドライバーショットは、ヘッドスピード自体はとてつもなく速いものの、やはりゴルフ初体験のため、当然ボールは右へ右へとどこまでも遠くへ行ってしまいました。
    ここで、僕は当然ながら普通のゴルフの指導は一切行いません。
    先に言いましたが、相手のイメージできないことを論理的に説明などしても、仕方ありません。相手の世界に入り、相手の言葉で説明しなければ相手には通じないのです。

    この時、僕はスイングを「蹴り」で説明しました。 “相手に効く蹴りとはどんな感じ?”と聞くと、スローで動きを見せてくれました。 当然、その時には体も肩も開いていないのです。 どんなにスピードがあっても、先に体が開くとエネルギーが逃げてしまい、相手の体に伝えることができないのは、ゴルフも格闘技も全く同じです。 「相手に効く蹴りをするには、軸をぶらさないで下半身をリードしながらも肩を開かずに、最後に脚をリリースする蹴りが相手に一番効くんですよ」と自分の言葉で説明すると、中邑選手はしばらく目を閉じて、自分の言葉をゴルフスイングに置き換えるイメージした後、ゆっくりとクラブを振り始めました。

    そのスイングは、明らかに5分前のスイングとは別物でした。 それでもボールを打つと、最初はうまくタイミングをとることができなかったのですが、自分が既に知っている動き(蹴り)をひたすらイメージして打っていたら、途中から見事なドローボールに変わっていったのです。
    もし、この時にゴルフスイングとはバックスイングで肩を90度回してetc……なんてやっていたら、「肩を回すってどういう動きだろう?」と理解できず、全く通じなかったでしょう。 それほど、相手の言葉でコミュニケーションをとることは大事なのです。
    そして、その手法を使って見事にアメリカでも大成功させ、決して英語もパーフェクトでなくても、決して典型的な日本人の風貌をしなくても、アメリカ人へ上手にメッセージを送ることに成功した中邑選手。今、アメリカで、これまでの日本人では決してできなかった領域に入ろうとしています。 日本人が、世界に出て行って活躍する姿を見るのはうれしいですね!!

    皆さんも、会社でも、子供の教育でも、ゴルフを教える時でも(教わる時でも)、熱をもって自分の言葉で語るのでなく、相手の世界に相手の言葉で入ることを、ぜひ試してみてください。

    1つ具体的な言葉をお教えしましょう。
    それは、もしゴルフを教えていて、ナイスショットをしたら“今、どんな感じがした?”と質問してみてください。その時に出てくる言葉が、相手の最もイメージしやすい言葉なのです!

    (文:松本 進)