Vol.17:タイガー・ウッズ、マスターズ優勝の裏にあるアメリカ社会のメンタリティー

  • 皆さん既にご存知のとおり、タイガー・ウッズが、今季メジャー第1戦のマスターズ・トーナメントにて、11年振りにメジャー大会での劇的な復活優勝を果たしました。

    この劇的な優勝によりマスコミ各紙は、大会のことのみならず、これまでのスキャンダルや、度重なる膝や腰の手術、アプローチイップスや人種の劣等感など、タイガーにまつわる様々な記事を書き立てました。

    これまでに私も、プロスポーツにおける色々なカムバックストーリーを聞いたことがありますが、知る限りでは、今回のタイガーのように、一度頂点に立った選手がどん底まで落ち、10年以上の時を経て、最高峰のメジャートーナメントにて復活優勝を果たすという規模のカムバックをした選手は記憶にありません。

    タイガーが年々成績を落としていたとしても、ツアーに出続けていれば話は別ですが、試合自体からも長く離れ、度重なるケガやスキャンダルの末に、メジャーで復活優勝を果たしたとなると通常のカムバックストーリーとはスケールが違います。

    練習の虫のタイガーでさえ、スキャンダルが出たころは練習もなかなか思うようにできなかったでしょうし、アプローチイップスになった時には誰もがタイガーは終わりだと思っていたはずです。現に私も、「タイガーの復活は絶対にない!」と断言する元ツアープレイヤーたちのコメントを何度も耳にしたことがあります。

    なぜ、タイガーはどん底の状態から這い上がり、世界最高峰のマスターズで優勝することができたのでしょうか?

    私は、タイガーの“信じる力 -Faith-”が長けていたからだと思っています。


    ― 「Faith」
    辞書で調べると、信念・信仰・忠誠と書かれていますが、私がここで言う「Faith」とは、“目に見えないものが、確実に起きると信じる力”が最も近いと思います。

    まだ現実には起きていない、確証がないことに対して、それが確実に起きると信じる力です。
    口で言うのは簡単ですが、実際に心からそう信じられるというのは、簡単なことではありません。実際には、その正反対とも言える出来事が次々と身の回りで起きていったはずです。

    目に見えるもの(ドライバーの飛距離などの各種スタッツ)は、明らかに20代の頃と比べると衰えてきているなかで、確証のないもの、裏付けのないものを心から信じる“Faith”とは、物凄い能力なのです。

    プロゴルファーには、ドライバーの飛距離やグリーン周りの技術はもちろん、本番に力を発揮できる能力、長時間練習ができる能力など色々な能力が求められますが、どの能力よりも私は、この“Faith”を持つ能力がツアープレイヤーとしてはもっとも大切だと思います。

    タイガーの好きな言葉は、“人生の中で何が起きたかは、あまり重要ではない。大事なことは、起きた出来事に正しく反応できるか”だと聞きました。

    タイガーは、家族に見放され、世間からも非難と軽蔑の目で見られ、スポンサーからは次々と契約解消を宣告され、心身ともにボロボロになって、どん底まで転落していきました。

    スーパースターの転落話はよく耳にしますが、ここまで大きな復活のストーリーを成し遂げることが出来たのは、“自分には必ず成すことができる”という”Faith”の力以外の何ものでもなかったはずです。 まさに、信じられないという言葉以外に思いつきません。