Vol.25:「新型コロナウイルスと世界のスポーツ界への影響」

  • 先日、3月9日にロサンゼルスから日本に入りました。
    実はもっと早くこのコラム原稿を書き始めていたのですが、あまりにも早いスピードで状況が変化してきているので、数日前のニュースが全く役に立たなくなり内容を更新し続けています。それほど毎日状況が刻々と変化しています。

    3月9日の時点で、既にアメリカでも500名程度の新型コロナウイルス感染者がいましたが、街中ではさほど緊迫感のようなものを感じることもなく、不特定多数と接触する空港職員でさえも、マスクを着けている人はほとんどいませんでした。
    いつもより少し空いているかなと感じた以外は、空港もいつもとの違いを感じる事は全くありませんでした。

    それから僅か5日後の3月14日、ご存知の通り、世界の新型コロナウイルス感染者は13万人を超えました。これまで目立った影響を受けていないと思っていたアメリカでも、次々とイベント中止が発表されました。ゴルフ、野球、バスケット、水泳なども含めすべてです。

    そしてアメリカでも非常事態宣言が発令されました。
    さらに、ヨーロッパからの入国は30日間禁止が発表されました。
    ロサンゼルスの家族からも連絡が入り、子供の学校も5週間の休校(アメリカ内でも地域によって対応が異なりますが、ロサンゼルスの学校は休校です)となったようです。

    ゴルフ界でも、準メジャートーナメントの「The PLAYERS Championship」が大会初日の夜に中止を決定、そしてマスターズ・トーナメントの延期がこの日に発表されました。
    プロゴルフ界を象徴するマスターズまでもが延期になったことで、今後、他の大会への影響も更に広がるでしょう。

    他のスポーツも同様に、今は全てがキャンセルなのですから、これはもうどうすることもできません。誰もが不安のなか、今は黙って嵐が去るのを待つしかないのです。

    日本では東京五輪の開催に関して連日話題に上っていますが、アメリカでは、オリンピック選手を選ぶ選考会ですら、まだ全く開催の見通しが立たない状況なのですから、日本が「絶対に開催したい!」とは言っても、正直それどころでない状況がどんどん進行しているのが現実です。

    「The PLAYERS Championship」初日後の大会中止の発表を受けて、出場していた選手達がメディアのインタビューに応じていましたが、全員が全員口を揃えて出る言葉は
    “今はゴルフの話どころのレベルではない”ということでした。
    少々オーバーに聞こえる表現と思われるかもですが、皆さんが日本にいて感じている不安と、彼らが感じている不安とは全く違うレベルの話なのです。
    実際にこれから色々な被害を受けるであろうし、そして彼らが新しい決断を迫られるであろう、ということも含んだコメントなのです。

    どういう意味でしょう?

    日本では、春の風物詩でもあるセンバツ高校野球が中止になって、多くの人からのクレームが殺到していると新聞に書かれていましたが、これは、まだこの問題がスポーツ界や経済界の断片的な被害だと認識しているからでしょう。

    一生懸命練習してきた子供がかわいそう、夢を壊したなどのコメントが随分あったようですが……。これらはまだ不便とか不憫と認識しているレベルの話なのです。

    私自身もそうですが、3月9日に日本に入国し3月25日にアメリカに戻る予定ではあるものの、本当に戻れる保証などありません。
    ですから出発前に家族には、もしもの場合には日本滞在が延びる話は当然してきています。

    アメリカと日本の間は、現時点においては渡航禁止、入国禁止という状態にはありませんが、いつ新しい発令がなされても不思議ではありません。
    自分で情報を分析し、覚悟を決めて決断していくしかないのです。

    ご存知の通り、既にアメリカはヨーロッパからの入国を30日間禁止しました。
    まだまだ感染者数が劇的に増えている今、期限が延期される可能性はかなりあると思います。
    PGAツアーに参戦している選手の中には、ヨーロッパ出身の選手がたくさんいます。
    ローリー・マキロイ、ジョン・ラーム、セルヒオ・ガルシア、トミー・フリートウッドなど、ほかにもたくさんの選手たちがヨーロッパから来ています。
    仮に家族も含めアメリカに滞在していたとしても、両親や親類たちがヨーロッパにいる選手がたくさんいます。

    もし彼らが、当面試合が開催されないからといって一度母国に帰ってしまったら、今度はアメリカに入国できなくなくなる可能性があります。
    このような事態の時では、どんなスーパースターであったとしても例外は許されません。

    これを避けるためには、選手は家族と離れたままであってもアメリカに残るしかないのです。ここで問題なのは、アメリカに残っても試合の目処が立っておらず試合自体がないのですから収入もありません。家族に会いに母国に戻るべきなのか? 近い将来の大会再開を期待してアメリカに留まるべきなのか?

    そうなると選手としては先程のコメントにあるように、正直“ゴルフの話どころのレベルではない”となるのです。何が正しいのかは分かりません。選手各々が自分で決断をして、方針を決めていくしかないのです。これは現在、日本ツアーに参加するかを決めかねている韓国人、中国人選手も全く同じです。

    状況が刻々と変わる中で個々に信じた決断をするしかありません。