軟鉄鍛造アイアンヘッドの世界 Vol.2~日本のゴルフクラブ発祥の地、兵庫県市川町から~

2017年7月26日 更新

  • 地クラブ特集!

    共栄ゴルフ工業
    株式会社

    半世紀以上も軟鉄鍛造(フォージド)アイアンヘッドを作り続けてきた伝統あるメーカー、共栄ゴルフ工業株式会社さんを訪ね、軟鉄鍛造アイアンの特徴やメリット、製造工程などをお聞きしました!

軟鉄鍛造アイアンヘッドの製造工程

  • 各工程の専属マイスターによる一貫生産

    各工程を専属マイスターが見守るクオリティ

    アイアンヘッドの製造工場の中でも、鍛造・研磨・メッキの全てを自社内で行える工場はそう多くはありません。共栄ゴルフでは、その全てを備えることにより、重量交差の範囲が非常に少ないアイアンヘッドの量産に成功しました。また、他社にはない下地の仕上がりで、どのメーカーにも負けない美しいヘッドの製造を可能にしました。これらは、鍛造・研磨・メッキの全ての作業にマイスターたちの“ものづくり”に対する情熱が注がれているからです。各工程で厳しい基準を守りながら完成品に仕上げていくものづくり。ここに共栄ゴルフの一貫生産の強さがあります。

  • 各工程の専属マイスターによる一貫生産

  • 鍛造(FORGED)

    「鍛造(FORGED)」とは、金属を加工する工法のひとつで、素材である円筒形の軟鉄を、約1,200°に加熱してハンマーで叩き、形状を作る、日本で古くから用いられている伝統的な製法です。鉄をハンマーで叩き、金属内部の隙間を埋め、塑性変形させることにより、鉄の組成が線のように繋がった鍛流線が連続します。鍛流線とは、鉄が加圧され高密度化し、金属粒子が線のように繋がった状態で、その鍛流線がネックからフェースまで切れ目なく流れることにより、緻密で強靱な金属になり、抜群の打感の良さと柔軟なしなりを生みだします。

  • 鍛造(FORGED)

  • 《製造工程》

    鉄の加熱 → 鍛造 → バリ抜き→ショット(約15分)→ 再加熱 → 仕上げ打ち→ショット(約15分)→ 再仕上げ打ち(冷感鍛造)→
    ホーゼルの穴あけ加工
  • 軟鉄素材(鋼種/S25C)※全てのヘッドで共通の素材を使用

    軟鉄素材(鋼種/S25C)
    ※全てのヘッドで共通の素材を使用

  • カットされた軟鉄素材 ※ヘッドの種類や大きさによって長さが微妙に異なる

    カットされた軟鉄素材
    ※ヘッドの種類や大きさによって長さが微妙に異なる

  • 電気炉で約1,200°まで熱された軟鉄素材

    電気炉で約1,200°まで熱された軟鉄素材

  • 鍛造

    鍛造

  • 鍛造した原型からヘッドの型を抜く(バリ抜き)

    鍛造した原型からヘッドの型を抜く(バリ抜き)

  • ヘッドの原型の重量をチェック ※この段階では完成品と比べ100g近く重い

    ヘッドの原型の重量をチェック
    ※この段階では完成品と比べ100g近く重い

  • 自然に冷まされるヘッドの原型 ※ゆっくり冷ますことで軟鉄の軟らかい打感が生まれる

    自然に冷まされるヘッドの原型
    ※ゆっくり冷ますことで軟鉄の軟らかい打感が生まれる

  • 型抜きされたヘッドの原型と不要な部分

    型抜きされたヘッドの原型と不要な部分

  • バリが付いた状態のヘッドの原型

    バリが付いた状態のヘッドの原型

  • 大まかなバリ取り

    大まかなバリ取り

  • ターンショットでヘッド表面の粗さを取り除く ※40分ほど

    ターンショットでヘッド表面の粗さを取り除く
    ※40分ほど

  • 鍛造工場に並べられたヘッドの金型

    鍛造工場に並べられたヘッドの金型

鍛造(FORGED)工程のこだわり

  • 鍛造(FORGED)工程のこだわり

    共栄ゴルフ工業株式会社
    鍛造場兼メッキ場部門チーフ:大山 泰之(おおやま やすゆき)さん

    鍛造で大切なことは「金型をみる目」を養うことです。金型を見て形を想像し、完成品の具体的なイメージを浮かび上がらせられることが重要だと思っています。鍛造で難しいところは、いつもと同じようにやっているつもりでも、仕上がりに微妙な違いが出るところです。荒打ち作業をしている時、表面が荒れたり、時には割れが出たりしてくると、その原因は何なのか?温度なのか?打ち方なのか?原因を追及し、試行錯誤を繰り返しています。この工程での許容誤差は+-5gですが、鉄を熱した温度によって荒打ち後の重量が変わってくるので、毎回計量しながら電気炉の温度調整をすることも重要です。手間のかかる作業ですが、それでも鍛造の醍醐味は荒打ちにあると思います。重要な工程なので、いろいろと難しいところも多いのですが、最もやりがいを感じる作業でもあります。

  • 研磨(GRIND)

    研磨(GRIND)は、軟鉄鍛造アイアンヘッド製造の中で最も基本となる技術です。美しいフォルムのヘッドを生み出すには、削り手の感覚・イメージから始まります。例えば、構えた時に出球が「右に行かない」「左に行かない」など、完成品をイメージして、軟鉄鍛造アイアンヘッドの形状が生み出されていきます。研磨には、感覚の部分が多く影響し、ロフト角1つとってみても、基本が25°のアイアンの場合「もう少し飛距離が欲しい」ということであれば、ロフトを立てて24°で仕上げたりします。ネックで言えば、エッジが退いたグースネックやストレートネックなど様々です。研磨は、最終的に使い手の好みの形状に仕上げていくための重要な技術です。

  • 鍛造(FORGED)

  • 《製造工程》

    ソール刻印 → 顔取り(重量合わせ)→ 刻印 → スコアライン打刻 → 表面研磨 → ロフト・ライ角調整 → 整形研磨 → 振動バレル → 磨き研磨 → 遠心バレル → コーンバレル → 検査 → 手直し → メッキ前処理(洗浄や先ブラストなど)
  • ホーゼル穴あけ後のヘッド

    ホーゼル穴あけ後のヘッド

  • ソール刻印 ※熟練した職人の手作業で適切な位置に刻印する

    ソール刻印
    ※熟練した職人の手作業で適切な位置に刻印する

  • 顔取りでフェース部分を削り、一気に重量を落し完成重量に近づける

    顔取りでフェース部分を削り、一気に重量を落し完成重量に近づける

  • スコアライン打刻 ※各モデル専用の金型でスコアラインを打刻

    スコアライン打刻
    ※各モデル専用の金型でスコアラインを打刻

  • スコアライン打刻後のヘッドと金型

    スコアライン打刻後のヘッドと金型

  • バックフェース刻印(裏刻印) ※熟練した職人の手作業で適切な位置に刻印する

    バックフェース刻印(裏刻印)
    ※熟練した職人の手作業で適切な位置に刻印する

  • ロフト・ライ角調整 ※+-2°以内であれば問題なく調整可能

    ロフト・ライ角調整
    ※+-2°以内であれば問題なく調整可能

  • ペーパーの研磨で最終的なヘッド形状を作り、表面を磨いていく

    ペーパーの研磨で最終的なヘッド形状を作り、表面を磨いていく

  • ヘッド重量をチェックしながらの研磨作業 ※コンマ何g単位の職人技が求められる

    ヘッド重量をチェックしながらの研磨作業 ※コンマ何g単位の職人技が求められる

  • ヘッド表面の細かいキズを除去する振動バレル ※約8時間稼働

    ヘッド表面の細かいキズを除去する振動バレル
    ※約8時間稼働

  • ヘッド表面をキレイにする遠心バレル ※通常1~2時間稼働

    ヘッド表面をキレイにする遠心バレル ※通常1~2時間稼働

  • コーンバレルでの仕上げ ※先代が研究を重ねたどりついたバレル作業

    コーンバレルでの仕上げ
    ※先代が研究を重ねたどりついたバレル作業

  • エアーで残った水や汚れを落とす洗浄作業

    エアーで残った水や汚れを落とす洗浄作業

  • メッキ前の最終チェック ※ヘッド重量や目に見えないような細かいキズもチェック

    メッキ前の最終チェック
    ※ヘッド重量や目に見えないような細かいキズもチェック

研磨(GRIND)工程のこだわり

  • 工場長:岡村 勲(おかむら いさお)さん

    共栄ゴルフ工業株式会社
    工場長:岡村 勲(おかむら いさお)さん

    ヘッド形状というものは、絶対におさえておかなければならない基本的なポイントもありますが、お客さまの要望や好みの部分が大きなウエイトを占めています。同じ軟鉄鍛造ヘッドからでも、様々な形状のヘッドをつくり上げることができるので、研磨をする上では、お客さまからの様々な要望に応えることが最も重要だと考えております。今までの経験や技術を最大限活用し、より良い製品づくりとさらなる技術の向上に努めております。

  • 研磨場部門チーフ:小川 元克(おがわ もとよし)さん

    共栄ゴルフ工業株式会社
    研磨場部門チーフ:小川 元克(おがわ もとよし)さん

    前工程のひとつ、スコアラインの打刻は、自分の感覚が試される作業です。ヘッドの形状に合わせ、適正な位置に打刻するのがポイントですが、スコアラインの位置によってはヘッドの性質が変わってきたり、構えた時の雰囲気が変わったりします。しかも、ここで打刻したスコアラインを基準に研磨していくので、後の作業にも影響する重要な工程だけに集中力を高め、慎重に作業を行っています。決められた許容範囲内のズレであれば、研磨で調整してもらえるのですが、完成品を手に取って構えた時に違和感がでないように、正しい位置に打刻するよう取り組んでいます。他の工程でも同じですが、失敗してもやり直しができないので、ここに来るまでの工程や作業のことを考えると、気を使うのと同時に身が引き締まる思いです。
    スコアライン打刻の前に行う刻印でも、自分の感覚やセンスが活かされると思っています。刻印する場所は、お客さまからの指定がない限り、自分でバランスを取ります。特にバックフェース刻印は、見た目やイメージにそのまま影響しますので、人から見て「格好良く見える」イメージを大切に、経験からバランスの良い位置に刻印しています。
    最初はバランスを取るのが難しかったのですが、徐々に経験を積み重ねていくことで「ココに打ったらまとまって見える」といったようなイメージが湧いてきます。新しいモデルや刻印の数が多いモデルでは、今までの経験や感覚を頼りに刻印していくので、やりがいや充実感があります。

  • メッキ(PLATING)

    メッキは生き物と同じです。温度や湿度によって仕上がりに微妙な違いが出ます。そのため、PH値や流す電気の数値など、日々設定を変える必要があります。その都度、適正な数値を導き出しながらの作業なので、正解をデータにすることは困難です。「より正解に近いであろう設定でメッキをつける」という表現が正しいのかもしれません。また、ニッケルメッキ前の洗浄だけで4工程もあり、いかにキレイにしてからメッキするかが、美しく仕上げるためのポイントになります。ニッケルメッキの作業時間は、1時間~1時間30分。約2.5g・膜厚約25~35ミクロンに仕上げます。クロムメッキは、作業時間が約40分で、重量は0.5~0.7g。膜厚約5ミクロンです。経験と技術を持つ、メッキマイスターならではの匠の作業と言えます。

  • 鍛造(FORGED)

  • 《製造工程》

    表面処理(塩酸) → ニッケルメッキ → クロムメッキ → 乾燥 → 表面バフ処理 → マスキング → フェースブラスト → 入色 → 仕上げ → 完成
  • ニッケルメッキ ※少し黄色み(ゴールド)を帯びた仕上がりに

    ニッケルメッキ ※少し黄色み(ゴールド)を帯びた仕上がりに

  • クロムメッキ(作業時間:40分で0.5~0.7g、膜厚:約5ミクロン)

    クロムメッキ(作業時間:40分で0.5~0.7g、膜厚:約5ミクロン)

  • サテン仕上げ前のヘッド ※写真はノーメッキサテン仕上げ

    サテン仕上げ前のヘッド ※写真はノーメッキサテン仕上げ

  • サテン仕上げ ※メッキヘッドのほとんどはサテン仕上げに

    サテン仕上げ ※メッキヘッドのほとんどはサテン仕上げに

  • フェースブラスト前のマスキングされたヘッド

    フェースブラスト前のマスキングされたヘッド

  • フェースブラスト

    フェースブラスト

  • フェースブラスト直後のヘッド ※砂を吹き付け、フェイスの光沢を抑える

    フェースブラスト直後のヘッド
    ※砂を吹き付け、フェイスの光沢を抑える

  • 刻印部分の色入れ ※繊細な作業が求められる

    刻印部分の色入れ
    ※繊細な作業が求められる

  • 防錆・洗浄・浸透などのためのペリコート

    防錆・洗浄・浸透などのためのペリコート

  • 完成し出荷前の軟鉄鍛造アイアンヘッド

    完成し出荷前の軟鉄鍛造アイアンヘッド

メッキ(PLATING)工程のこだわり

  • メッキ工場担当:福永 知生(ふくなが ともき)さん

    共栄ゴルフ工業株式会社
    メッキ工場担当:福永 知生(ふくなが ともき)さん

    メッキをする上で難しいところは、いつもと同じように作業しているつもりでも、日々の気温や湿度などの諸条件により、仕上がりの状態が微妙に異なるということです。メッキの仕上がり、色艶といったものにほんの少しですが違いが出ます。薬品の調整やPH調整など、日々細かい調整をしながらメッキを仕上げています。季節によっても気温や湿度が違うので、毎日、色々と工夫しながら微調整を繰り返していますが、毎回同じようにメッキを仕上げるのが最も難しく、また、やりがいを感じるところでもあります。
    マニュアルどおりに設定して、それで良いのであれば簡単なのですが、メッキはそうはいきません。その分、イメージしたとおりの綺麗なメッキに仕上がった時は、ホッとするのと同時に、充実した最高の気分を味わえます。上手く仕上がった中にも、色目や艶に微妙な差があったりするので、自分で見て「綺麗だな!」と思える仕上がりを求め、日々修練を重ねています。