ジングちゃんをビックリマン「らしく」描いてみた『ビックリマンと僕らの次代』第4回

2017/11/10

WRITERインタビュー:Zing!編集部・ピーター/インタビュー・テキスト:トライアウト・福井英明/撮影:トライアウト・田村朋子

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ジングちゃんをビックリマン「らしく」描いてみた『ビックリマンと僕らの次代』第4回

1980年代に一大ブームを巻き起こしたビックリマンチョコの魅力と「これから」を探る『ビックリマンと僕らの次代』。第4回は「ビックリマンらしい絵柄」に隠されたテクニックや作画に対する思いを深掘りします。お話を伺うのは第1回「ネーミングからビジュアルをつくる/アナログデザインの魅力」にもご登場いただいたグリーンハウスの米澤さんと兵藤さん。最後はZing! 公式キャラクターのジングちゃんが米澤さん・兵藤さんの手によってビックリマン「らしく」描かれていく貴重な工程をレポート!


絵には「自分自身」が表れる

――ここ数年、ビックリマンはアイドルグループやアニメ、ゲームなどとのコラボシールで話題を集めています。コラボシールを描く上で心がけていることなどはありますか?

元のキャラクターを生かしつつ、どうビックリマンの世界にアレンジするか。その勝負ですよね。例えば『ONE PIECE』とのコラボシールなら、誰が見ても『ONE PIECE』のキャラ、例えばルフィだと分かる絵にしつつ、さらに「ビックリマンだよね?」と思わせないといけません。ビックリマンの土俵にコラボ相手のキャラクターを乗せる、という感じですね。

『ONE PIECE』とのコラボシール

――どのコラボシールも、絵柄を見ればひと目で「ビックリマンだ」と分かりますね。

そこは線のタッチやデフォルメの具合、2等身の、頭が大きい全身のフォルムなどに表れてくるんだと思いますが、それだけではないですね。自分が好きだと思える絵になっているかどうか。そこに対する納得度がないと、ビックリマンらしさは出ません。

――なるほど、描き手の納得度も大切なんですね。

そうですね。私たちはヌケた感じのある顔が好きなので、自分たちが納得するヌケ感を出せるまでは作品として出しません。そこにこだわって何年も描き続けているうちに、その経験値や引き出しが自分の感性になっていく。ビックリマン風の世界観が体にしみついていくんです。それが「個性」であり「自分自身」なんですよ。表現方法や線のタッチなどもありますが、結局は描くにあたっての個性や自分なりの考え方を持っているかいないか。それで描く絵は変わってきます。やっぱり自分がその仕事を楽しんで、そこにノッているということは、作品に自分自身が出ているんですよ。そうじゃなかったら個性なんか出ない。

絵には「自分自身」が表れる

――「太い線で2等身で描けばビックリマンになる」という単純な話ではないんですね。

はい。だから同人誌などの二次創作で似たような絵を描く人もいますが、完全に同じものにならないのは、やっぱり描く人の持ってる人間性や個性が出てるんですよ。同じタッチで描いたとしても、絶対に「似て非なるもの」になる。どちらが良い、悪いの話ではなく、完全トレースでもしない限りまったく同じものにはなりません。

――人間性が絵に出る、というのは面白いですね。

やっぱり性格の悪い人が描けば、表情など、どこかに描き手の性格が絵に出る場合がありますよね。私たちも色んなキャラを描いてきましたが、怖い顔を描くときは怖い顔になりますし、マヌケなキャラを描くときはマヌケな顔になります。だから描いてる姿は、あまり見せたくない(笑)。

描いてる姿は、あまり見せたくない

シール上での一発芸

――ビックリマンのキャラクターを描く難しさって、どの辺にあるんでしょうか。

アニメや漫画雑誌への展開が始まる第7弾くらいまでは特に設定やストーリーが先にあるわけではないので「シール1枚で、しかもネーミングだけでいかにボケるか」という一発勝負みたいな所があったんですよね。シール上での一発芸といいますか。そこでどれだけ喜んでもらえるか、面白いと思ってもらえるか、怖いか、カッコいいか……。この正方形のスペースの中で、デフォルメした頭が大きいキャラクターひとつで動きとか表情とかを全部出さないといけない。

――3すくみの中で描きやすさは違うのでしょうか?

天使と悪魔は「カッコよく・かわいく・怖く」などを表現することが多いので分かりやすいんですが、お守りが難しいんですよね。ヌケた感じはあえてつくらないと出ないので。だからこそ、カチッとハマったときは面白い。ビックリマンを描き始めたのは30歳前後で、とにかく仕事にこだわっていた時期なので、絵のクオリティは異常なくらい追求していましたね。

――なるほど! 当時の子供たちが熱狂した背景にはお二人のストイックな仕事への哲学があったんですね。そんなお二人にお願いなのですが、キャラクターが生まれるまでの工程を見せてもらえないでしょうか?

いいですよ。何を描きましょう?

――イラストレーター・漫画家のconixさんに描いていただいたZing! のマスコット・ジングちゃんを描いていただけないでしょうか?

かわいいですね。どんな絵に仕上がるか、自分でも楽しみです!

ジングちゃん

ジングちゃんがビックリマン「らしく」描かれていく工程をレポート!

(各工程のコメントはグリーンハウスさん提供)

スケッチ

スケッチブックにアイデアをまとめていきます。今回は元キャラがあるので、そのキャラのイメージを壊さずにポーズを探ります。イチからつくるキャラの場合、あらゆる角度から考えるので、スケッチブックには何パターンものキャラのラフができます。

スケッチ

スケッチ調整

スケッチがまとまったらスキャンしてシールのスペース内でのバランスをとります。アナログ時代は拡大、縮小したコピーを切ったり貼ったりの作業でしたが、デジタルになってこの工程の作業は軽減されました。

スケッチ調整

下絵の調整

デジタル調整したものを再度アナログで下絵調整して線を詰めていきます。線画で太らせることを想定しながらサイズやレイアウトのバランスを整えていきます。

下絵の調整

トレペラフ

トレーシングペーパーをあてて、鉛筆で1本の線にまとめ、ペン入れしてラフを仕上げます。後ほど、線画の下絵に使うので精度の高い線が必要です。

トレペラフ

ラフ完成

再度スキャンして、はみ出た部分等を修正します。場合によっては見やすくするためにグレーを入れてラフの完成です。

ラフ完成

線画スミ入れ

以前はPMパッドという上質紙に描いていましたが、あるときから紙の質感が変わり、描き味も変わって以来、中厚口のトレーシングペーパーに描いています。これにより鉛筆での下書きが不要になり作業工程を減らすことができました。ペンはミリペンを使用。

線画スミ入れ1

線の外側と内側の線を描いて、中を塗りつぶします。ラフの線を外に太らせるか、内に太らせるかで表情やフォルムがかなり変わるので、気の抜けない工程です。

線画スミ入れ2

ちなみに、トレペとミリペンの相性なのか、描いている途中でペンの調子が変化して描き味が悪くなります。そんな場合、ペンを交換するのですが、しばらく休ませると描き味が戻ったりする場合もあり、机の上はペンだらけになります。

線画スミ入れ3

線画作成

全体を見て、線のバランスを調整します。納得できれば線画の完成です。現在はアナログ作業はここまでで、着色はパソコン作業で行います。

線画作成

原画スキャン

デジタル化で細かい所の再現度を保つために線画を200%拡大し、グレースケールでスキャンした後、画像編集ソフトの定番「Adobe Photoshop」で開きます。

原画スキャン

レベル補正

「レベル補正」で白黒のコントラストを絞り、細かい部分が潰れず細い線が消えない部分を探ります。その後モノクロ2階調に変更し、スキャン時のゴミを消したり、線の修正をしたりします。

レベル補正

アウトライン化

「Adobe Streamline」で画像データをパスデータに変換します。古いアプリで今はもう廃盤ですが、正確さと単純さを絶妙なバランスで変換できるので手放せないアプリです。

アウトライン化

パス修正

「Macromedia FreeHand」という、これまた廃盤アプリで開きます。「Adobe Illustrator」と機能はほぼ同じなのですが、パスの扱いやすさではこのアプリが最強だと思っています。パスの修正をする際、きれいなラインに直すのではなく、手描きの味を残しつつ「Streamline」の機械的な癖を修正します。

パス修正

モノクロデータ完成

シール用の原稿の場合、スキャンしただけで修正しなくても通用する精度なのですが、できる限りアナログ感にこだわって修正しています。これにより、どれだけ拡大しても平気なデータができあがります。

モノクロデータ完成

着色

着色はアナログに比べ、格段にラクになりました。その反面、奇麗に塗れすぎてノッペリとした仕上がりになってしまいます。ハイライトはカタチを分かりやすくする効果を狙い、特に光源の方向性などは意識していません。

着色

カラーデータ完成

全体をチェックして納得できればキャラクターの完成です。シールにする場合、ロゴやバックデザインを配置して仕上げます。

カラーデータ完成1


完成した絵はこちら!

カラーデータ完成2


さらにこのジングちゃんイラストに背景や、キャラクター名の装飾を入れると……こうなりました!

カラーデータ完成3

まさにキャラの「らしさ」も活かしつつ、「ビックリマンらしさ」もあるイラストですよね。米澤さん・兵藤さん、ありがとうございました!

©LOTTE/ビックリマンプロジェクト
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
©グリーンハウス

感謝感激雨アラレ!!!

喜び
  • 米澤稔さん
  • プロフィール

    米澤稔

    株式会社グリーンハウス取締役兼チーフデザイナー。1954年、兵庫県姫路市生まれ。1977年、グリーンハウスに入社。ビックリマン「悪魔VS天使シリーズ」のキャラクターデザイン・作画を手がける。

  • 兵藤聡司さん
  • プロフィール

    兵藤聡司

    1963年、兵庫県尼崎市生まれ。1984年にグリーンハウスへ入社。米澤さんとともにビックリマン「悪魔VS天使シリーズ」のキャラクターデザイン・作画を手がける。


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