シカクが語る「リトルプレスの現在」 第7回

2018/01/19

WRITERテキスト:トライアウト・福井英明/撮影:トライアウト・吉川寿博

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シカクが語る「リトルプレスの現在」 第7回

リトルプレスを中心に、さまざまなインディーズ出版物を扱うセレクトショップ「シカク」が、イチオシの作品を紹介するコーナー。読めば旅に出たくなる……そんな作品を中心に、今回も日常に新しい刺激を与えてくれるエッセイや漫画をご紹介します。今回は、シカクの広報部長・スズキナオさんにもコメントをいただきました。


『月刊ドライブイン』 HB編集部(橋本倫史)

http://shikaku.ocnk.net/product/1562

『月刊ドライブイン』 HB編集部(橋本倫史)

こちらはタイトルの通り、ピンポイントで「ドライブイン」にフォーカスを当てて紹介する本です。著者の方がドライブイン好きで、全国各地のさまざまなドライブインを訪れては、現地で出会ったお店の人やお客さんに話を聞き、文章と写真を交えた作品に仕上げています。インタビュー、旅行記、私小説……色々な要素がミックスされていて、ただのお店紹介本ではないのが魅力です。

「ドライブイン」って、改めて定義を聞かれると「何だろう?」となりませんか? 「大きい幹線道路沿いにあって、車で行くことが前提の、食べたり休んだりできる所」とでもいいましょうか。サービスエリアや道の駅ともちょっと違う、何となく昭和の雰囲気が漂う食堂、という感じですよね。中には宿泊や入浴ができる施設もあるみたいです。

月刊ドライブインvol.07

この本は何といってもビジュアルのカッコよさに惹かれます。まず灰色一色の表紙。多くを語らぬ姿勢がいいですよね。でもタイトルの文字部分にだけ加工を施していて、ちょっとした遊び心というか、こだわりが素敵です。そして写真がすべてモノクロなのもカッコいい。紙質の関係か、粒子の粗い昔のフィルム写真みたいになっていて、郷愁を誘うテイストがいいですね。

文章からもビジュアルからも、それが伝わってくる作品

著者の方はドライブインに行くために全国を旅行するほど、ドライブイン好きな方。地方のお店でたまたま出会った人って、おそらく二度と会うことがないですよね。車が一瞬ですれ違うように、人が一瞬だけ交差する。そんな寂しさのような魅力がドライブインにはあるんですよ。文章からもビジュアルからも、それが伝わってくる作品ですね。

『月刊ドライブイン』 HB編集部(橋本倫史)

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『tamioo日記』 タミオー

http://shikaku.ocnk.net/product/1541

『tamioo日記』 タミオー

タミオーさんはバックパッカーで、世界中を気ままに旅している、すごくうらやましい方です。この作品は、タミオーさんの旅の記録を本にしたものなんですが、ただの旅行記ではありません。行く先々で書きためた日記を、現地の印刷会社で印刷・製本しているんです。もともと本にするつもりはなかったそうなのですが、日記を友達に見せたら「これ、本にした方がいいんじゃない?」と言われて始めたみたいです。

この本のすごいところは、その時、その場での感情がそのまま伝わってくる

この本のすごいところは、その時、その場での感情がそのまま伝わってくるような勢いがあるところ。文章はタミオーさんの手書きの日記やメモがそのまま印刷されていて、書き間違えた所もペンで黒く塗りつぶしているんですよ(笑)。しかも文字が小さすぎて読めない……。さらに、写真やパンフレットだけでなく、現地で拾ったゴミなんかも貼り付けてコラージュしていて、かなり独創的な読み物に仕上がっています。

これは、「読む」のではなく「感じる」本ですよね。ビジュアルブック的にさっと見るという感じです。訪れている場所も街中の雑然としたところが多いので、その場所の喧噪がそのまま本に詰め込まれている、という感じがします。

これは、「読む」のではなく「感じる」本です

海外で印刷しているので、ちょっと変わった紙を使っていたり、表紙は見たことのない凹凸加工をされていたり。本人も印刷にはこだわっているそうなのですが、海外で言葉がしっかり通じないのでモメることもあるそうです……(笑)。ちなみに最新号のVol.5は、ほぼフルカラーで430ページという大作。これをタイのチェンマイで印刷したそうです。サイズ感、たたずまい、デザインのインパクト……どれをとってもカッコいい!

ほぼフルカラーで430ページという超大なボリューム

『tamioo日記』 タミオー

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『ときめき観光協会』 MOB

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『ときめき観光協会』 MOB

著者の「MOB」は『さいはて紀行』の著者でもある金原みわさんと、とある大人のお店の経営者・御坊(おぼう)さん、クリエイターのビロ君という仲良し3人のユニット。みんなで気ままに旅をしたり、おいしいものを食べたり、珍スポットを巡ったり……かなりゆるい活動をされています。この本は、3人が旅に出て「ときめき」を感じた場所を、思いのままに紹介した一冊。3人でキャッキャいいながら行きたい所に行って、好きに写真を撮って、好きなように書いて……という楽しげなシーンが目に浮かびます。

この本は、3人が旅に出て「ときめき」を感じた場所を、思いのままに紹介した一冊

表紙でだいたい想像がつくのですが、紹介されているのはやっぱり変わったスポットが多いんですよ。珍スポットや霊場、廃墟など、いわゆる終末旅行スポット。こういう珍スポット紹介の本ってさみしい雰囲気になりがちなんですが、この本は異常にテンションが高いんですよね。学生みたいに3人でジャンプしてる写真が載っているなど「本当に旅を楽しんでいるな」という印象を受けます。

特に面白いのが、この「絶対あかんやつ」というコーナー。有名アニメなどのキャラクターを真似してつくった看板など、著作権的に危ないスポットを巡ったコーナーです。金原さんはこういうのが大好きな方なので、見つけるたびにテンションが上がっているのが想像できます(笑)。

「絶対あかんやつ」というコーナー

インターネットが出てきてから、珍スポットが好きな人達が簡単につながれるようになったので、こういうニッチな趣味の仲間をつくりやすくなりましたよね。それは貴重なことだと思います。ビロ君も、変わった神社に行ったり変わった絵馬の写真を集めるのが趣味だったりするので。面白い趣味を持った人どうしって、自然につながるものなんですね。

『ときめき観光協会』 MOB

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『おきらく書店員のまいにち』 いまがわゆい

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『おきらく書店員のまいにち』 いまがわゆい

この本の著者のいまがわゆいさんは、岡山県で書店員として働いている方。そして、この本はタイトルの通り、書店員としての毎日を綴ったコミックエッセイです。本が好きな人って書店員に対する憧れがあるので、普段どんな仕事をしているのか知りたいんですよね。その願いにバッチリ応えてる作品です。開店準備から、手描きPOPやオリジナル帯のつくり方、夏のフェアの流れなど、書店員のマニュアルにできるほど詳しく解説してくれています。

この本は書店員としての毎日を綴ったコミックエッセイです

また仕事のことだけでなく、職場の人とカフェに行ったことや、カラオケでどんな歌を歌うかなど、プライベートなことまで紹介しているんです。後半には「書店員あるある」を紹介する四コマ漫画もあります。例えば古本屋に本を売りに行ったのに、そこで読みたい本を見つけてしまって結局は出費の方が多くなる、みたいな(笑)。読んでいて「この人は本当に本が好きなんだな」というのが伝わってくる内容ですね。

今川さんはすごくかわいい絵を描く方で、他にも凝った作品をたくさん出されています。例えば、これは画材を紹介するミニブックで、巻き筆箱のような仕様でつくっています。

これは画材を紹介するミニブックで、巻き筆箱のような仕様でつくっています

巻き筆箱の内容

仕事が休みの日も、家でコツコツとこれらの作品をつくられているようです。本当に心の底から本が好きな人なんでしょうね。こういう純粋に「好き」と思える本をつくれるのが同人誌の魅力だな、と思います。

純粋に「好き」と思える本をつくれるのが同人誌の魅力だな、と思います

『おきらく書店員のまいにち』 いまがわゆい

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『おてんば絵画と秘密の話』ムライ

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『おてんば絵画と秘密の話』ムライ

ムライさんは、商業でも何冊か単行本を出されている漫画家さんで、この本は2009年から2017年までに同人誌で出されていた22作品を集めた、ベスト盤のような作品です。同人誌って過去の作品が手に入りにくいこともあるので、これだけ読めるのはうれしいですね。大学生時代に描いた作品も入っていて、ファンにとってはとても貴重です。

この本は2009年から2017年までに同人誌で出されていた22作品を集め

ムライさんはゲームと鳥が好きな方で、作品もゲームっぽいファンタジーな世界観が特徴的です。そして旦那さんが台湾出身の方なのですが、アジアの雑踏も好きで、作品の舞台にも雑然とした雰囲気の場所が描かれています。作品ごとにストーリーも登場キャラクターも違いますが、ムライさんの世界観は貫かれているんですよ。

作品ごとにストーリーも登場キャラクターも違いますが、ムライさんの世界観は貫かれているんです

最近、商業と同人誌の両方にまたがって活動している人は多いですが、ムライさんはデビューしてからずっとそれを続けているのがすごい。やっぱり同人誌の世界でしか表現できない世界があるんでしょうね。実験的な作品や、シュールな世界観など。それを続けてきたからこそ、ムライさんにしか描けない世界観を確立されているんだと思います。だから、彼女の作品を読んだ時にだけ、その世界に行けるという特別感があります。私も大好きですし、このお店にも彼女の作品が出たら必ず買いに来る、というファンがいるんですよ。

『おてんば絵画と秘密の話』ムライ

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  • シカク
  • 店舗データ

    シカク

    住所:大阪市此花区梅香1-6-13
    Tel:06-6225-7889
    営業時間:13時00分~19時00分
    定休日:火・水曜
    アクセス:JR・阪神なんば線西九条駅から徒歩15分
    阪神なんば線千鳥橋駅から徒歩5分
    公式ホームページ:http://uguilab.com/shikaku/
    オンラインショップ:http://shikaku.ocnk.net/

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