「障がい者支援は、ファン感謝祭」 谷じゃこの短歌ええやん!第6回

2018/01/29

WRITERテキスト:トライアウト・福井英明/撮影:佐伯亜由美

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「障がい者支援は、ファン感謝祭」 谷じゃこの短歌ええやん!第6回

大阪を拠点に活躍中の短歌作家・谷じゃこさんが、面白い仕事をしている人と自由気ままに短歌をつくるコーナー。6回目のゲストは主に重症心身障がい者を支援するNPO法人「月と風と」の代表・清田仁之さん。「面白がること」をモットーに、障がい者と地域の人々が交流する場を数多く生み出しています。その交流によって生まれる「奇跡」が短歌のテーマに!


障がいを持った方々が関わる世界を狭めない

谷じゃこ(以下、谷):清田さんが代表を務める「月と風と」は、具体的にどのような支援をされているのでしょうか。

清田仁之(以下、清田):基本的にはヘルパーステーションですが、主に重症心身障がい者の方を対象にしています。ただ、ヘルパーさんを派遣して終わりだと、障がい者の方々が関わる世界が狭まってしまうので、色々とイベントを行っているんです。

谷:ホームページを見ると「お風呂プロジェクト」や「軽茶堂(かるちゃどう)」「月イチ現代美術館」など、ユニークなイベントのレポートが掲載されています。一般的なヘルパーステーションのイメージと少し違いますね。

清田:そうですね。障がい者の方って、人づきあいが福祉系の人だけになりがちなんですが、できるだけ色々な人とふれあう方がうれしいと思うんです。だから地域の人たちも参加できて、みんなが面白がるようなイベントをいつも考えています。

障がいを持った方々が関わる世界を狭めない

谷:イベントはどうやって企画しているんですか?

清田:障がい者一人一人を見て「どうすれば、この人の良いところを引き出せるかな」というところから考えていますね。「お風呂プロジェクト」でいうと、普段は身体を思うように動かせない重症心身障がい者の方が、お湯につかることで動かしやすくなり、気持ちよさそうな表情になる。そうすると、たまたま一緒に入っていた人に「この人、こんな人なんです」と紹介しやすくなって、会話が生まれるんですよ。

みんなで町の銭湯に入る「お風呂プロジェクト」。
みんなで町の銭湯に入る「お風呂プロジェクト」。

ハプニングという名の「奇跡」を楽しむ

谷:素敵ですね。そういえば私も銭湯では知らない人と自然に会話していますね。

清田:やっぱり「裸の付き合い」なんでしょうね。特に尼崎には温かい人が多いので、気さくに話をしてくれます。最近では銭湯に飽きてきて、高齢者施設のお風呂を借りたり、人の家のお風呂を借りたりしています。

谷:え! 人の家ですか?

ハプニングという名の「奇跡」を楽しむ

清田:はい。土地柄だと思いますが「困ってるなら貸すよ」という人が多いんですよ。時にはワンルームマンションの住人が貸してくれたりして「この人、よく貸してくれたな」と思うことも(笑)。

谷:親切な人が多いんですね。

清田:そうですね。お風呂に行くときは「お風呂ボランティア」というのを募集するんですが、一緒に入ったり服を畳んだりする程度なんです。でも皆さん「いいことした」みたいな顔で帰っていくんですよ。

谷:みんなが助け合うような土地柄なんですね。「月イチ現代美術館」のアイデアはどうやって思いついたんですか?

清田:障がい者の方に何かを表現してもらって、その方に対する興味を持ってもらおうと。美術館と言っていますが、表現するものは絵や書道、ダンス、楽器など、何でもありです。フラメンコを踊る人もいれば、ギターで超絶テクニックを披露する人もいます。

谷:「何でもあり」というのがいいですね。

清田:何でもありだから、何が起こるか分からない。それが面白いんですよね。一度、ピーチャワーというタイの楽器を弾ける人が来たことがあります。ムエタイの試合中、ずっと後ろで聞こえている笛ですね。その方が「楽器だけだと気分が乗らない」と言って、紙相撲のセットを持ち出し「誰かトントンしてください」と。ムエタイなのに紙相撲って(笑)。

ピーチャワーというタイの楽器を弾ける人が来たことがあります。ムエタイの試合中、ずっと後ろで聞こえている笛ですね。その方が「楽器だけだと気分が乗らない」と言って、紙相撲のセットを持ち出し「誰かトントンしてください」と。ムエタイなのに紙相撲って(笑)。

谷:面白いですね。そういうハプニングをあえて狙っているんですか?

清田:そうですね。僕は「奇跡待ち」と呼んでいるんですが、見知らぬ人どうしの交流の中から奇跡的に面白い瞬間が生まれるんですよね。すると、今まで障がい者に興味や接点のなかった人とも交流が生まれる。それが、また新しいつながりを生んで、人の輪が広がっていくんです。そういうのを狙っていますね。

谷:「奇跡待ち」っていい言葉ですね! ぜひ短歌に使っていただきたいです。一人一人の良さを生かそうとされているので、これだけ色々なイベントを思いつくんですね。障がい者の方の数だけイベントがあるというか。

清田:そうですね。あと僕が飽きっぽいというのもありますが(笑)。できるだけ誰でも参加しやすくて、障がい者の方を身近に感じてもらえるような企画を考えています。

障がいの有無を越えて共通の趣味を楽しむ「軽茶堂(かるちゃどう)」。「書道の会」や「お好み焼きの会」など、テーマはさまざま。
障がいの有無を越えて共通の趣味を楽しむ「軽茶堂(かるちゃどう)」。「書道の会」や「お好み焼きの会」など、テーマはさまざま。
みんなで詩をつくり、朗読する「詩かくよむ会」。
みんなで詩をつくり、朗読する「詩かくよむ会」。
閉店した喫茶店を借り、障がい者がカフェ店員として職業体験をする「キッサニア」。
閉店した喫茶店を借り、障がい者がカフェ店員として職業体験をする「キッサニア」。
事務所のアートは、聴覚障がいを持つ画家と近隣の子供たちが一緒にライブペインティングしたもの。
事務所のアートは、聴覚障がいを持つ画家と近隣の子供たちが一緒にライブペインティングしたもの。

押しかけて開く「ファン感謝祭」

谷:見知らぬ人との交流が生む奇跡って、面白いですよね。お風呂プロジェクトの話を聞いて、銭湯でのワンシーンを短歌にしてみました。

知らん人でした 極楽極楽と 同時に 富士の下で 言うまで

清田:うまいですね! 全然知らない人と同時に「極楽、極楽」と言ってしまったんですね。まさに奇跡。

谷:清田さんも、面白い企画をたくさん考えている方なので、いい短歌がつくれると思います!

清田:「月と風と」でも「詩かくよむ会」といって、みんなで詩をつくって読む会を開いているんですが、短歌となると難しいですね。

谷:文字数の制限がありますからね。先ほどの「奇跡待ち」という言葉がすごく印象に残っているので、この言葉を軸に考えますか。ちょうど5文字なので。

清田:わかりました。でも「何を言うか」というのが難しいですね。

谷:純粋に自分の気持ちみたいなテーマがつくりやすいと思います。どんな時に清田さんがうれしいか、どんな思いでイベントを考えているか……など。

純粋に自分の気持ちみたいなテーマがつくりやすいと思います。どんな時に清田さんがうれしいか、どんな思いでイベントを考えているか……など。

清田:ここでのイベントは、僕の中で「ファン感謝祭」をやっているイメージなんですよ。

谷:ファン感謝祭? それは面白いですね。どういうことですか?

清田:「この人を知れば、きっとファンになりますよ」という思いで、交流する場をつくっているんです。

谷:なるほど! しかも、それを人の家のお風呂でやってるんですね(笑)。

清田:そうそう、人の家や銭湯に押しかけて(笑)。

谷:「押しかけてやるファン感謝祭」っていいですね。あとは、ここに言葉を足していけば、短歌になりそうです。ファン感謝祭はどんな雰囲気ですか?

清田:いつも笑いが絶えないですね。とにかく「面白がる」というのをテーマにしているので。「ぎゃはは」と盛り上がってる感じです。

谷:「ぎゃはは」って「ハハハ」とか「フフフ」と違って、盛り上がってる感じが伝わりますね。

清田:そうですね。じゃあ「押しかけて、奇跡待ちがあって、みんなで『ぎゃはは』という感じでファン感謝祭してる」という流れの短歌にしましょうか。

谷:いいですね! それで文字数を整えましょう。

清田:はい。できました!

おしかけて しょうがない者の人と キセキまち みんなぎゃははと ファン感謝祭

谷:上の句は「何が起こるか」というワクワク感があって、下の句は盛り上がってる感じが出ていますね。

清田:伝えたいことは、全部入りましたね。たった31文字でここまで表現できるって、面白いですね。

谷:はい、短歌って本当に何でも言えるんですよ。これからも、楽しいイベントをたくさんつくって、交流の輪を広げてください。

清田:ありがとうございます。今度、お風呂を借りに行きます!

短歌を持っている清田仁之さん

  • 清田仁之さん
  • PROFILE

    清田仁之

    NPO法人「月と風と」代表。熊本県出身。関西学院大学社会福祉学部を卒業後、劇団員、会社員を経て社会福祉士に。入所施設などで勤務経験を積んだ後、「月と風と」を設立。第5回「詩のボクシング」で兵庫県チャンピオンに輝くなど、詩への造詣も深い。

  • 谷じゃこさん
  • PROFILE

    谷じゃこ

    短歌作家。大阪を拠点に、独特の視点で世の中を切り取った短歌を生み出し続けている。主な著書に『ヒット・エンド・パレード』、短歌で遊ぶフリーペーパー『バッテラ』や短歌zine『めためたドロップス』など。

    ホームページ「鯖レター」:http://sabajaco.com/
    公式Twitterアカウント:@sabajaco

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