2018/03/16

「沼にハマるのは楽しい!?」谷じゃこの短歌ええやん!第7回

「沼にハマるのは楽しい!?」谷じゃこの短歌ええやん!第7回

テキスト:トライアウト・福井英明/撮影:トライアウト・田村朋子

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

大阪を拠点に活躍中の短歌作家・谷じゃこさんが、面白い仕事をしている人と自由気ままに短歌をつくるコーナー。最終回のゲストは下町風情が残る大阪・昭和町でレンタルスペース&カフェ「昭和サロン」を営む白谷直也さん。心地よくジャズが流れる空間にサイフォンで淹れたコーヒーの香りが漂い、レトロな雑貨や鉄道グッズがセンス良くインテリアを飾る……そんな、想像するだけでワクワクする場を提供する白谷さんの「人生の楽しみ方」とは?


新しいことにハマるのは、大変なのになぜか楽しい

谷じゃこ(以下、谷):今日はよろしくお願いします。とても雰囲気の良い空間ですね。

白谷 直也(以下、白谷):ありがとうございます。自分の好きなものばかり集めたら、こうなりました。

谷:オープンされたのはいつ頃ですか?

白谷:レンタルスペースは5年前くらいですね。もともと私の両親が始めたんです。そこにカフェを併設したのが2016年の11月。

谷:ご両親が始められたんですね。じゃあ、ここはもともとご実家ですか?

白谷:いえ。実家は隣なんです。ここはずっと空き家だったんですが、10年くらい前に両親が譲り受け、5年くらいかけてリノベーションしたんですよ。

「沼にハマるのは楽しい!?」谷じゃこの短歌ええやん!第7回-画像-01

谷:すごいですね! 白谷さんもご一緒に?

白谷:いや、私はその頃、別の場所でフリーのデザイナーをしていました。両親から「ここに住め」っていわれたんですが、断ったら「じゃあ、何か別のことに使う」といってレンタルスペースを始めたんですよ。

谷:デザイナーだったんですね。どうりでインテリアがオシャレだと思いました。ここでカフェを始めたきっかけは何ですか?

古い化粧品の看板、古いラジカセ、レコード、カメラなどが店内にはインテリアとして並ぶ
古い化粧品の看板、古いラジカセ、レコード、カメラなどが店内にはインテリアとして並ぶ。

白谷:だんだんデザイナーの仕事がしんどくなってきて「もう好きなことをしようかな」と。それで、このスペースのことを思い出したんです。ここをみんなで楽しめる場にしようと。

谷:この辺りは住宅街なので、ちょうどいいですよね。

白谷:そうですね。私も子供を持って感じたのですが、小さい子供を連れて入れるお店って少ないんですよ。ここなら畳のスペースもあるので、安心してくつろげると思います。

谷:コーヒーを淹れるのは昔からお好きだったんですか?

白谷:いや、カフェのために勉強しました。同じように淹れても日によって味にバラつきが出るので、最初は失敗の連続でしたね。何百回と淹れ続けて、やっと味が安定してきたかな。

谷:サンドイッチなどもメニューにありましたけど、料理も勉強されたんですか?

白谷:はい。妻に教えてもらって。これも必死に繰り返しましたね。妻は「こんなこともできないの!?」という感じでしたけど(笑)。

谷:努力家ですね! 何でもやり始めたら突き詰めるタイプですか?

白谷:そうかもしれませんね。昔からいろいろと新しいことにハマるのが好きだったので。ハマると大変なのは分かっているんですが、それが何か楽しいんですよ。

コーヒーを淹れる白谷直也さん

自分が好きな物は最初からオープンに

谷:ここに入ってからずっと気になっていたのですが、鉄道グッズがたくさん飾られていますね。電車がお好きなんですか?

白谷:そうなんです。昔からですね。

鉄道グッズ

つり革

谷:いいですね。このつり革とか、どこで手に入るんですか?

白谷:確かこれは、子供の頃に鉄道用品の即売会みたいなのがあって、そこで買ったような気がします。

谷:そんな昔から持っていたんですね! それが今、こうしてお店の雰囲気づくりに生かされてるって、すごいですね。

白谷:はい。ずっと温めていたものが、やっと日の目を見た、という感じです。家に飾っていても、一人で見てニヤニヤするだけなので……

「沼にハマるのは楽しい!?」谷じゃこの短歌ええやん!第7回-画像-06

谷:こうやって飾っていると、鉄道ファンが集まってくるんじゃないですか?

白谷:それも狙って飾っています。まだデザイナーをしていた頃、事務所に出入りしていた業者さんが僕の電車の模型を見て「私も鉄道好きなんです!」と話が盛り上がったんです。その時に「自分が好きなものは最初からオープンにしておこう」と思ったんですよ。そうしたら、好きなものどうしが自然と知り合うきっかけになるな、と。

谷:素敵ですね。それまではあまりオープンにしていなかったんですか?

白谷:昔は鉄道ファンって何となくオタクのイメージがあったので黙ってたんですよ。もったいないですよね。

谷:そうですね。私も好きな短歌を自分からどんどん発信することで、短歌好きな人とのつながりがたくさんできましたから。

「沼にハマるのは楽しい!?」谷じゃこの短歌ええやん!第7回-画像-07

白谷:ここでも月に1回、鉄道好きが集まる会があって、最近は20人くらい集まりますね。中には現役の車掌さんも(笑)。

谷:すごい! プロじゃないですか。

白谷:もともとは奥さんがランチを食べに来てくれていたんですが、店の飾りを見て「うちの旦那、車掌だから今度連れてくる」と。

谷:そういう形でつながりが広がっていくのって素敵ですよね。

白谷:はい。同じ趣味の人どうしの会話って本当に楽しいんです。純粋に「好き」という話が延々と続いて、ネガティブな話なんか一切出ないですからね。

谷:いいですね。だから好きなグッズでお店を飾られているんですね。

白谷:はい。自分の好きなものは最初から出しておこうと。そうしたら、それを見た人が自然に声をかけてくれて、つながりができるんです。

谷:みんな表には出さなくても、同じ趣味の人を求めているんですよね。

沼は沼を呼ぶ?

谷:今日はレンタルスペース&カフェに来るということで、「カフェ」をテーマに短歌をつくってきたんですよ。

コーヒーを ひとくち飲んで 小説を開く しずかな窓辺の席に

白谷:すごい。ここに来たことのある人がつくったような歌ですね!

谷:本当ですか?

白谷:ここに来るお客さんて、みんな自分でちょうど良い場所を見つけて座られるんですよ。一人で読書をされる方は、本当にこの窓辺に座るんです。

谷:そうなんですね。白谷さんは趣味が幅広そうなので、短歌にできそうなテーマも多いんじゃないでしょうか。

白谷:難しいですね。詠んだことがないので。

「沼にハマるのは楽しい!?」谷じゃこの短歌ええやん!第7回-画像-09

谷:まずは、詠む内容から考えるといいですよ。例えば「いろいろな人が集まって、たくさんの会話が生まれて楽しい」や「鉄道グッズのことで話が弾んでうれしい」など。あとコーヒーを淹れている姿が素敵だったので、コーヒーがコポコポなっている感じを歌にしてもいいですし。

白谷:なるほど。いろいろなことにハマってきたので、迷いますね。

谷:そうですね。その「何にでもハマって、それを楽しむ」という白谷さんのスタンスを歌にしてもいいかもしれません。

白谷:実は僕の中でそれを「ニコニコしながら沼に足を入れる」といっているんですよ。沼なので抜け出せなくなるけど、それを分かった上で入る沼って楽しみなので。

谷:すごく素敵な表現じゃないですか! 「ニコニコしながら沼に入る」って、ぜひ入れたいですね。ちなみに今までハマった「沼」は、鉄道、コーヒー、レトログッズ、DIYなどでしょうか。他にどんな沼があるんですか?

白谷:バイクやプラモデルにもハマりましたね。あと「Mac」でしょうか。

谷:Mac? マッキントッシュですか?

白谷:そうです。一時は100台くらい持っていましたから。今も80台くらい残ってると思います。

白谷さんが見せてくれた、Macコレクションのうちの一台
白谷さんが見せてくれた、Macコレクションのうちの一台。

谷:え! すごい話が出てきましたね。それはデザイナーをしていたからですか?

白谷:そうですね。昔、デザインを教えてくれた人から「自分の仕事道具は自分でメンテナンスできないとダメだ」といわれたんです。それで部品を調達するためにジャンク品を買い集めていたら、100台くらいになってしまいまして……

谷:やっぱり、ハマると抜け出せなくなるんですね(笑)。じゃあ「ニコニコしながら沼に入る」の前に、今までハマった沼を並べる形の短歌にしましょうか。

白谷:そうですね。Mac、鉄道、バイク、コーヒーあたりですね。文字数を合わせるのが難しいですね。

谷:例えば「から」などを付け足して「Macから鉄道、バイク、コーヒーも」みたいにすれば、上の句になりますよ。「沼に入る」も、例えば「踏み入る」などにいい換えると、ちょうど良い文字数にできます。

白谷:なるほど! さすがですね!

MACから 鉄道バイク コーヒーも にこにこしながら 沼にふみ入る

谷:できましたね! 「沼」というキーワードが出てきたのがいいですね。「ニコニコ」と「沼」の対比も面白いです。

白谷:ありがとうございます! 自分で短歌がつくれるなんて。

谷:この先、また新たな沼が増えていくのかな、と思うと楽しみですね。

白谷:そうですね。今度、みんなの沼を告白しあう会をやりたいですね。沼は沼を呼ぶので。

谷:「沼は沼を呼ぶ」という表現も面白い(笑)。「類は友を呼ぶ」みたいですね。あと、Macの展示会もやりましょう! 整理するの大変そうですが……

白谷:わかりました! もう一度、Macの沼に足を踏み入れてみようと思います!

「沼にハマるのは楽しい!?」谷じゃこの短歌ええやん!第7回-画像-12

  • 白谷直也さん
  • PROFILE

    白谷直也

    デザイナーだった両親の影響で自身もデザインの道に進む。印刷会社のデザイナーなどを経てフリーランスに。2016年11月より、両親がレンタルスペースとして運営していた昭和サロンに併設されたカフェのマスターに。料理担当の妻とともに店を切り盛りしている。

    昭和サロン レンタルスペース&カフェ
    http://www.informe-siro.com/showa-salon.html

  • 谷じゃこさん
  • PROFILE

    谷じゃこ

    短歌作家。大阪を拠点に、独特の視点で世の中を切り取った短歌を生み出し続けている。主な著書に『ヒット・エンド・パレード』、短歌で遊ぶフリーペーパー『バッテラ』や短歌zine『めためたドロップス』など。

    ホームページ「鯖レター」:http://sabajaco.com/
    公式Twitterアカウント:@sabajaco

関連記事


この記事はいかがでしたか?
よろしければアンケートにご協力ください。

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますのであらかじめご了承ください。

TOPに戻る