週の半分は出張!ローランドゴリラ(印刷会社/営業)の場合「オタ女子おしごと百科」第3回

2018/06/08

WRITER劇団雌猫

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週の半分は出張!ローランドゴリラ(印刷会社/営業)の場合「オタ女子おしごと百科」第3回

「いつもオタク現場にいるあの人、一体なんの仕事をしているんだろう?」

ソシャゲに延々お金を注いだり、推しているアイドルのツアーに合わせて全国を飛び回ったり……。すべてを惜しみなく推しに注いでいる彼女たちはいったいどんなお仕事をして、時間とお金をやりくりしているの?

この連載では、劇団雌猫が、日々趣味と仕事の両方にいそしむオタク女子たちにインタビュー。「仕事とオタ活の両立」の工夫や、知られざる「オタ活に向いた仕事」をひもといていきます。

今回は岐阜県の印刷会社で営業として働く、ソーシャルゲーム重課金勢のローランドゴリラさん。漫画や映画宣伝に欠かせない販促物の企画提案を行うなど、忙しい日々を送っています。地元と東京を行ったり来たりの暮らし、どのようにオタ活を行なっているのでしょうか?

【本日のゲスト】

  • ローランドゴリラさん
  • ローランドゴリラさん(29歳)

    印刷会社の営業部で働くマルチなオタク。観劇・商業BL・読書など様々な沼を経験したが、数年前に「THE iDOLM@STER」で初めてのキャラ萌えに目覚める。現在は「アイドルマスター SideM」の若里春名Pとして、プロデューサー活動にも精を出す日々を送っている。

一人出張先で過ごす夜、寂しさのあまり初課金

――ローランドゴリラさんのお仕事は岐阜県にある印刷会社の営業ということですが、具体的な業務内容を教えていただけますか?

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ローランドゴリラ:印刷会社というとチラシや同人誌の製作などでみなさんも使用されたことがあるかもしれませんが、私の勤める会社はプラスチックへの印刷を得意としていて、主力商材はクリアファイルです。本社は岐阜県なのですが、担当するクライアントに出版社などエンタメ系が多いため、週のほとんどは東京に来ています。1週間のうち、だいたい4日は東京にいますね。

――ええっ。週の半分以上も! それだけ日数が長いと、いっそ東京に赴任ということにはならないんですか?

ローランドゴリラ:昔は赴任していた営業担当もいたみたいなんですけど、いろいろあったらしく……(笑)。今は「全員出張のみ」というヘビーな制度です。

――かなりハード! ほぼ2拠点生活ですね。

ローランドゴリラ:エンタメ系の販促物っていつ必要になるか読めないことも多いので、日頃から東京に足を運んで、各社の宣伝担当さんとの信頼関係を構築しておくのも重要な任務のひとつです。「3泊4日で東京出張、残り1日は本社勤務」の生活も新卒時代は大変でしたが、5年続けているうちにすっかり慣れました。平日・休日のスケジュールはこんな感じです。

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※バンドリ……ソーシャルゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」の略称。

――平日でも、本社勤務時と出張時はタイムスケジュールがかなり違いますね。出張時の方が忙しいと思いきや、何気にソシャゲタイムが多い。

ローランド:移動が多いので(笑)。当然ですが、東京では外回りがほとんどですね。商談は午前中に1本、午後に2~3本を目安で入れるようにしています。うちは最小ロットが数万個~といった大きめの案件しか受けていないので、一つひとつの打ち合わせがすごく重要です。街中で自分の担当した印刷物を見ると結構うれしいですよ!最近だと、全国公開された某怪獣映画のPRグッズを製作しました。

――キャリアウーマンだ! 東京では夜もアクティブにオタ活を……?

ローランド:就職した当初は「せっかく経費で東京に来ているのだから」とかなり予定を詰め込んでいました。観劇が好きなので「野田地図」や「劇団☆新感線」、下北沢の小劇場作品まで、仕事終わりに観まくっていましたね。でも2年くらいするとスケジュール管理に気を使うのがしんどくなってしまって……今はホテルの部屋にこもりっきりです。

ーー「経費で東京出張なんてうらやましい!」と思っていましたが、現実はハードですね。

ローランド:ホテルでは漫画を買ってきて読むことも多いです。漫画は学生時代からずっと好きで、今でも月に15冊くらいは買いますね。最近だと『ゴールデンカムイ』や『ヴィンランド・サガ』にハマっています。そうだ! 実は私、以前コミティアでデビュー前の米代恭さんの同人誌を買ったことがあるんですよ(笑)。

――すごいレアものじゃないですか! 米代さんには劇団雌猫も『浪費図鑑』の表紙でお世話になっております。じゃあホテルではもっぱら漫画三昧の生活ですか?

ローランド:2016年ごろまではそんな生活を続けていたのですが、とある疲れ果てた日の夜、さびしさのあまりソシャゲに初めて課金してしまいまして。勢いで5000円分のガチャを回したのですが、それが楽しくて楽しくて! 数ヶ月後には、3年間コツコツ貯めた貯金を切り崩し、月に30万円ソシャゲに課金する女に……。

――つ、月に30万円!?

私の社会人生活を大きく変えてしまったゲーム、それは……「アイドルマスター SideM」です。

――「アイドルマスター SideM」! 女性アイドル育成ゲームとして有名な「アイマス」の男性アイドルバージョン、通称「Mマス」ですね。プレイヤーが事務所のプロデューサーになって、いろいろな事情を抱えた男の子たちをアイドルとして育成でき、一気に大家族の母気分を味わえると聞いています。ローランドゴリラさんの本業はアイドルPだったのか……。

ローランド:週の大半を東京の空の下で過ごすうち、いつしかプロデューサーとして精力的に活動するようになっていました。担当は「High×Joker」のドラマーで18歳、若里春名くんです。メンバー内最年長の元気系キャラで、皆に頼られてるからこそ、自分をないがしろにしてしまうところがあり……。自己肯定感が薄い彼をプロデュサーという立場で支えなければ、という使命感に駆られます(笑)。「Mマス」(同ゲームの略称)は声優さんが出演するリアルライブもあるので、ハマってからは「CDを積む」「現場に行く」「ファン同士交流する」など、それまでにしたことのなかったオタク活動を、生まれて初めて経験することができました。正直今、めっちゃ楽しいです! 今の平均課金額は月に6万円くらいでしょうか。「Mマス」にはカードのトレード機能があるので、他の類似ソシャゲのように大金を注ぎ込んでいる方はかなり少ないイメージです。

▼アイドルマスター SideM 公式ホームページ
http://imas-sidem.com/character/

――アイマスシリーズはファン同士の交流も盛んなんですよね!

ローランド:「P(プロデューサー)名刺」というアイマス現場ならではのグッズがあって、ファン同士が名刺を交換し合うんですよ。印刷会社勤務という職業柄、「このプロデューサーさん良い特殊紙使ってるな〜」「原価が高そうな名刺だな」などついつい素材のことが気になっちゃいますね。

#みなさんのプロデューサー名刺見せてください

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現場でファン同士交流するようなジャンルは「Mマス」が初めてだったのですが、営業をやっているということもあり、人と関わることが好きなので全然苦じゃないですね。逆に営業の血が騒いでグイグイ行きすぎてしまい、引かれてしまっていることもあるかも……。ソシャゲは舞台や漫画のように1人で楽しむ趣味といったイメージがありましたが、「Mマス」はプロデューサー仲間で集まってワイワイ楽しめるジャンルだなと感じています! 金曜日に出張が重なっているタイミングでは土日もそのまま東京に残ってプロデューサー仲間と会ったり、ライブに行ったりしています。

――営業スキルが活かせる現場、それが「Mマス」

オタク趣味。面接では隠し、入社したら晒すべし

――新卒入社から5年目。就職活動の時はどんな業界を見ていたんですか?

ローランド:「多くの業界とかかわる仕事」「ものを作る過程が見ることができる仕事」の二つを満たす業界がいいなと思い、印刷業界一本に絞っていました。でも大手の印刷会社には軒並み落ちてしまって。就職活動を続けていたある日、今の会社のホームページを見ていたらピンと来て、その場で代表番号に電話しました。「面接してますか?」って(笑)。そのまま面接のアポを取り付けて、トントン拍子に採用されたんですけど、めちゃくちゃイレギュラーですよね。決まった時期も他の就活生と比べてかなり遅かったです。今思うと最初から絞らずに数を打っておいた方がよかったかなと思いますね。

――就活生の頃から営業の才能があったわけですね……!  面接ではどんなお話をされたんですか?

ローランド:大学時代に頑張っていた演劇部の話をメインでしてました。役者と照明をしていたので、チームワークをどう意識していたかとか。この時点では、あえてオタク趣味は出さないようにしていました。採用されてからどこに配属されるかなんて分からないですから、入社前から「あの会社を担当したい」「こういうことをやりたい」を言い過ぎると、視野の狭い使いにくい新人だと思われそうで。どの業界でもそうかは分からないですが、少なくとも私は「自分がオタクであること」を面接で武器にしなくて正解だったなと思います。

――確かに就活中は自分のアピールに必死になってしまうこともありますが、面接官の気持ちになってみると「一緒に働きやすそうだな」と思える相手であることが一番大事なのかもしれませんね。その後入社してからもオタク趣味は隠していたのでしょうか?

ローランド:いえ、入ったらこっちのものですから(笑)。特にアピールしまくったわけではないですが、自然とみんなに知られるようになっていきました。というのも、うちの会社はオタクがほとんどいないんですよ。エンタメ系の商材を扱うことも多いのに! 私が入社した時には正社員が60人くらいいたのですが、なんと女のオタクは私が初めてでした。便利そうだと思ってもらえたのか、先輩社員達から「XXX社さんのこの漫画はどんな風に人気があるの?」なんて質問が来るようになりました。「女オタク向けコンテンツについてはこいつに聞いておこう」みたいな空気ですね。そういう空気が作れれば、好きな仕事はすごく取りやすくなります。とあるBL系の編集部さんを担当したかった時には、「使える」と思ってもらえるよう、担当者に積極的にアドバイスに行ったりもしました。

制作物を世に送り出すワクワクがモチベーション

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――ローランドゴリラさんの今のお仕事で、オタク趣味とマッチしている点やオススメできる点はありますか?

ローランド:まず第一は、好きなコンテンツの「まだ誰も見たことのない、世に出る前のデータ」を見ることができるところでしょうか。さらに見るだけでなく、制作時に込められたクリエイターさんの思いを知ることもできる。「もう少し華やかなイメージにしたいので背景の色味はこんな風に出力したい」などのご要望をいただくことはもちろんですし、商談の中で自分の意見を出させていただくことでデザインが変わっていくこともあります。まだ世の中にないものを表に送り出していく感覚はとても快感ですね。そして印刷物という特性上、街中でその成果を見ることができるのも楽しみの1つです!

――たしかに、PCやスマホの画面でしか見られないものと違って、街中やイベント会場などで実際に手に取れるものを生み出す喜びは大きそうですね。仕事をする上で気をつけていることはありますか?

ローランド:これはオタクなら得意なことだと思うのですが、「集中力がある時にガッとやる」ですね。オタクって、好きなことにはガッとのめり込むじゃないですか(笑)。見積もりやサンプル提出など、早ければ早いほどお客様は喜んでくださるので、何事も後回しにせずに一気にやってしまうことを心がけています。個人の裁量が大きい仕事なので、集中して先にやってしまえば後は自由時間にすることもできます。さっさと仕事を済ませてソシャゲしましょう。

――頑張れば頑張るほど好きなことが出来る環境はモチベーションになりそうですね! ローランドゴリラさんがお仕事にも趣味にも全力投球されている理由が分かった気がします。

ローランド:エンタメコンテンツを日々享受しているものとして、作り手側のこだわりや想いに触れられる仕事環境は本当にありがたいですね。担当(※)にもありがたく課金できるというものです。作り手側への尊敬の気持ちがある分、お客さまの工数を無駄にしてしまうというか、作り直しをさせてしまうようなミスは本当に嫌ですね。そこは日々気をつけています。

※「アイマス」シリーズのプロデューサーは思いを注ぐアイドル(キャラクター)を「担当」と呼ぶ。

――愛があるからこその仕事人魂、かっこいいです! それでは最後に読者の方に一言メッセージをお願いします。

ローランド:仕事がしんどい時って本当にたくさんあると思うんですけど、稼いだ分だけ好きなものにお金使えますから。皆で頑張って経済回していきましょう!

――やる気の出るお話だ! これからも一緒に経済回しましょう。本日はありがとうございました〜!

★ローランドゴリラさんの主な浪費

「他人にとっては無駄に見えるかもしれないけれど、本人にとっては真剣で愛のあるお金の使い方」それが、劇団雌猫の定義する「浪費」です。さて、ローランドゴリラさんの愛ある「浪費」は……?

1)ソーシャルゲーム(月6万円) : 「Mマス」で担当イベントやガチャがきたら惜しみなく回します。以前使いこみすぎてカード会社から不正利用の問い合わせがきたことがあり、現在はさすがに反省し利用限度額設定をしています。が、必要とあらば外します。

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2)漫画(月2万円): 漫画は商業BLから少女漫画まで幅広く、基本は作者買いとジャケット買いをしてます。『BANANA FISH』復刻版、ありがとうございました! 買いました!

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3)飲み会代(月4万円) : 新しい出会いに飢えてるので、誘ってもらえれば基本断らず飲みにいきます。仕事の話はもちろん、他ジャンルの友人の話を聞くことも刺激になって好きです。

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定時上がりで平日も舞台観劇!


(メインイラスト:kamochicさん)

  • 劇団雌猫
  • プロフィール

    劇団雌猫

    平成元年生まれのオタク女子4人組。「インターネットで言えない話」をコンセプトに、オタク女子たちが胸のうちを告白した同人誌「悪友」、その書籍化となった『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(小学館)が話題。20〜30代女性の幅広い共感を得ている。

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