『はじめてのサウナ』の編集者はなぜ「タモリ倶楽部」に出てるのか?サウナで聞いてみた

2018/06/12

WRITER取材・テキスト:Zing!編集部 ピーター/撮影:野田真

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『はじめてのサウナ』の編集者はなぜ「タモリ倶楽部」に出てるのか?サウナで聞いてみた

2018年現在、サウナブームが到来。マンガ『サ道』『湯遊ワンダーランド』などが話題になり、筆者自身も含め、筆者の周りでもサウナにハマる人が増えてきています。
そのうちの一人が、リトルモア加藤さん。出版社リトルモアの編集者で、『はじめてのサウナ』という本もつくられています。

リトルモア加藤さんはテレビ番組「タモリ倶楽部」やラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」に出演するなど、前に出る編集者でもあります。

・加藤さんが考える、今の時代の本の売り方とは?
・なぜ加藤さんは何かと「サウナに入れ」と言うのか?

それが気になり、本人に聞いてみることにしました。
お話を伺っていくと、サウナと本への思いが意外な形でつながっていきました。

『はじめてのサウナ』は「心と体の地図のない旅」に出るための本

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――加藤さんが編集された『はじめてのサウナ』ってどういう経緯で生まれたんでしょうか?

まずマンガ家のタナカカツキさんと『水草水槽のせかい すばらしきインドア大自然』という本を5年ぐらい前につくったんですね。その本の打ち合わせをしてると、水草水槽の話が2、残りの8はずっとサウナの話になってて(笑)。ちょうどそのときタナカさんがサウナ・スパ協会公認のサウナ大使になられて『サ道』も出したタイミングで、みんなに「サウナいいよ、いいよ」って言ってたんです。当然、僕にもいいよいいよって。

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――さすがサウナ大使ですね。加藤さんは、タナカさんから初めてサウナを勧められたときはどんな印象だったんですか?

タナカさんに限らず著者が良いって言っているもの、興味を持っているものはやってみることにしてるんです。初めはそんなにいいかな?って感じだったんですが、東京・荻窪の「なごみの湯」に何回か通っていたら、あるときバッキバキに「ととのった」ことがあって!

――バッキバキ(笑)。出ましたね、「ととのう」。私もpha さんの本『ひきこもらない』を読んで、初めて「ととのった」んですよね。念のため「ととのう」について説明してもらってもいいですか?

簡単に言うとディープリラックスした状態のことですね。瞑想状態に近い。僕の場合、音や光とか風の動きがクリアに入ってくる状態になりますね。森林浴したような、めちゃくちゃ気持ちいい感じです。

――なるほど、分かります。私も、空に上がっていくのと下に沈む感覚が同時に来ましたね。やるまで分からない感覚ですよね。

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「ととのう」について分かりやすく説明するのは難しいですね。サウナ、水風呂、外気浴の順番はプロトコル(儀礼、決まり)としてはあるけど、何分サウナや水風呂に入ったらいいという決まりはない。個人差があると思います。でも、そこがすぐ分かっちゃったら面白くないんじゃないですかね? 『はじめてのサウナ』の背表紙にはタナカさんの「心と体の地図のない旅=サウナ」ってことばが書いてあるんですけど、これがとてもいいと思ってて。マニュアルをなぞることではなく、探していくというのが面白いんじゃないかな。

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――女性のための指南本、を企図されたとのことですがマニュアルというよりは地図のない旅に出るための動機づけ、という感じなんですかね。

味のある本になったんじゃないかと思います。一回読み通してすぐ全部が分かるんじゃなくて、経験が重なってくると面白くなってくる本だと思います。

サウナで女性の興味はほとんど満たされる?

――女性をターゲットにしたのはどういう理由からですか?

おじさんは黙っててもサウナに行きますからね(笑)。まだこっち(サウナ好きの世界)に来ていない人にも魅力を伝えたかったんです。例えば、「BeauTV ~VOCE」をよく観たり(僕も好きでした!)、『CLASSY.』『美的』を読んでたりする女性ですね。

――人によって「ととのう」に対する語彙は違ってくるでしょうね!

そう思います。イラストを描かれた、ほりゆりこさんに初めて「ととのった」感想を聞いたら、「私が水で水が私か分からなくなった」と。なに言ってるんだろうと思いましたけど(笑)。そういう他の人の体験聞くのも面白いですね。僕の場合サウナにハマってからは、仕事中に「ととのいたい」「サウナ行きたい」と独り言を言って同僚に怖がられてました。おしゃれなコスメ・メーカーがつくった白樺の香りのクリームがあるんですけど、ある日タナカさんが「サウナの香りがする!」ってくれて、それを鼻の下に塗ったり、ロウリュを感じられるいい香りのルームスプレーを会社に撒いたり……。

――すごい……ハマってない人からしたらわけ分からないかもしれませんね(笑)。

でも、香りで気分変えるって、女性は普段からやっていることではありますよね。肌も整うし、香りも良い。つまり、ほとんどサウナですよね、美容って。

――よく考えるとちょっと何言ってるか分からないですけど、感覚的には分かるような気がします。

僕は、サウナは女性が興味のある要素しかない、っていつも言ってるんです。この本にも「熱と水だけのオーガニックコスメ」って書いてあるんですけどね。お肌がつるつるになるし。僕なんかつるつるすぎて「ホワイトボードみたい」って言われてるんですから(笑)。この本で知り合ったサウナ好きの人、サウナの仕事に関わる人はみんな肌がきれいなんですよ。

――そういえば、加藤さんは人に相談とかされると「とにかくサウナに行け!」って返すみたいですけど、それってどういうことですか?

半分冗談なんですけど(笑)。意図としては、そうだな……例えば会社の会議で、ペンディングになりそうな案件が出てきて誰かが「考えときます」って言うことがあるじゃないですか。

――ありますね。

でも、大抵考えないんじゃないんかな。でもそれが禍根を残すことになって、「あのときちゃんと考えておけばよかったな」となることもあると思うんです。サウナはパソコンもスマホも持ち込めないし、考えるしかない空間なんですよ。「考えときます」に向き合うタイミングになる。少なくとも僕にはそういう経験がありました。

――なるほど。瞑想に近い部分がありますよね、サウナは。

スマホを見ないようにしても実行できる人って少ないと思うんです。仕事場でも同僚に話しかけられたり、メールが飛んできたり。一人で考える時間をつくるのは難しい。でもサウナだといろいろなことを考えられる。それにじっとしているから自分の体に集中するようになって「あ、いま変な姿勢しているな」とか、自分に注目せざるを得なくなるんですよね。だからサウナというのは孤独になって自分を見つめられる体験なんじゃないかとも思います。

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リトルモア加藤はなぜ『タモリ倶楽部』に出るのか?

――では続いて、加藤さん自身が編集者としてどういう風に本をつくり、売っていこうとしているのかを聞いていきたいと思います。加藤さんはテレビ番組『タモリ倶楽部』やラジオにも最近良く出られるようになってますね。『はじめてのサウナ』でも、ご自身で本について語る動画をYouTubeに上げていますね。

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Youtubeは本当はタナカさんに出てもらいたかったんですけど、なぜか僕が出ることになって(笑)。いろんな媒体に会社の広報が本を広めに行くんですが、みなさんは当然著者の方に話を聞きたいんですよね。でも、著者の都合が合わないと「リトルモア加藤というのがいるんですけど……」ということで僕が出る。

――そんな経緯だったんですか! そういえば、そもそもどういう経緯で「タモリ倶楽部」に出ることに?

モルとムギという捨て猫が荒汐部屋という相撲部屋で力士たちと暮らしていることを知って、『荒汐部屋のモルとムギ』という写真を一年ぐらいかけて取材してつくったんです。それがほぼ同時に他の出版社からも同じような内容・判型で写真集が出ることが分かって……。その経緯を知った「タモリ倶楽部」のスタッフから「まだ企画にする前の予備調査」ということで質問や出演の打診が電話でありました。そのとき実現するなんて思ってないからテキトーに答えて頷いていたら、番組の企画が通っちゃって、他の出版社の編集者と一緒に出演することになって……。荒汐部屋のおかみさんも同席してもらい、なるべく和やかな雰囲気でやるようにお願いはしました。

荒汐部屋のモルとムギ (amazon.co.jpより)

――番組を観て、絶妙なバランスで事実の伝達と主張をされていたな、と思いました。その反響もあって2回目のお誘いもあったようですね。

そうですね。「タモリ倶楽部」に出てる人が書店に来ますとか、ラジオに出ますとなると本のアピールにもつながるかもなって。しゃべる機会をくれるのはありがたいです。

本の生命力は信頼に値する、でもできることはやりたい

――そういう風に編集者として前に出ていくのは、どういう思いからなんですか?

本が好きだから、本だけの力で多くの人に手にとってもらえればそれに越したことはないんです。編集者が前に出ようが出まいが、生き残る本は生き残るんです。でも、情報の多い時代ですから、良いものでも埋もれてしまうこともある。だからテレビ番組でもラジオでも、できることは自分にできることはやりたいと思っています。

本読むってこういうことだった、こんなに楽しいことってあるんだなという体験が最近ありました。アメリカの作家、ジョン・ウィリアムズが書いた『ストーナー』という小説の翻訳版で、原書は1965年に出版されています。ストーナーという英文学科の教授について描かれてあるんですが、倒れるぐらい地味な内容です。でも大変美しい小説で、細かい心模様の描写を読むだけでも楽しい。アメリカでは一部の愛好家に受け入れられたけど、ほぼ忘れられていたんです。でも、06年に復刊されて、そのあとフランスで翻訳されて火がついて、オランダ、イタリア、イスラエルなどでもベストセラーになり、半世紀以上経て日本でも出版されたんです。こんなふうに、本の生命力っていうのはすごく信頼に値するものだと思うんですよ。

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――「本の生命力は信頼に値する」っていい言葉ですね。『ストーナー』の作者はサウナで「ととのった」のかというぐらい、世界をクリアに認識できてたのかもしれませんね。それだけ微細な描写ができるというのは。

それが言いたかった(笑)。ジョン・ウィリアムズはサウナに行っていたのかもしれない。

――本の面白さ、読むと発見があるというのは他には得難い経験ですよね。私たちがやっているWebメディア、ソーシャルゲーム、SNSなど、多くの人が情報に取り囲まれて時間がないですよね。そんな時代に本をつくる・売る面白さって何なんでしょうか?

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どうでしょうね。僕は、本は「やさしくなっていかないといけない」と考えています。これを読んだらこうなれるっていう即効性と本ってあまり相性がよくないと思うんです。Zing!みたいなWebメディアの方に言うのもなんですけど、Webの情報はさっと読んで自分に役立つところをピックアップしていくと思う。本は何十年後かに効いてくるとか、そういうもので、劇薬ではない。やさしく何かを言う、といいますか。

――いや、まったくその通りだと思います。即効性はWebのほうが今は得意ですよね。Zing!はあんまり即効性はないかもですけど……。

本は時間をマイルドにするメディアなのかなと思っていて、今は過渡期にあるかもしれないですね。Webの文章に影響されたような、過激な本が売れています。やさしい方がいい、劇薬がいい、とかじゃなくてWebや本の中でも棲み分けていくのかなと思っています。

――時間をマイルドにする、というのはよく分かります。読書のように孤独になれる体験・瞬間って意識しないと日常にはなかなかないですね。サウナもそうかもしれないですけど。

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本は孤独になるためのアイテムかもしれないですね。Webメディアの分かりやすさや、早く届く部分に憧れというか焦りもあります。でも本をつくる以上は異常者でいないと、非常識でないといけないなと思っています。そうやって面白い本をもっとつくっていきたいと思います。

――読書の体験、本というものが人間に残されてないとまずいな、という気もしますね。これからも面白い本期待してます! 最後に何かお伝えしたいことがあればお願いします。

『はじめてのサウナ』をぜひよろしくお願いします。また、リトルモア加藤にご用命のあるかたは連絡してください! サウナ以外にもワインのことも話せます (笑)。お待ちしております!

――今日はありがとうございました!

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『ムーミン』の登場人物、スナフキンがかぶっているハットもサウナハットらしきものだそうです。



Information

リトルモア加藤さんが編集された、『はじめてのサウナ』(リトルモア)は好評発売中です!

はじめてのサウナ (amazon.co.jpより)

取材にご協力いただいた、「スカイスパYOKOHAMA」はドライサウナや、横浜の絶景を眺めながらお風呂に入れるヨーロッパ・スタイルの本格的スパ&サウナ。
サウナでととのいたくなった皆さんは、ぜひこちらへ!

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サウナ「ボナサーム」(女性)

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フィンランド式サウナ(男性)

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「スカイスパYOKOHAMA」
〒220-0011横浜市西区高島2-19-12スカイビル14F 
https://www.skyspa.co.jp/
TEL:045-461-1126

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https://eonet.jp/health/articles/2017/0511.html

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