漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった

2018/10/02

WRITERZing!編集部 ピーター

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった

お笑いコンビ「シャンプーハット」こいでさんの初の漫画『パパは漫才師』が書籍化。ほっこりとする家族・子供たちとの関係が描かれています。今回、原稿制作真っ只中の現場にお邪魔し、こいでさん、アシスタントのお笑いコンビ・蛙亭の中野周平さん、ピン芸人・森本大百科さんにお話を伺いました。

お話を聞いて分かったのはこいでさんが「人をポジティブに見る」特長の持ち主だということ、そして漫画を売ることの難しさ。こいでさんのような切り口が漫画表現をまた面白くしていくでしょうし、読者もどんどん増えていって欲しいと感じました。


パパは漫才師 (1) (サンデーうぇぶり少年サンデーコミックススペシャル)

『北斗の拳』学んだ「根っからの極悪人はいない」こと

――『パパは漫才師』読ませていただき、大いに笑わせてもらいました。ご自身の漫画が本になって、どうですか?

最初から本を出すのを目指してWeb連載を始めたんですけど、実際にモノを見るまでは「ホンマにつくるんか?」ってのもありましたしね。やっぱり嬉しいですね。

漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった-画像-01

――ご家族も読まれてるんですか?

読んでるはずなんですけどね(笑)。うちの家族はみんな照れ屋なんで、何も言ってこないですね。

――きっと喜んでるのではと思います! こいでさんとご家族の関係性が暖かく、読んでいて微笑ましいのですが、こういうエピソードは書き留めておられたんでしょうか。

そうですね、書き留めたり、あとはテレビでしゃべるときに頭ん中で整理しているんで漫画にするのは割と楽ですね。オチまで決まってる状態なんで。あとはどう見せるかですね。漫画の描き方として、偶数ページにオチをつくったほうが良いっていうのがあるんで、そういうのを考えますね。

――ページネーションや「ヒキ」「イリ」の話ですね。

参考:「私たちの気付かない漫画のこと」第1回『うしおととら』と『アレクサンドロス』の意外な共通点
https://eonet.jp/zing/articles/_4100704.html

――漫画を読んでいると、まさにTVでそうされるように、こいでさんのお話を聞いている感覚になりました。どういう風にネームを描かれてるのか気になりました。

ネームはキャラのポジショニングとセリフを読んでほしい順番に配置させるのが分かるぐらいで描いてますね。

『パパは漫才師』未発表のネームを見せてくださいました。
『パパは漫才師』未発表のネームを見せてくださいました。

――漫画の描き方の勉強はされたんですか?

適当と言ったらあれですけど、自分が読みやすい・見やすいように考えてやっていますね。なるべくセリフを減らそうというのは意識してます。

――漫画を描く上で「こういう漫画を描きたい」と意識した作品はあるんですか?

やっぱり『北斗の拳』ですかね。全員に哀愁が漂ってるのが良いんで。やっぱり欲しいのは笑いと哀愁ですからね……。『北斗の拳』だと悪者でも実はええヤツやったりする。出てくるヤツら全員悪い人間がいないというね。ぶっきらぼうな子供でも、しゃべったらええ子やったりするじゃないですか。実は照れてるだけだったり。根っからの極悪人はいないと思うんで。

漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった-画像-03

――こいでさんは普段からそういうふうに意識して接しておられるんですか。

基本的には、そうですね。最初の印象が悪くても一回しゃべってみたらイメージが変わることも多いですよね。たとえヤなヤツだなと思っても、そいつにも親戚おって友達おんねやったら、きっとええ部分はあるはずですから。

――なるほど、素敵な考え方ですね。『パパは漫才師』単行本の扉のページに、ほかの芸人さんへのコメントが書かれてありますよね。今田耕司さんとかほんこんさんとか……こいでさんは人のポジティブな面を観察されてるんだなって思いました。笑える内容だけど、その芸人さんが良い人なのが伝わります。

漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった-画像-04

芸人は特においしくないから芸人を褒めるコメントはあんまりしないんですよ。そんなことされても照れて終わりですから。でも漫画くらいは褒めておきたいな、とは思って書いてますね。

――出てくる他の芸人さんの似顔絵がすごくお上手ですけど、やたらとよだれや鼻水が出てたり、髪がチリチリだったりしてますが……。

これは逆に、愛情をもって描いてる証拠ですね。芸人としては変に描かれた方がおいしいので。ほんとは自分を変に描きたいんですけど、僕は当然よう出てくるんで、ずっと変だったら読んでしんどいし(笑)。でも一応先輩は描いても怒らん人を選んで、先に連絡だけ入れてます。「だいぶ変に描きますけど」って。「めちゃくちゃに描いてええから」ってみんな言うてくれます。

――ほんこんさんや東野さんからは何か感想を言われたんですか?

ほんこんさんは「なんで俺だけタンクトップやねん!」と言うてました(笑)。あと「泣きそうになったわ」って。感性が豊かな人ですから。公園で僕が子供たちにせがまれて石とか葉っぱにサインするけど後日そこら辺に散らばってた……ってエピソードがあるんですけど、そこで泣きそうになったらしいです。

漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった-画像-05

――単行本最後の、泣けるお話じゃないんですね(笑)。

はい。「サイン捨てられてかわいそうやなー」って言うてました(笑)。

漫画を読んでくれた人がいる、ということが嬉しい

――公園に行くと子供が集まってる様子が漫画の中でよく描かれていますよね。こいでさんは小さい頃、どういうお子さんだったんですか?

小学校4年生くらいのことは鮮明に覚えてますね。友達がよく遊びに誘ってくれて僕も公園で野球とかしてました。

――その頃も絵を描くのがお好きだったんですか?

好きでしたけど、ほとんどラクガキですね。好きな漫画をマネして描いたり。『ゲームセンターあらし』はよく描いてましたね。あとやっぱり、中学くらいになったら『北斗の拳』。

――芸人になられてからは描いてなかったんですか?

漫画を何回か描こうとしたけど、無理やなって諦めてました。20代ぐらいに番組の企画で出版社に漫画を持ち込むっていうのはあったんですけど。

――じゃあこの『パパは漫才師』で本格的に漫画を描かれるようになったんですね。

はい。漫画を描こうっていうのは2年前ぐらいに急に思ったんですよね。

――それはどういうきっかけだったんですか?

漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった-画像-06

漫才よりも漫画のほうが向いてるなってネタが浮かぶようになったんです。最初に描いてたのは大喜利ですね。ギャグ漫画。1、2ページでフって3ページでオチをつけるような。出版社に持ち込んだら、「それもいいですけど子供漫画はどうですか」と言われたのが、今の連載につながってるんですよ。

――そうなんですね。「サンデーうぇぶり」で漫画を連載されるようになって、お笑いコンビ・蛙亭の中野(周平)さんと、ピン芸人の森本大百科さんがアシスタントをされていると伺いました。役割分担は?

お話を伺った際は原稿制作の真っ最中でした。
お話を伺った際は原稿制作の真っ最中でした。

中野がスクリーントーンを貼って、森本が背景を描いてくれてますね。森本は『カバチタレ!』のアシスタントもやってますし、2人とも絵が上手いんで。キャラは僕が描いてます。

――画材は何を使われてるんですか?

何がええかが分かってないんで、いろんなペンを使ってますね。Gペンは難しくて使えんかったから。スケッチ用のペン、筆ペン……描き方・画材もええ意味で学びすぎんように探っていってますね。

漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった-画像-08

(中野さん)スクリーントーンはCLIP STUDIOで貼ってます。

漫画『パパは漫才師』にはシャンプーハットこいでの「人をポジティブに見る」視点があった-画像-09

――私は太い線が好きですし、とても漫画として読みやすかったですね。

僕も太い線とセリフ少ないのが好きなんです。そこもWeb連載だから良かった点で。編集さんに「大きめに描いてくれ」って言われたんで。

――スマホとかパソコンで見るにはそのほうがいいんですよね。1話描き上げるのにだいたいどのぐらいの時間がかかっているんでしょうか?

ネームから全部入れたら、2日ぐらいですかね。

――はやい!

話によりますけどね。森本が大変なものもあるし、今ネーム描いてるのは人が出てくるから僕が大変なやつですね(笑)。描くたびに森本が追いついてくるっていう……。
今はだいたいのキャラとそいつが着る服が決まったんで、だいぶ慣れてきました。たまに新しいキャラを描くときは中野か森本に任すこともあります。そうせな、めっちゃ似てるキャラができあがってしまう(笑)。

――(笑)。みなさんお笑いのお仕事もされながらなので大変かと思いますが、いつ描かれてるのでしょうか。

3人そろうのは週1日ぐらいですね。ネームは僕が劇場とか収録の合間とかに描いてます。時間がないときは一瞬だけ森本と会って絵を持って帰ってもらったりとかもしてます。

――そんな中で漫画を描いていて、楽しい瞬間は何でしょうか。

Webでも本でも読んでくれた人がおる、ということが嬉しいですね。Twitterとかで感想もらうのもありがたいです。お笑いの営業に行って「本買ったよ」って掲げてたらやっぱり無視しづらい状態になってしまいますね(笑)。本買うてくれてるしなって。

漫画を広めるのは大変。でも描ききりたい

――なるほど! 逆に漫画を描いていて大変なことは何かありますか?

漫画自体には特に無いんですけど、漫画を広めるのがなかなか大変ですね。どの漫画家さんも思ってることでしょうけど……。森本とかと一緒に飲み屋に行って、お客さんに「漫画描いてるから読んでな!」って言っても絶対読まへんの分かるもんな(笑)。

(森本さん)「サンデーうぇぶり」のアプリをインストールするところから教えるんですけど……。

(こいでさん)絶対見いひんな(笑)。

見ましょう。

――読んでくれれば面白いのが分かるのに、そこに至るまでが大変ですもんね。

そうですね。連載がすぐ終わった漫画でも「なんでこんなに面白いのに」って後から知って思うこともありますね。番組で「面白いから買ってな!」って僕が言ってもなかなか「買おう」とはならんですもんね。自分が言うより人に勧められるほうがいいんでしょうね。

――口コミ的に広がるといいですよね。漫画『宇宙兄弟』の編集者・コルクの佐渡島庸平さんは「女性読者が増えるとヒットするのでは?」と、美容室に『宇宙兄弟』を置いてもらったそうです(『ぼくらの仮説が世界をつくる』/ダイヤモンド社より)。美容師さんとお客さんは「最近おすすめの音楽とか本の話」をするし自分が認める美容師さんから勧められたら読むだろう、と。

へえ、これはええこと聞いたな! いつも髪切ってもらってるところに『パパは漫才師』置いてもらおうかなあとは思ってたけど、別に関係ないお店に営業してもいいな。早速やらしてもらいます。それに美容室ってめっちゃかわいい子いるから仲良くなれるかもしれんし……。

(中野さん)そこですか(笑)。

――(笑)。では最後に今後の野望をお聞かせください。

とりあえず最初の本が売れなさすぎると今後出せるか分からなくなるんで『パパは漫才師』に関しては頭の中にあるストーリーを描ききるところまでは行きたいなと思いますね。そして森本や中野が「『パパは漫才師』のアシスタントやってました」って言えるような存在になれば、さらにいいですね。

中野さんが森本さんに相談する、漫画家の現場らしい光景も。
中野さんが森本さんに相談する、漫画家の現場らしい光景も。

――今後の展開も期待してます。今日はありがとうございました!

関連記事


この記事はいかがでしたか?
よろしければアンケートにご協力ください。

TOPに戻る

  • LINEで送る
  • はてなブックマークに追加
  • +1する
  • POCKET
  • facebook
  • ツイートする