川崎昌平が語る、労働者が漫画を描いて思考を整理するコツ。まず同人イベントに申し込もう!

2018/11/01

WRITERZing!編集部:ピーター

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川崎昌平が語る、労働者が漫画を描いて思考を整理するコツ。まず同人イベントに申し込もう!

労働者のための漫画の描き方教室』を上梓した編集者・川崎昌平さん。漫画家になったり副業にして稼いだりするためではなく、働きながらより良く生きるために漫画を描いたほうがいい、という川崎さん。曰く「表現は思考のための道具である」。でもなぜ漫画なのか? 本業がある中でどうやって漫画制作を習慣にしていけばいいのか? 直接聞いてみました。


漫画なら気軽に描けて、読んでもらえる

――『労働者のための漫画の描き方教室』読ませていただきました。本当に面白かったです! しかし472ページって、本としてかなり分厚いですよね。

労働者のための漫画の描き方教室

ありがとうございます! 分厚いですよね(笑)。企画時点では320ページでした。それがいつの間にか472ページになっていて……(笑)。ただ、本業の経験から、分厚くても読者は読んでくれるだろう、と思っていました。例えばpixivやニコニコ動画などで同じジャンルのイラストや動画であれば時間を忘れて何時間も見るユーザーはたくさんいますよね。熱量があれば通じるだろうとは思っていました。

川崎昌平が語る、労働者が漫画を描いて思考を整理するコツ。まず同人イベントに申し込もう!-画像-02

――骨太の視点と熱量があると確かに長くても読めてしまいますね。この本についてざっくり要約すると「アウトプットする(漫画を描く)ことで自分の思考が整理できる」ということかと思うんですが、改めて、なぜ漫画なのでしょう?

けして漫画制作を軽んじるわけではないですが、漫画は絵が上手くなくても、簡単な絵でも読んでもらえる気軽さがあると思うんです。家から帰って動画をイチからつくるのはなかなか骨が折れます。私の場合、小説を書こうとしたらガチになってしまう。読み返すにも時間がかかる。漫画だとTwitterやpixivなどすでに多くのオーディエンスがいるところで反応をもらえるメリットがあります。

――なるほど。もともと漫画を描き始めたのは、川崎さんご自身が労働でつらい思いをされていたときなんですよね。

はい。編集プロダクション時代は2日連続で徹夜とかは普通でした。それが嫌だったわけではなくて、モノが出来上がるのが楽しいのでやってしまっていた。健康診断で即休んだほうがいいレベルの数値が出た後、出版社に転職をしたんですが、その会社でしんどい時期に漫画を描き始めたのが最初です。それが『自殺しないための99の方法』という同人誌なんですけど。

――タイトルが強いですよね! さすが編集者、というパワーを感じるワード。

編集者って常時忙しいわけじゃなくて、待ちの時間が結構あるんですよ。これが企画書なんですが、タイトルは仕事の合間に赤マジックで描きました。

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この経緯は『労働者のための漫画の描き方教室』「はじめに」p004‐005にもある。以下、一部引用。
“限界が頂点を迎えようとしたとき、私が採った選択は、会社を休むことでもなければ、労基に駆け込むことでもなく……漫画を描くことであった。”
“なぜ当時の私がそんな真似をしたのか、今もって私は明快な説明を提示できない。唯一記憶に焼き付いているものと言えば、漫画をつくる過程で感じた、溜まった何かを吐き出していく、その心地よさのような感慨である。”
“思い考えるあれやこれやを表現として吐き出すことで、労働に疲れた私の心身は、常に新鮮な空気を吸い入れることができるようになった”

その後『労働者のための同人誌入門』という私の同人誌の1巻目を春秋社の編集者が見てくれて「ぜひ本にしないか」と言ってくれたんです。ただ同人誌はそのまま完結まで行きたかったのと、漫画入門の本をゼロベースで書いたほうがいいのではと提案したら快諾してくれて……執筆中は「好きにやれ」と根気良く付き合ってくれました。

――本の中では自分が伝えたいことを確認するために「自分自身がどういう怒りを持っているかを見つめるといい」とありました。川崎さん自身の怒りはなんでしょう?

『労働者のための漫画の描き方教室』p96-97 ©川崎昌平/春秋社
『労働者のための漫画の描き方教室』p96-97 ©川崎昌平/春秋社

「出版業界はこのままでいいのか! いや、よくない!」という怒りですね。DOTPLACEで連載している『重版未定』で表現しているのもそれですが、本の世界を守りたいという思いです。守るために変わる、そのために何をしたらいいか?という問題提起です。

習慣化にするには、まず締切を決める

――とはいえ働きながら漫画を描くのって大変じゃ……という人も多いかと思います。川崎さんは一日の中でいつ描かれているんですか?

「どういう漫画にしよう」と考えるのは日中にやって、漫画を描くのは家に帰ってから。私は妻がいますし家族とのだんらんも大事ですから、そのあと寝るまでの1時間ですね。30分下書き・清書をして、5分でスキャン、25分でデジタルの作業、という感じです。あとは土日に。

――寝る前の1時間、コツコツ描かれているんですね。へとへとに疲れていてやる気が出ないこともあると思うんですが、習慣にする・モチベーションを保つコツは?

締切を決めることですね。同人即売会、イベントに参加申し込みをしてお尻を先に決めてしまうと良いと思います。「人に見せるよ!」と宣言して、コツコツ途中段階をネットでアップしたら「欲しい!」って言ってくれる人が一人はいるかもしれない。同じイベントに向けてつくる人たちとの連帯感もありますし。
売れるものをつくる、というよりは読んでくれる人に何が伝えたいか、というのを真剣に考えるのが一番だと思っています。

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『ひとりぼっちの女の子』スタンリー・キューブリック「2001年宇宙の旅」にインスパイアされたという川崎さん初のオリジナル漫画作品。

――川崎さんは同人誌をつくるときも企画書を書かれるんですね。

はい、企画書があると、つくっているときに迷いが生じにくいというメリットがあります。それに企画ありきの同人誌は内容もブレないんです。書店流通しない同人誌でもブースに足を運んでくれる読者の方がいるわけですから、そこはしっかり仕事がしたいんです。

――企画書を含め、川崎さんはどういうフローでつくられているんでしょうか?

まずは伝えたいことを決めます。次に企画書でだいたいの起承転結のストーリーができたあと、頭に浮かんだイメージをこういう風に画用紙に描いていきます。それをスキャンして、パソコン上で原稿用紙のフォーマットに入れて、コマ線を描いて、セリフは一番最後ですね。

SKETCH

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――お聞きしていると、言葉よりもイメージが先にある、とても映画的なつくり方ですね。

そう言っていただけるとうれしいですね。大学時代に映像制作をしていたからかもしれません。

始めるコツは「技術の習得」をまず忘れる

――漫画を描く上で大事にされていることはなんですか?

意識するのは、読者に考えてもらえるきっかけを1つ2つはつくること。答えを押し付けるよりも、「みんなで考えよう」という問いを立てて共有したいと思っています。

――Twitterで一枚漫画を上げていくこともできると思うんですが、そうやって漫画を本にすることの意義というのは何でしょう?

同じ一枚の絵でも、ネットに上げられたものより紙に印刷されたもののほうが20年後に残るんじゃないかと思うんですよ。ネットのサービスはいつ終わるか分からないものもあるし、データは消えてしまう可能性もある。また、本の形にすることで自分が読み返して考えを確認しやすいという利点もあります。

――この記事を読んだ方が今すぐ漫画制作に取り掛かるには、何から始めるべきでしょう? 

まず「技術を習得しなきゃ」というのを忘れることです。最近は絵が下手でも受け入れられている漫画もある。なぜか「表現=技術の習得」と置き換わっている人がいるんです。予備校の講師をしていたとき、3浪・4浪する若者を見てきました。絵を見ると、とても上手いんですよ。でもそういう人たちは技術の習得が第一になってしまって表現したい情熱が冷めてしまっていることがある。そうなってしまったら、まず描くことから離れたほうがいい。

――3Dモデルを使って漫画がつくれる「コミポ!」などのサービスもありますもんね。

はい。そういったツールでもいいですし、著作権法に違反しない範囲で、コラージュとかでもいいでしょう。

――そういうときに題材にすべきは、必ずしも労働に関することじゃなくてもいいんでしょうか。

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結果的に労働者本人が健やかに過ごせることが一番なので、スニーカーが好きならスニーカー愛を表現するとか、「妻のごはんが美味しい」でも何でもいいけど「何を自分が伝えたいか」を考えてそこからまず始めてみることだと思います。



労働者のための漫画の描き方教室


(information)
さらに11/2(金)には同じく働きながら漫画を描く『うつヌケ』の田中圭一さんと川崎さんのトークイベントも開催予定!
この記事を読んで興味を持った方、ぜひ参加してみてください。発見があるでしょう!(※イベント参加募集は終了しました)

川崎昌平×田中圭一「働きながら漫画を描くということ」
『労働者のための漫画の描き方教室』(春秋社)刊行記念

出演:川崎昌平(作家・編集者・東京工業大学非常勤講師)
田中圭一(漫画家・京都精華大学准教授)
時間:20時00分~22時00分 (19時30分開場)
場所:本屋B&B

東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F
入場料:
■前売1,500yen + 1 drink
■当日店頭2,000yen + 1 drink

  • 川崎昌平(かわさき・しょうへい)
  • PROFILE

    川崎昌平(かわさき・しょうへい)

    1981年生まれ。埼玉県出身。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。作家・編集者、東京工業大学非常勤講師。主な著作に『ネットカフェ難民』、『知識無用の芸術鑑賞』(ともに幻冬舎)、『若者はなぜ正社員になれないのか』(筑摩書房)、『自殺しないための99の方法』(一迅社)、『小幸福論』(オークラ出版)、『はじめての批評』(フィルムアート社)、『流されるな、流れろ! 』(洋泉社)、『重版未定』、『重版未定2』(ともに河出書房新社)『編プロ☆ガール』(ぶんか社)などがある。現在は『ぽんぽこ書房小説玉石編集部』(「小説宝石」光文社)を連載中。

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