BTSのMVが「勉強」に!テレビディレクター・ スタンダードプードルさんの場合「オタ女子おしごと百科」第8回

2018/11/09

WRITER劇団雌猫

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BTSのMVが「勉強」に!テレビディレクター・ スタンダードプードルさんの場合「オタ女子おしごと百科」第8回

「いつもオタク現場にいるあの人、一体なんの仕事をしているんだろう?」

ソシャゲに延々お金を注いだり、推しているアイドルのツアーに合わせて全国を飛び回ったり……。すべてを惜しみなく推しに注いでいる彼女たちはいったいどんなお仕事をして、時間とお金をやりくりしているの?
この連載では、劇団雌猫が、日々趣味と仕事の両方にいそしむオタク女子たちにインタビュー。「仕事とオタ活の両立」の工夫や、知られざる「オタ活に向いた仕事」をひもといていきます。

第8回目は、甲子園からK-POPグループ「BTS(防弾少年団)」まで幅広いオタクアンテナを活かしながらテレビ局で働くスタンダード・プードルさんにお話を伺いました。

【本日のゲスト】

  • スタンダード・プードルさん(23歳)
  • スタンダード・プードルさん(23歳)

    テレビ局でバラエティ番組のADをしている。社会人1年目。子供の頃から家族でスポーツ番組を見る時間が長く、甲子園、相撲、サッカー、フィギュアスケートなど多様なスポーツのオタクに。最近はK-POPグループの「防弾少年団」にもハマっている。

「好き」を仕事にできるテレビ局

――本日はよろしくおねがいします! スタンダード・プードルさんはテレビ局で若者向けのバラエティー番組を作っているとのことですが、テレビ局を目指そうと思ったきっかけってなんだったんですか?

実は、最初は大学院に進もうと思っていたんです。

BTSのMVが「勉強」に!テレビディレクター・ スタンダードプードルさんの場合-画像-01

――そうなんですか?

学生の頃から社会学に興味があって、しっかり勉強したかったのですが、行きたかった研究室の先生に「君は研究向いてないんじゃないの?」と言われて(笑)。テレビ局を選んだのは、もともと、何かもの作りをする仕事につきたかったからですね。中高生の時に演劇部だったんですけど、その時に脚本と演出をやったんです。私一人じゃ大したものは作れないけれど、いろんなスタッフに支られて舞台が出来上がっていくのがすごく楽しくて。いろんな人の力を借りてする仕事っていいなと思っていました。

――進路の転換があったんですね!

今も、若者向けの番組の制作を通じて、社会について考える機会は多いんです。学生の頃に研究していたことが仕事に繋がっていて楽しいです。

――大体どのようなスケジュールで働いているんでしょう?

毎週違うから難しいんですけど……時期によって、早朝から一日中外勤、一日中編集、一日中収録と振り幅があるんです。今回は、定時勤務に近い日の例にしました。完全フレックスなのですが、だいたい10時に出社して19時ごろに帰宅していますね。

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――つねに仕事や趣味の調べものをしっかりしている! 

本当は毎朝7時前に起きて二次創作する時間を持ちたいんです。でも完全に活動停止してしまってますね……。

――長く労働する日は、どれくらいかかるんですか?

ロケがある日は、ひどい時で朝7時集合〜翌朝午前2時にバラし(片付け)になるようなこともありますね。その時は20分程度のドラマを撮っていたんですけど、演者さんのNGが多くて時間が押し、日付をまたぐ事態に。まあ普段でも、10分のシーンを作るのに朝7時半集合、22時バラシ……とかなので、そうなるよねという感じではあります。

――それだけ時間をかけて作ると、みんな毎日徹夜になるんじゃ……。

ドラマの部署にいる人は大変だと思います。バラエティー中心の部署にいる私の場合は、徹夜は本当に時々です。
仕事内容としては、ざっくりといえば「雑用」が多いです。企画を立てたり、ディレクションや演出をしたりだけじゃなく、謝礼を送ったり必要な部品を買い足したり。ロケを行う時には、カメラマンをブッキングして飛行機やタクシーをおさえたり、取材に必要な申請書をたくさん書いたり……書類仕事も多いですね。

――大忙しですね!

そうやってなんでも全部自分でやっている分、融通が利くところもあるんですよ。アポ取ったり交渉したりするのも自分なので、どうしても行きたいライブがある日は仕事の日取りを調整するとか……。早上がりするために前日長めに働くとかも許されてるので。フリーランスみたいな働き方をしてますね。

――ちなみに、入社面接では、どういったことを聞かれたんでしょう。
 
何が好きか、何に興味があるのかよく聞かれました。受かった会社の面接はしんどかった印象がなくて、楽しくおしゃべりしていたら終わったって印象なんですよね。面接の会話を通して、自己分析してもらえるみたいな感じでした。私は運動が苦手なんですけど、スポーツやダンスのオタなんです。高校野球や、K-POPグループのBTS(防弾少年団)を推しています。

――高校野球もBTSも、今年めちゃくちゃアツいジャンルですね!

甲子園に関しては、学生の頃は予選を全部見てました。当時付き合っていた彼氏と、甲子園データベースや記者の予測を見て、毎日全試合の勝敗予想をして、どっちの方が予想当てられるかって競争して、そこから推しを見つけたり……。
そんな話をしたら、面接官に「運動音痴なのになんでスポーツやダンスをしている人が好きなんだろうね?」って聞かれて。もしかしたら、自分には決して届かないけど違う世界でがんばってる人を“撮る”って立場から応援したいのかもしれないと気づきました。こうやって言語化を促してくれる人がいるのはすごいなと思って、やっぱりテレビ業界に行きたいなという気持ちが強まりました。

「分析厨」スキルが役にたつ

――オタク活動をしていて、実際に仕事に役立ったことってどんなことですか?

見ているテレビやアニメ、好きな声優さんの知識は役に立つことが多いですね。キャスティングするときも、あのドラマでみたあの俳優さんよかったよ、とか引き出しがあればあるほどいいし、映画も見れば見るほどよくて、インプットすればするほどいい仕事になるから。BTSのMVを見ることも、すごく役に立ってます。

――BTSでは誰が好きなんですか?

箱推しなんですけど、一番応援しているのはジンさんです。BTSはどのメンバーも歌がうまいんですが……、ジンさんは一番年上なんだけど、歌も踊りも20歳から始めた人なんです。全然センターになれなくて苦労していたんですがすごくいい人で。

――韓国のアイドルグループは、年上が統率していこうという風潮がとくに強いですよね。

そうそう。そんななかでジンさんは悩んで、努力して、前回のアルバムくらいからセンターにいるパートが多くなって、歌も上手くなって、今ちょっとずつ成長してるんですよ。ダンスの上達ももちろんなんですけど、人間性で好きになってるかもしれません。がんばってる人を推したくなるんですよね。BTSはクオリティーが全部すごいから……。初心者の方に見てほしいのは「FAKE LOVE」のMVです。

――か、かっこいい~~~!

テレビディレクター的な視点から見ても、BTSのMVは本当によくできてるんです。トランディション(切り替え)やカメラワークが本当にすごくて。

――計算されたスタイリッシュさがありますね。

MVごとの色のバランスもすごいんですよ。髪色とか小物の色とかもおそらく全部計算されていて、それにカラー・コレクションも絶妙。どういう空気をどんな色の組み合わせで出すかも計算されてるし、CGをどこで使うか、どういう表情を撮るか、どの角度から撮るか、その選択ひとつひとつが完璧なんです。

――甲子園の分析の話でも思いましたが、スタンダード・プードルさんって、本当に勉強熱心ですね。

「分析厨」なところはありますね。メンバーの最年少であるジョングクがとくにセンスのある人で、自分でメンバーとの旅行映像を編集した動画をUPしたりもしているんですが、先日はその動画のカット割りまで分析してしまいました……(ノートを取り出す)。

ノート

――え、ここまで書き起こしてるんですか!?

プロに見られたらちょっと恥ずかしいものですけど、これ、すごい楽しいんですよ。今の仕事をするようになって、BTSの魅力をより実感してます。

――仕事を通じてさらに趣味を好きになる。いい循環ですね。今、仕事のやりがいや、手応えになってるものってなんですか?

私はまだひよっこなんですけど、ロケとかスタジオ撮影のときに「こういう構成でやりたいんです」といったら、カメラマンさんや音声さんが「だったらこういう奥行きでとるのがいいよ」「じゃあこれも撮っておくね」なんて、プロの目線からアドバイスをくれて、協力してくれるんです。自分一人じゃできないことが、周りの助けでできる。演劇をしていたときと同じ醍醐味を感じられています。

――いいですね!

取材を通して、勉強できることも多いです。職場の先輩が「ディレクターになったら毎回違う人に会って、違う人生観と向き合わなきゃいけない。だからどれだけ経験しても違うロケを経験するたび新人みたいな気分になるし、自分を見つめ直すんだよね」と言っていたんですけど、本当にその通りで。勉強不足だなと身につまされることも多くて、驕らずに働きたかったので、いいなと思いました。

――この先、どんな番組を作っていきたいですか?

いろんなことをやるのが好きなので、これだ!というのは考えてないんです。でも、いつかドキュメンタリーを撮りたいなとは思っていて、撮りたい対象を吟味しているところです。フィギュアスケートのコーチとか、相撲の出方さんとか……華やかな舞台の裏側にいる人に興味があって。

――「裏方萌え」なんですね。

演劇をやっていた時に、演者とスタッフが対等に協力し合っている姿を見て、すごくかっこいいなと思ってたんです。顔は見えないけど、この人がいないとこの舞台は成り立たないんだ!という関係性に惹かれます。

――職場の同僚にも、オタクなのは明かしているんですか?

私のいる部署は、何かのオタクやってる人が多いですね。見ず知らずの人たちのSNSをずっと追いかけてる人とか、名前も聞いたことないようなアイドルに入れ込んでる人とか……。なので、私がオタクなのも自然にバレちゃいました。今では、同僚に「ユーリ!!! on ICE」を布教したりしてます。DVDを渡したら家族で見たみたいで、すごくハマってくれました。「母親も大絶賛だったよ、明らかに女性オタクを狙ってるとは思うけどね」とは言われましたけど(笑)。

ユーリ!!! on ICEのグッズ

推しが頑張ってると、自分も頑張れる

――今、オタク活動と仕事のバランスはどうやってとっているんですか?

私は、オタ活が仕事に役立って、仕事がオタ活に役立つっていう循環を目指しているんです。好きなことがそのまま仕事で役に立ったな、無駄じゃなかったなって思たら楽しいだろうなって。
学生最後の一年は留年していたので、就職が決まってからは、本当にオタク活動しかやってなかったんですよ。就活終わってから暇だったのもあって。でも、仕事がないと趣味も楽しくないなと思いました。受けたもので感動しても、その感情の行き場がなくてしんどかったんです。彼はこんなにがんばってるのに私は……って気が沈むことも多かったですし。BTSのメンバーも勝生勇利も23歳前後、みんなほぼ同い年なんですよ。

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――推しと同い年!

そうなんです。これまでの人生でハマった推しって、”お兄ちゃんたち”という感覚だったんですけど、今は同年代の彼らと一緒に励ましあってがんばってる気持ち。より楽しいですね。やっぱり私にとっては、仕事と趣味は両輪なんだと思います。

――テレビ局に向いている人って、どんな人だと思いますか?

好奇心旺盛な人だと思います。そうじゃないとやりたいことが見つからないですから。あと、健康な人。

――健康な人!?(笑)

もともと健康なわけじゃなくても、コツコツと健康を保てる人。結構、精神的な力を使うので、意識して心身のメンテナンスを続けないと、精神力が枯れてしまったらきついかなと思います。交渉もアイディア出しもすごく体力使うので。運動するとか、毎日湯船に浸かるとか、ゆっくり本を読むとか、そういうことが案外自分を助けてくれるんだな、と思います。

――なるほど……。まだ入社したばかりだと思いますけど、この先転職することもあると思いますか?

可能性はあると思います。まだ想像できないですし、具体的に考えてるわけじゃないんですけど、一生ここにいなくてもやりたいことがあれば転職するだろうな、くらいの感じです。周りもわりとそういう感じですね。他の業界からうちの会社に転職して入ってくる人もたくさんいますし。前の職場と全然違う場所を求めてくる人とか、元々記者だったけど、違う視点でニュースを取り扱いたくて入ってくる人とか……。

――そうなんですね。では最後に、テレビ局やマスコミ業界に就職や転職を検討している人へのアドバイスをいただけますか。

今好きなことを本当に大事にした方がいいと思います。受かったから言えることかもしれませんけど、あんまり就活のために何かする必要はない気がしていて。好きなものを友達にいっぱいプレゼンして、何が面白いか、自分の好きなものを大事にするにはどうしたらいいかをいっぱい喋って……。それが一番だなと思いますね。あと、小説を書く人なんかはマスコミの就活は強いと思います。試験でたくさん文字書かされるので(笑)。入社してからも、ここはオタクのための職場だという気がしますね。フリーダムだし取材の一環で映画や舞台に行くこともあります。楽しいことがいっぱいですよ!

スタンダード・プードルさんの主な浪費

1)商業BL書籍:15万円

Kindleを買ってからというもの、置き場所を気にせずに購入できる便利さに気づき、就職から数ヶ月で200冊以上を購入していました。絵が好みな作者さんを見つけると、すごく癒されます。

2)チケット:10万円(半年間)

BTS、演劇、宝塚、野球、フィギュア……などすべての趣味で共通するキーワードが「チケット」です。社会人になって一番変わったのが「チケットを買っても生活に困らない」こと。100%自分の稼ぎで劇場などに足を運ぶと、なんとも言えない幸福感があります。身を置くジャンルが多いのでチケット優先。グッズには浪費しません。

3)旅行:4万

旅に出てのんびりするのが好きです。観光地を回るでもなくのんびりしているのですが、カフェに行ったりご飯を食べたり、なぜか本がたくさん買いたくなったり、財布の紐が緩くなります。最近は仙台に行って、ゆっくりできました。何度かボーナスが出たら、海外に行きたいですね。

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    劇団雌猫

    平成元年生まれのオタク女子4人組。「インターネットで言えない話」をコンセプトに、オタク女子たちが胸のうちを告白した同人誌「悪友」、その書籍化となった『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(小学館)が話題。20〜30代女性の幅広い共感を得ている。

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