展示会場って誰がデザインしてるの?視線設計のため、模型を作りこむ仕事術

2018/11/27

WRITERテキスト:トライアウト・榊間信介/撮影:トライアウト・吉川寿博

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展示会場って誰がデザインしてるの?視線設計のため、模型を作りこむ仕事術

美術館や博物館で定期的に開催されている展覧会やイベントの展示ブース。どのように内容が決められ設計されているのか、また、どんな方が関わっているのかご存知でしょうか。今回はデザインプロダクトを中心に、幅広くディレクションをされている久慈達也さんにフォーカス。その方法や現在手掛けている展示について話しを伺いました。

きっかけは図書館での研究テーマ

――展示ディレクターはあまり耳慣れない職業です。具体的にはどのようなことをされているんですか?

私は主にデザインをテーマにした展示会のディレクションをメインに行っています。いま手掛けている「GOOD DESIGN AWARD 神戸展」のように、プロダクトデザインがテーマのものもあれば、家具や食、デザイナー個人の展示会のディレクションを行うこともあります。依頼としては、企画内容が決まっていてそれをどう見せるか私が空間構成するもの。展示構成と空間構成の両方を決める場合もあって、大まかな概要が定まっているもの。それとレアケースとして丸投げ(笑)の3パターン。企画も空間構成も両方をやっている人は少ないのではないでしょうか。どれも会場のレイアウトや什器、照明などさまざまな部分を決めていきます。私は業者の方とコネクションがあるので、ダイレクトに指示をしていきます。結果、完成時のクオリティも高まりますし、スピードも速いのではないかと思っています。

展示会場って誰がどうデザインするの?来場者の視線を設計するため模型を作りこむ仕事術-画像-01

――なるほど。どのようなきっかけでこの職業に就かれたのですか?

学生時代は学芸員を目指していて、近代インド思想史などを研究していました。ご存知の方も多いとは思いますが、学芸員になるのは狭き門なんです。それで大学の図書館で研究員として働いていました。その時に、図書館の新しいサービスの検討をしたことがあり、研究成果の報告として展覧会を企画したのが始まりでした。元々、展覧会を仕事で年間300本近く見ていたことに加え、博物館などでインターンをしていた経験がそのまま現在の仕事につながっていきました。

イメージを共有するための道具

――そうなんですね。目の前に大きな模型がありますが、これは実際の展示のレイアウトですね。いったい何のために模型を作られているんですか?

関係者全員で集まって模型を前に議論をすることもあれば、クライアントを説得するために模型を見せることもあります。一番の目的は、カタチにしてイメージを共有しやすくすること。これで仕事がかなりスムーズに進みます。それと、私がこの仕事を進めるうえでキーワードにしているのが、来場者の「視線」です。どうすれば驚きや感動を与えられ、飽きさせないような展示にできるか、視線を誘導していくことでそれを実現しようとしています。そのために模型を使ってシミュレーションをするんです。

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この写真は模型の内部をスマートフォンで撮影をしたもの。来場者には展示がどのように見えているのかを意識しながら修正をします。例えば右にパーテーションがあり、その奥には作品があります。パーテーションに布を垂らせば見えなくなりますが、見えない方がより驚きを与えられるかもしれない……そんなことを考えながら試行錯誤を繰り返します。

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3枚目の写真は実際に設営されたもの。模型の時点で久慈さんがかなり作り込まれているのが分かります。

こちらは、「GOOD DESIGN AWARD 神戸展」の模型の内部です。中心に設置したフレームだけの什器で来場者の動きも誘導できるように意図しています。このように模型で限りなく実際に近い形まで再現し、図面に落とし込み什器や照明などを発注します。模型を作ることで、実際の展示もかなり近い形ができ上がります。

高さや照明で人の動きを誘導

――かなり細かな作業になりそうですね。さて、「GOOD DESIGN AWARD 神戸展」の見どころはどこでしょうか?

視線を誘導させるために、展示品や什器の高さはかなり工夫しています。それともうひとつは照明です。展示品がある場所を照らすだけでなく、何もない場所に照明を当てることで、人の動きを誘導したりしているんです。また、今回は、食品や電化製品など多ジャンルの作品が数多く展示されます。下の写真を見てもらえればわかると思いますが、どこに何を配置するのがベストなのか、制約があるなかで必死に考えました。模型製作も合わせ、僕の血と汗と涙の結晶と言っても過言ではありません(笑)。じっくりと見ていただければ幸いです。

また、今回の展示は「様々な人にとっての暮らしやすさ」をテーマにした展示ということで、“逆転”をテーマに空間を作りました。例えば、通常よりもかなり低めの位置にパネルを貼ったり、普段は見せない什器の裏面を表面として見せたりなどしています。私は、伝えたい情報をどうやって来場者の体験に変換するか、それが自分の仕事の根幹だと考えています。空間の中での視線の誘導は、そのための重要な要素のひとつなのです。

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ファッションショーのディレクションに挑戦したい

――こんな細かく記入されるんですね! これまでも多彩な展示を手掛けられたと思いますが、今後やってみたいことはありますか?

そうですね。これまでに大学のプロジェクトでイタリア・ミラノで開催される家具の見本市、サローネの出展時の展示構成・空間構成をしたり、個人でやっていらっしゃるデザイナーさんの展示などもしました。どれもデザインが共通のキーワードですが、今後やってみたいことはファッションショーのディレクションです。僕の展示ディレクションの特長は、人の動きを誘導させるような仕掛けや仕組み作り。それは、ファッションショーにも活かされるのではないかと思っています。ファッションデザイナーの世界観に、僕の空間ディレクションをプラスすることで、これまでにない洋服の見え方を引き出せるのではないか、そんなことを妄想しながらショーを見ています。


GOOD DESIGN AWARD 神戸展
会期:2018年11月23日(金・祝)-12月24日(月・振休) 
会場:神戸ファッション美術館

  • 久慈達也(デザインリサーチャー、DML代表)
  • プロフィール

    久慈達也 (デザインリサーチャー、DML代表)

    http://dm-lab.com/

    1978年、青森市出身。東北大学大学院国際文化研究科博士課程を中退後、神戸芸術工科大学図書館研究員を経て、2012年にデザイン専門の展覧会企画・編集事務所DMLを設立。展覧会企画や原稿執筆のほか、デザインに関する講演や講座も担当している。

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