「ゼノブレイド2 黄金の国イーラ」作曲で光田康典「複雑な感情を表現するため生楽器にこだわった」

2019/01/29

WRITERトライアウト・西邑 由起子

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「ゼノブレイド2 黄金の国イーラ」作曲で光田康典「複雑な感情を表現するため生楽器にこだわった」

2019年1月20日開催された、Nintendo Switch「ゼノブレイド2 黄金の国イーラ」のオリジナル・サウンドトラックハイレゾ音源配信の記念イベント後、作曲家・光田康典さんに単独インタビューを敢行。見えてきたのは、ストーリーやキャラクター・画面のデザインまで踏まえてから作曲に臨む、光田さんの作品に向き合う真摯な姿勢でした。


――今回の(1月20日の)イベントはすでにゲームを楽しんだ方が来られていましたが、これからゲームをしようと思っている方々に向けて、改めて音楽を通してのゲームの楽しみ方を教えてください。

ゲーム中にいろいろなシーンがあり、ムービーと呼ばれる映画のようなシーンの場合は映像に合わせて楽曲が作られているので、映像と音楽が生み出す世界観を楽しんでいただければと思います。またいろんなジャンルの楽曲が聴けるので、そこも魅力です。

「ゼノブレイド2」のオリジナル・サウンドトラック(Cross Fade Movie)

――永遠の命を持つブレイドと限られた命の人間が織りなす感情が、このゲームの楽しさの一つかと思いますが、音楽ではどのように表現されていますか?

ヒューマンドラマがよく練られたゲームなので、限られた命のなかで自分の欲望を優先する者がいたり、誰かを守るという強い意志を持つ者がいたり、人間の複雑な感情を楽曲に落とし込むのがテーマの一つでした。自分的には挑戦でもありましたね。悲しいシーンだからといって悲しいだけの曲にはせず、主人公やヒロイン、周りのキャラクターの気持ちをピックアップして楽曲を書いています。またキャラクターが「楽園」に向かって紆余曲折しながらも進んでいく、そんな人の力強さが面白さ。だから絶望的なシーンであっても前向きさが垣間見られる曲にしています。そして敵であっても、行動には理由があり、お互いに相容れない部分がありながらも、それぞれどうやって生きて行くのか。そんな深いテーマもあります。それを楽曲でどう補完していくのかは開発当初から考えていました。「黄金の国イーラ」でアコースティックにこだわったのも、人間の複雑な感情を表現するのは、打ち込みではなく生楽器の方が向いていると考えたからです。

――キャラクターの複雑な感情を、音楽で感じ取れるようになっているんですね。ではスピンオフならではの楽曲制作時に意識されたことはありますか?

「黄金の国イーラ」は本編とは時代が違い、本編では敵だったシンが主人公。なぜ敵になったのかを紐解いていくストーリーですよね。本当はもっとシンプルに生きていたいのに、状況が複雑になって仕方がなく自分はこの道を選んでしまった。そういう背景を表現するために、できるだけ楽器を少なくしています。本編ではいろんなしがらみや感情が渦巻いているので、複雑な楽曲になっています。音楽にもそういうストーリーを作りました。

「ゼノブレイド2」本編とは視点が違う外伝的作品「黄金の国イーラ」。光田さんとプロキオン・スタジオの他に、清田愛未さん、ACEが音楽を手がける。

――そうなんですね。そのほかで作曲するときに大切にしていることは何ですか?

ゲーム画面の色彩は重要ですね。テキストでは「元気で明るく商業が発達している街」とあっても、仕様の問題などで意外とキャラクターが少ないってこともあるんです。であれば、楽しい雰囲気はあっても楽器をシンプルにするとか、街は賑やかでも住んでるキャラクターやNPCのセリフで「戦争続きで食べ物がないんだよね」とあれば、見た目が華やかでも人の感情は裕福ではないので、そういったところを汲み取るように気をつけています。街の見た目、住人のキャラクターや感情までを分かってこそ、マッチする楽曲が作れると僕は思っていますね。だから画面ができるまで書かないんです。その分、制作期間がタイトになるんですけどね(笑)。でも映像とBGMが合っていないとやる気がなくなってしまうでしょう。

――ゲームのBGMって、プレイするうえでかなり重要ですよね。また技術が発達して映像がどんどんキレイになっているので、キャラクターの感情が分かりやすくなっています。楽曲を作るうえでの影響はありますか?

ドット絵の頃は表情が分からないのでプレイヤーが感情を想像していましたし、BGMがチープであっても頭の中で壮大にしていたんですよね。だから昔のゲームは記憶に残りやすい。ところが今はプレイヤーが想像力を働かせなくてもいいくらいのビジュアルや音楽です。それを記憶に残るものにするには、映像と音楽の関連性と音楽そのものの良さが重要なので、昔に比べて制作が非常に難しくなってますね。

――記憶に残る音楽は、聴いただけでゲーム場面が浮かぶと思います。光田さんが思う、「ゼノブレイドらしさ」は何ですか?

「ゼノブレイド2 黄金の国イーラ」作曲で光田康典「複雑な感情を表現するため生楽器にこだわった」-画像-01

何をもって「らしさ」というのかは人それぞれだと思うんですが、メロディとモチーフの使い方には気を使っていますね。例えばオープニングで流れる曲は、ゲームの重要なシーンで必ず流れる、というように一つのモチーフを印象付ける方式を取っています。エンディング曲の最後の最後に、全く同じフレーズのピアノが流れるとか。関連性があり細かく練られた楽曲というところが、「らしさ」かもしれません。

――それでは最後に、特に注目して聴いてほしいところはありますか?

各キャラクターの深い部分を音楽に取り込むようにしました。表面上は分かりやすい楽曲ですが、実は音楽の中にいろいろ仕込んでるんです。ゲームをやり込む人は音楽も含めて掘り下げて考えてくれるので、そこに音楽も応えられるように、よく聴いたら異なるキャラクターのテーマ曲に使われているモチーフが絡みあっている、そんな仕掛けがたくさんあります。音楽から伝えたいことやキャラクターの感情を想像して楽しんでください。

  • 光田康典さん
  • PROFILE

    光田康典

    作曲家、編曲家、プロデューサー
    1992年スクウェア(現スクウェア・エニックス)入社、1995年「クロノ・トリガー」で作曲家デビュー。「ゼノギアス」等の作曲を担当した後、1998年に独立。フリーランスで活動後、2001年プロキオン・スタジオを設立し、同社の代表を務める。
    主な楽曲代表作に、「クロノ・クロス」「ゼノサーガ エピソードI」「新・光神話 パルテナの鏡」「イナズマイレブン1~3」「黒執事 Book of Circus」「FAINAL FANTASY XV エピソード イグニス」他多数。

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