2019/03/22

劇団雌猫「よいこのおしごと」イベントレポート。仕事もオタ活もキャリアの一部だ!?

劇団雌猫「よいこのおしごと」イベントレポート。仕事もオタ活もキャリアの一部だ!?

テキスト:トライアウト・黄田 駿/撮影:トライアウト・関水大樹

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Zing!で『オタ女子おしごと百科』を連載中の劇団雌猫によるイベント「よいこのおしごと」が、東京カルチャーカルチャーで行われました。キャリアコンサルタントとして活躍する西尾理子(にしお・みちこ)さんをゲストに招き、キャリアや転職について分かりやすくお話いただきました。劇団雌猫からはひらりささん、もぐもぐさん、かんさんが参加。ユッケさんは「推し事」とのバッティングで不参加。
今回は取り上げませんでしたが、客席から西尾せんせいに相談するコーナーも。多くの方がご自身のキャリアを考えるきっかけになったと思います。

先生!「キャリア」ってなんですか?

ひらりさ:私たちも「お仕事」と「(オタ活などの)推し事」の両立について試行錯誤しているんですが、本日は有識者をお招きしてお話をお伺いできればと思います。株式会社みこまるの代表で、キャリアコンサルタントとして活躍されている西尾理子先生です。

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西尾せんせい:はじめまして、よろしくお願いいたします。西尾と申します。

ひらりさ:先生にはキャリアについての考え方や転職活動のイロハをお話してもらいたいと思います。

西尾せんせい:最初に言っておきたいことがありまして、それは自分のキャリアは客観視しにくいということ。この仕事を15年ほどやっていますが、私自身も日々迷っています。

もぐもぐ:先生もそうなんですね。

西尾せんせい:大学卒業後に外資系の大手IT企業へ入社。第二新卒で人材系の大手会社へ転職。さらにそこからベンチャー企業へ。2年前に独立して株式会社みこまるを設立しました。でも、独立したかったからベンチャーに進んだわけではないし、人材の会社に転職するために外資系企業に入ったわけじゃない。計画してキャリアを歩むことはなかなかできません。

かん:プロの方に言ってもらえると安心しますね。

西尾せんせい:まず考えたいのは「キャリアって何?」ってことです。

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ひらりさ:簡単にいうと「経歴」ですよね?

西尾せんせい:キャリアというと仕事についての言葉というイメージが大きいですよね。しかも、未来にゴールがあってそこに向かって進むような。みなさんはキャリアの語源って知ってますか?

かん:言われてみると知らない!

西尾せんせい:実は、馬車が通った後にできる「わだち(轍)」のことなんです。つまり、キャリアというのは自分の後ろにできるもの。ですので、ゴールに向かって進んでいくというより、自分自身でコントロールできるものと思ってください。

かん:めっちゃ分かりやすい!

ひらりさ:オタクは語源が分かると覚えやすい!

西尾せんせい:「キャリアがある」「キャリアがない」という言葉を聞くことがありますが、どんな方にもこれまで歩んできた道、キャリアがあるんです。キャリアというと職業や雇用を示す言葉と思われがちですが、オタ活などの私生活も包含してのキャリアなんです。

ひらりさ:通ってきたオタクジャンルすらキャリアってことですよね!?

一同:(笑)

自分の現在地を確認しよう

西尾せんせい:キャリアを振り返り、これから自分の納得できるキャリアをつくっていく上では、自分が今どこにいて何が欲しいかを理解するのが大事になってきます。「お金」のある・なし、「時間」のある・なしを軸にして、図を作ってみました。この4象限の中で自分はどの位置にいるか考えてみてください。

自分は今どこにいる?

(会場内でアンケートしたところ、一番多かったのはCゾーンでした)
※縦軸は上に行くほど、お金に余裕がある。横軸は右に行くほど時間に余裕が。右上は「お金も時間もある」最強ゾーン。

ひらりさ:なるほど。これを自分に重ねたらいいんですね。

西尾せんせい:みなさん「最強ゾーン」に行きたいですよね? まず左上の「お金はあるけど時間が無い」人から。一般的に言うと広告代理店や商社など、出張、残業が多い方かなと思います。

西尾せんせい:この人が最強ゾーンに行くには(下図の①ルート)、収入を下げずに時間を確保するのが大切。転職も一つの手ですが、社内で残業や出張のあまりない部署に移動するのもありかなと思います。

どこからどこに行きたいか

もぐもぐ:転職してしまうと、給料が下がる可能性もありますもんね。

西尾せんせい:そうなんです。会場で一番多いのは右下の「時間はあるけど、お金が欲しい」ゾーンですね。

自分は今どこにいる?

西尾せんせい:ここの人は、今の職場はキープしつつ副業や資産運用で環境を変えずに副収入を得るのがリスクも少ないかなと思います(②のルート)

もぐもぐ:転職をすると、どんなことがリスクになるんですか?

西尾せんせい:職場が変わると環境や人間関係もガラッと変わります。働き始めてから「こんなはずじゃなかった」とズレを感じることは少なくないんです。職場の人間関係が良好だったり、休みが取りやすかったり、給与だけではない今の「働きやすさ」は、実は得難い環境だった……という可能性も大いにありますよ。

かん:今いる会社が副業禁止の場合はどうしたらいいんですか?

西尾せんせい:今の社会の流れを見ていると、多くの企業で、副業は認めていく方向にあるのではないでしょうか。なので、焦らず慎重に今の会社に残る道もあると思います。

かん:なるほど。焦りは禁物なんですね。

西尾せんせい:次に「お金も時間もない」と考える左下のゾーンです。こんなに働いているんだから、せめて給料はもう少し欲しいという場合は、業界は変えず経験を活かして、下請けから発注側に回るのがオススメですかね(③のルート)。給与が上がり、時間をコントロールしやすくなります。一方でお金は今のまま時間の余裕が欲しい場合は、独立してフリーランスでやっていくのも一つの手かなと思います(④のルート)。

かん:この場合、自分の好きなルートを辿ったらいいんですか? ⑤の夢のルートを行きたいですけど……。

西尾せんせい:私も①~④は経験したことがあるんですが、⑤はなくて。石油王と結婚するとか、宝くじを当てるとかですかね……(笑)。紹介したケースはあくまでも一例ですので、ご自身に合ったスタイルを探すのが大切です。現在地点から行きたいところまで向かうにあたって、転職によって叶えられる移動もありますし、そうじゃない場合もある。自分に何がどれだけ必要で大事かを考えることが重要です。

転職と第二新卒について解説

西尾せんせい:キャリア、現在地の話をしたところで、今日イチの大事なキーワードをお伝えします。

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もぐもぐ:「転職≠転職活動」!

西尾せんせい:先ほどもお伝えしたように転職そのものはリスクも伴いますが、自分によりあった企業を探すための「転職活動」自体は多少の注意事項はあれど、リスクは少ない。それから転職活動には、特殊な時期があってそれが第二新卒です。

かん:第二新卒ってよく聞きますけど、定義はあるんですか?

西尾せんせい:「25歳までじゃないとダメなんですか?」と言われることがよくありますが、極端な定義はなされてないと思います。企業目線で考えると、新卒を育成する余裕がないけれど人が欲しい。仕事や社会人としてのイロハは知りながら業界や業務経験はそこまで問わない、これから自社のカルチャーにもなじめそうな余白のある人材が欲しいんだと思うんです。なので、やってきたことよりやりたいことをアピールした方がいいと思います。

もぐもぐ:ここでもやっぱり焦りすぎないことが大切なんですね。

マズローさんを知っていますか?

西尾せんせい:ところで、皆さんは「マズローの欲求5段階説」って知っていますか? 今日のイベントのために見返していたら、世紀の大発見じゃないかという発見があって(笑)。

ひらりさ:そんなにハードル上げちゃって大丈夫ですか?(笑)

西尾せんせい:みなさんにとっては当たり前の話だったらどうしよう(笑)。まずマズローの欲求5段階説のおさらいですが、土台に生きていくための最低限の「生理的欲求」があります。ご飯食べたい、寝たいという欲求ですね。それを満たされると、次に「安全欲求」。今でいうとオートロックのマンションに住みたいとかですかね? さらにその上には、他者と関わりたい集団に属したいという「社会的欲求」があります。

もぐもぐ:上にいくにつれ、徐々に人間らしくなってきますね。

西尾せんせい:さらにその上には「承認欲求」があって、自分を認めたい、認められたいというものですね。そして最上位に、能力を発揮して創造的な活動をしたいという「自己実現欲求」があります。

転職≠転職活動

自己実現欲求を除く4つの欲求は「欠乏欲求」というものに分類されていて、これが足りていないと人の本能が満たしに行こうとさせるそうです。ここまでがマズローさんが発見したもので、私の世紀の大発見はこの次です。

かん:お、ようやく登場するんですね!

西尾せんせい:下2つは生きるという欲求で、言い換えるとすれば「仕事(ライスワーク)」。その上の3つは社会における自己実現的な欲求ですが、皆さんでいう「オタ活」がそれに当たるんじゃないかと!

悩みの正体を知ろう

かん:世紀の大発見だ! つまり、承認欲求は推しに関わりたい、推しから認められたい。

もぐもぐ:自己実現欲求は能力を発揮して、布教したいとかになるんでしょうか(笑)。

一同:(笑)

西尾せんせい:推しがいない人の多くは、この5段階が全て職場で完結しているかもしれません。限られたコミュニティで認められたい、能力を発揮したいってすごく難しいことですよね。ただ皆さんは仕事とオタ活を分けて考える人が多いのかなと思っていて。そもそも仕事と自己実現のフィールドが違っているのに、同じように考えてしまうとどうしても悩んでしまうので、分けて考えた方が楽なのかなと思います。

(編注:当日「ないと思って振り返ってみたら、実は推し事があった」と西尾せんせいが出したスライドには、往年の(東京)ヤクルトスワローズの飯田哲也選手の写真が……。せんせいは、学生時代、彫刻や絵の課題すべて飯田選手をモチーフにして提出していたそう)

ひらりさ:オタク万歳ですね。

西尾せんせい:好きを仕事にしてハッピーにならない人もいると思うんです。例えば旅好きの人が旅行代理店に入社したけど、忙しすぎて旅行に行く時間がなくなったとか。好きを仕事にするのはなかなか簡単ではないですが、今の仕事を好きになる方法ならできるかもしれないと思うんです。皆さんのアンケートを拝見して、「残業が少ないので、オタ活がしやすい」という声も多くて、まずはそこから今の仕事を好きになれればいいんじゃないかなと思います。

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かん:これは染みますね。視点の変化で世界が変わるというか。

まとめ:キャリアとは「在り方」

西尾せんせい:それでは本日のまとめです。キャリアは仕事だけじゃなく、人生全てを包含しています。すごく抽象的ですが、キャリアとは「在り方」だと思います。

在り方

ひらりさ:分かるような分からないような……。

かん:余白の使い方が『BLEACH』(笑)。

一同:(笑)

西尾せんせい:少し分かりやすく説明しますね。自分の外に正解を探すのではなく、自分の中に正解を見出すことが大切だということです。「仕事よりもオタ活が大事」と自信を持って生きることは素晴らしいことですが、そう考えられる人はほんの一部。ほとんどの人が現状に対して悩んでいると思うんです。そんな時に一般論で自分を判断するんじゃなく、「私自身はこれがいいんだ」と、自分なりの指針を持つことがとても重要。キャリアとは仕事や職業だけじゃなく、オタ活を含めた理想的な生き方を思い描き自信を持つこと。自分の在り方次第でキャリアはコントロールできると思えば、すごく生きやすくなりませんか?

ひらりさ:そっかー、何だか肩の荷が降りますね。

もぐもぐ:仕事とオタ活を分ける必要はないんですね。全部ひっくるめて自分であり、キャリアなんだ。

西尾せんせい:夢中になれるものがあれば人生はより豊かになると思います。キャリアとオタ活が分断されていると悩んでいる方がいるなら、それは悩まなくていいです。自信を持って、仕事と向き合ってもらえたらと思います。

かん:めっちゃいい話だった。勉強になりました。

ひらりさ:本日はありがとうございました!

  • 劇団雌猫
  • プロフィール

    劇団雌猫

    平成元年生まれのオタク女子4人組。「インターネットで言えない話」をコンセプトに、オタク女子たちが胸のうちを告白した同人誌「悪友」、その書籍化となった『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(小学館)が話題。20〜30代女性の幅広い共感を得ている。

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