2019/06/13

動物遊具・メロディペットの絵画を描く竹内みか。魅力は「人気キャラになり損ねた感」

動物遊具・メロディペットの絵画を描く竹内みか。魅力は「人気キャラになり損ねた感」

テキスト:トライアウト・黄田駿/撮影:トライアウト・吉川寿博

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遊園地や動物園へ足を運ぶと見かける、ポップなメロディとともにゆっくりと進む動物遊具、メロディペット。皆さんも子供の頃に一度は乗ったことがあるのでは? そんなモフモフの姿を求めて、北は北海道、南は熊本、果ては台湾まで飛び回り、100号のキャンバスに描き出す気鋭のアーティスト・竹内みかさんにインタビュー。メロディペットを迫力のサイズで描き続ける理由とは?

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――小さい頃から絵を描くのが好きだったんですか?

物心付いた頃から好きでした。ただキャラクターを描くわけじゃなく、グラスやビール瓶といった見たものを見たまま描いてました。

――本格的に絵を学んだのはいつ頃からなんですか?

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高校生の頃に芸大に進学したいと思って。ただ受験するためにはデッサンを学ばないといけなかったので、半年間だけ画塾に通いました。それで大阪芸術大学の短期のデザイン学科に入学しました。小学生の頃から将来は美術に関わる仕事したいと思っていたんですが、就職のことを考えたら一番安定しているだろうなとデザイナーを目指しました(笑)。

――大学卒業後はどうされたんですか?

広告代理店にデザイナーとして入社しました。3年目にもなると仕事に慣れ生活にもゆとりが出てきて。神戸のGallery Vieが主催する「絵話塾」というイラスト教室に通うようになり、そこで絵を描く楽しさが再燃したんです。

――その頃から今の作風だったんですか?

全く違いました。デフォルメされた動物のイラストだったり、好きなイラストレーターさんを模倣したようなスタイルでしたね。

安斎肇の愛のムチ

――今からだと想像できない作風ですね。メロディペットを描くきっかけは何だったんですか?

少し長くなるんですが、絵話塾に通うようになって「イラストレーターになりたい」という思いが強くなったんです。会社を辞め、通い始めて2年目のときに講師として安斎肇さんが来られていて。

――あの「空耳アワー」などに出演されている?

そうです、そうです。そこで安斎先生にポートフォリオを見せたら「全然ダメ!」と全否定されてしまって……。今まで絵を否定されたことがなかったので、すごくショックで。安斎先生は独特な言い回しをされるんですが、「愛人はやめなさい、本妻になりなさい」と言ってくださって。それは誰かの真似じゃなく、オンリーワンを目指しなさいという意味で。私自身、好きなイラストレーターのエッセンスを取り入れたりしていたので、それを見抜かれたような気になりました。

――「自分の表現したいものを描きなさい」という安斎さんなりのエールだったんですね。

そうだと思っています。それで、「君の絵にはオーラがない。もっといい絵を見るべきだ」と言われ、東京に1週間滞在してたくさんの美術館やギャラリーを回ってみたんです。

――アートの旅に出たんですね。そこで何か得られましたか?

余計に何が描きたいか分からなくなってしまって(笑)。でも今までのスタイルを捨てる決心がついて、自分が本当に描き続けていきたいモチーフ探しをするようになったんです。そう思ってからは、カメラを持って歩き回り、ビビッと来る建物や風景をとにかく撮って回りました。

メロディペットの「人気キャラになり損ねた感」が魅力

(竹内さん)そんな中で、現在は閉園してしまった神戸ハーバーランドの「モザイクガーデン」に訪れた時に、パンダとキリン、馬のメロディペットに出合ってひと目惚れしてしまったんです。その時に、このメロディペットの魅力は絵でしか表現できないなと思ったんです。

――なぜそこまで引き込まれたんでしょうか?

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哀愁……ですかね。子どもが見向きもしていなくて、3匹がポツンと宙を眺めている姿やくたびれてヨレヨレの風貌がほっとけなくなったんです。人気キャラクターになり損なった感じというか(笑)。

――母性にも近い感情が湧いたんですね。メロディペットの絵は安斎さんにもお見せしたんですか?

はい、見てもらいました。「やった、やったね!」って自分のことのように喜んでくださって(笑)。すごく嬉しかったです。またメリーゴーラウンドの屋根を描いた作品を見せた時に、「ちょっと預かっていい?」と言われ、ユニコーンのツアーパンフレットに使ってもらいました。

――それはすごい! 奥田民生さんのバンドですよね。竹内さんの作品はかなり大きいですが、サイズにこだわりがあるんですか?

最初はA4サイズくらいだったんですが、どんどん大きくなって今ではアトリエに入るギリギリの100号サイズです(笑)。メロディペットの魅力は、これくらい大きくないと伝わらないなと思っています。

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――絵画風のタッチにしているのも何か意味があるんですか?

デフォルメするよりありのままの表情を見てほしいんです。レトロな可愛らしさだけじゃない、空虚な雰囲気というか。「写真じゃダメなんですか?」ということも良く聞かれるんですが、絵じゃないとダメなんです(笑)。その子の半生を想像しながら筆でなぞることで、そこに魂が宿るような気がするんですよね。

――本当にそうですね。実際は機械のはずなのに、今にも喋り出しそうなオーラがあります。

そう思ってもらえると嬉しいです。そういう魅力は絵画じゃなかったら表現できないだろうなと思っています。

メロディペットは絶滅危惧種!

――今までメロディペット探しに何箇所くらい回られたんですか?

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50箇所くらい。国内は北海道から九州まで。海外だと台湾も行きました。

――海外にもいるんですか?

意外にもいるんですよ。分かっているだけでも、中国、韓国、ベトナム、カンボジア、インドネシアにはいます。

――全部回るとなるとかなり大変ですね。

そうなんです、しかもメロディペットは「絶滅危惧種」で、いついなくなってもおかしくないんです。最初に見つけた神戸ハーバーランドの子たちは、出会った直後に閉園して会えなくなってしまったんです。本格的に探し始めた2013年頃から、全国的に屋上遊園地がなくなり始めて。あと一歩で……というところで苦い思いを何度もしてきたので、どんどん減少してしまうこの子たちを何とか絵として残していかなくちゃという使命感に駆られようになりました。何年後までにいくつ残っているか分からないので急がないといけないんです。

――時間もお金もかかりますもんね。クラウドファンディングもひとつの手かもしれないですね。やはり実際に足を運ぶことを大事にされているんですか?

実際に目で見て、それぞれのメロディを聴いて乗り心地を感じて描きたいんです。誰かが代わりに撮影した写真を見て描いたら意味がないというか。それよりもただ会いたいという思いが強いです(笑)。

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――思い出深いエピソードはありますか?

う〜ん、それが全部思い出あるんですよね。強いて言えば、日本でここだけしかいない熊本市動植物園のシマウマ。閉園ギリギリに到着して、無理を行って入園させてもらい、倉庫の中からメロディペットを出してきてもらったんです。スタッフの皆さんにそのときお世話になったので、年末にお礼を兼ねて再訪したんですが、以前はあった目がなくなっていて……。代わりに段ボールに描かれた目が貼り付けられていて(笑)。

――まさかの荒療治ですね。それはそれで哀愁が漂っていて可愛いのかもしれませんね。

遊園地のような展覧会にしたい

――展覧会のこだわりはありますか? 以前、訪れたときはウサギの着ぐるみを着られていて驚きました。

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あれはヤフオクで購入しました(笑)。作家自身も展示会の一部にならないと思っているので、ウサギの着ぐるみは常に着用しています。遊園地に行った時のように楽しんでほしいんです。着ぐるみや絵のサイズもそうですし、香りもそうですね。

――香りですか?

会場の関係でできないこともありますが、キャラメルポップコーンの香りを振りまいたりします。あの甘いフレーバーってワクワクしませんか? それと取材時に撮り溜めた音をベースに友人に編集してもらってBGMとして使っていたりします。個展の終了間際には蛍の光が流れて、「本日はご来園ありがとうございました」と、私のアナウンスが流れます。

――かなり細部までこだわられてるんですね。

そうなんです、誰もいなくても流しますからね。「あの個展楽しかったな」と思い出してもらったり、遊園地に行った後のような感覚を味わってほしいんですよね。

――今後の展望は?

まだ行けていない50箇所を回って、現存するメロディペット全てに出会いたいのはもちろん、画集や絵本も作りたいですね。子供が見たら泣き出すような切ないストーリーの大人向けの絵本。あとはアジア圏以外で個展をしてみたいです。

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台湾のお客さんの反応が「懐かしい」「昔乗った」など、日本と似ていてたんです。でもアメリカやヨーロッパなど、メロディペットがない国だとどういう反応を示してくれるのかが気になりますね。

――夢は広がるばかりですね。本日はありがとうございました。

  • 竹内みかさん
  • PROFILE

    竹内みか

    2010年より制作をスタート。神戸在住。「UNKNOWN ASIA2019」10月25日(金)~27日(日)に出展。
    https://mika-takeuchi.jimdo.com/

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