2020/02/06

テレアポが苦手な新人営業マン、落語の話術にトークの神髄を見る

テレアポが苦手な新人営業マン、落語の話術にトークの神髄を見る

テキスト:トライアウト・澤田将太/撮影:トライアウト・内藤靖博

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新人営業マンの第一関門、テレアポがうまくいかない

こんにちは、Zing!編集部の澤田です。
突然なのですが、私のデスクの隣に池上という後輩がいるんです。営業職なのですが、隣で電話を聞いている限り、なかなかテレアポがうまくいってないようなんです。昨日も話の途中で電話を切られたのか、泣き出しそうな顔で受話器を眺めていました。

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――どうしたの?

池上:テレアポを入れているんですが、話を最後まで聞いてもらえなくて……。最後まで聞いてもらえても、アポまでには至らず、取り合ってくれないんです。

――それはなかなかに災難だね……。先週営業にいった企業さんはどうだったの?

池上:結構、強引にアポを取ったんですよ。でも直接会っても話が続かなくて、結局なんの提案もできずに帰ってきてしまいました……。

――う~ん。それじゃあ、何かを変えてみたら? 例えば話し方とか。

池上:話し方ですか?

――そう。例えば落語みたいに、セリフ調で気持ちを入れてみるとか。

例えで出したけれど、結構いい案じゃないですかね。落語家って言葉だけでしゃべりの抑揚や間を有効的に使うことで、聞いている人を引き込む話術を持っていると僕は思います。このしゃべり方を身に着けることができれば、営業としても成長できるのではないでしょうか。

――よし、池上くん! 知り合いに寄席小屋の席亭の人がいるから、ちょっと話を聞きにいこう!

テレアポは、相手をおだてることから始める

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やってきたのは、大阪府八尾市にある寄席小屋「喜楽亭」。席亭である中川政雄さんは、信用金庫の常務取締役を経た元スーパー営業マン。引退した現在は、「話し方」についての講演を年間200もこなす「元気コメンテーター」として活動。そして2017年に、この「喜楽亭」を立ち上げた話術のスペシャリストです。

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――本日は、うちの新人のテレアポを採点していただけないでしょうか。

中川:よしきた! 任せとき!

池上:それでは、普段通りに電話を掛けさせていただきますね。

音声データ①


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中川:まず、声が頼りないなぁ。提案内容に自信がないのが丸わかりの声や。先細っていく声で話しかけられても、それじゃあ聞いてくれへんよ。電話は顔が見えへんから、相手が何を考えているのかを判断する唯一のものが声や。その声が弱弱しいと、せっかく電話を取って時間を割いてくれている相手もイライラしてくるに決まってる。だから、まず声のトーンを上げて、相手を聞く態勢にさせることが大切や。それじゃあ、もう一回やってみ!

音声データ②
※会社名は架空のもので、実在の団体とは関係ありません。


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中川:よし、そしたら次は内容やな。まず「どんなことやられてますか?」、これがあかん。どんな小さな事業所でも、それぞれがやってることは「これが一番!」って思ってやってるねん。それを知らんと聞かれたら相手も「おたくには関係ありません」って切られて終わりや。

――池上くんは電話をかけるとき、HPは見てる?

池上:もちろん見ているんですが、提案する内容を決めるために規模感の確認だけで済ませていますね……。

中川:ちゃんと見ないとあかんわ。人間には承認欲求ってのがあって、自分たちがやっていることが知られている、評価されてるとわかったらどんな小さなことでも嬉しいもんや。だからHPは隅まで見て相手を褒める。そしたら「言うやないか、それじゃあなんのようや?」と本題に入れるっちゅうわけや。じゃあやってみよか!

音声データ③
※会社名は架空のもので、実在の団体とは関係ありません。


――おー、最初からだいぶと変わりましたね!

中川:まだ拙いところもあるけど、ええ感じやと思うで。あとは修業あるのみや! アポっていうのは、落語で言うところの枕やねん。ここでお客を掴んで話を聞かせないと、本題がどれだけ面白くても伝わらへん。だからこそ、頑張り甲斐があるっちゅうもんや。

池上:ありがとうございます!

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笑顔と声質でボケてもいい雰囲気を作る

――テレアポの悩みは解消したけど、他に困ってることはある?

池上:そうですね。直接会ったときに会話が続かないことですかね。先輩のように面白い話も出来なくて……。

中川:今の池上くんやったら、なんぼ面白いこと言ってもウケへんよ。まずは顔を作らないと。

池上:顔ですか?

中川:そう。まず鏡と割り箸を玄関に用意。割り箸を歯で挟んで、笑顔の練習をする。そして相手に好印象を与える顔ができたら、それを頭の形状記憶装置にインプット! ほんで出社したら、その顔で「おはようございます!」としっかりと挨拶をする。これを毎朝やるんやで。今の君の顔はハンサムやけど、真面目で固すぎる。強張った顔のままボケても、相手は身構えてるからウケるわけがないねん。だからまずは顔を崩さなあかん。

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――真面目だけではダメなんですね。

中川:そう。相手の懐に入ろうとするんやったら、気を許してもらえる笑顔が大切や。あとは、声の出し方もやな。テレアポと同じで、トーンを高くハキハキと。さらに「ごめんくださーーい」と語尾を上げて伸ばすと、元気のある声になる。語尾が下がってしまうと、自信がないように聞こえて「今回の提案はあかんな」と入口にも立たせてもらえへん。だからまずは元気よく「ごめんくださーーい」。はい!

池上:ご、ごめんくださーーぃ……

中川:恥ずかしがってるようやったらあかんで。すぐにお客のところでやるのも緊張するやろうから、まずは自分とこで朝の挨拶から始めるんやで。

池上:はい! がんばります!

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雑談を極めて、相手の懐に入り込む。

中川:顔が出来上がってから、しゃべり方の練習や。ところで池上くんは新聞を読んでるか?

池上:読めと言われているんですが……。

中川:この業界にいるんやったら、経済系の新聞だけでも読まなあかんで。今の世の中で話題になってることがなんなのか。それはしっかりと頭に入れておかないとあかん。テレビだけだと、受動的に聞いているだけになってしまって知識として蓄えられへん。だから新聞とかネットニュースとか、能動的に自分で探して読むことが大切や。
今やったら、新型肺炎ウイルスの話は出てくると思う。「大変ですね」やったら誰でも言える。けどそこで「日本の旅客機の対応は良かったですね」とか「マスクがどこも品切れで、早く買わないといけませんね」とすぐに切り返すことで、相手に「よく勉強してるな」と思わせることができるんや。

――いろんな話題を入れることで、自分の可能性に幅を持たせて、お客の懐に入るチャンスを作り出すんですね。

中川:そういうことや。特に政治や経済の話はマストやな。あとはスポーツとかのライトな話題もストックしとかなあかんわな。自分が好きな球団とか、関西やったら阪神の話題、注目の新人選手はチェックしておいて、すぐに引き出しを開けられるようにしとくと、おっちゃんたちは楽しく話ができて、気分が良くなってくる。

池上:普通の話題でいいんですね。なんか絶対にボケないといけないのかと思いました。

中川:最初はボケることを考えたらあかんねん。変にボケようとすると、間が悪くなって会話が盛り上がらへんようになってくる。会話の間っているのは自然と出るもんやから、今はまだ普通の会話でええんや。

自分の間を理解して、ユーモアセンスを磨く

――“会話の間”という話が出ましたが、具体的にはどのようなものなんですか?

中川:これは言葉で言うのは難しいな。言葉ごとに強弱をつけたり、気持ちを入れ込んだり……。とにかくいろいろと手法はあるんやけど、これは教えられへん。

池上:そんなこと言わずに、教えてくださいよ~(泣)。

中川:話の間っていうのは、一人ひとり違うって言われてて、話が上手い漫才師や落語家を真似しても、付け焼刃になってうまくいかへんのや。だから自分で見つけるしかない。でもな、話す内容に自信を持って、自分の熱意を込めれば、自然と間っていうのは完成するもんやねん。落語の世界でも教えるときは、台本を渡すわけじゃなくて、師匠が一説話をして、それを聞いて真似することから始める。そこから何回も練習して、自分の話にしていくんや。言葉であれこれ教えるんじゃなくて口承で伝えられているのは、ちゃんと意味がある。どこにイントネーションを付けるのか、この言葉にはどんな気持ちを込めるのか、師匠の話を聞きながら、自分で考えていくわけや。

池上:なるほど……。

中川:だから池上くんも、落語を聞いてみたらどうや。同じ話でも噺家によって全然違ってくるから、いろんな“間”を知って、それを反芻(はんすう)。そして自分の間を考えていったらええねん。それに話の組み立てからとか、笑いどころをどこに入れるのか、そういうユーモアセンスも磨かれていくと思うで。
俺は営業って言っても落語と一緒やと思うんや。みんな同じ商品を売ってるけど、営業スタイルは人それぞれやろ。だからまずは先輩の営業に同行して、真似ていくわけや。そしてトライ&エラー、自分でやってみて池上くんなりの営業スタイルを見つけていく。最初に失敗するのは当たりまえ、でもそこから修業を積んで、一人前になっていくのが大切なんや。できる営業マンになったら、自然としゃべりの間もわかってくるし、ユーモアセンスも磨かれる。だからトライあるのみやで!

池上:はい! なんだかやれそうな気がしてきました!

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後日、池上くんの電話を聞いていると、
「……御社は全国で様々なイベントを実施していて、そのどれもが大盛況だとお聞きしました。そこで弊社の広告プロモーションと合わせることで、さらに動員数を増やすことができると思うんですが、お話を聞いてはもらえないでしょうか。……はい! ありがとうございます! それでは明後日の10時にお伺いさせていただきますね!」。

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なんと、テレアポに成功。それにしっかりと相手を上げて、プラスになるような提案ができているように感じます。
それに、毎朝「おはようございます!」とあいさつもハキハキしていて、「最近、池上は頑張ってるな」と社内での評判も上がっているようです。

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これなら将来はスーパー営業マンになれるんじゃないかと期待しています!

今回教わった話し方や会話の間などは、営業職でなくても、普段の会話にも応用できるのではないでしょうか。一度、寄席で生の落語を聴くのもよいかもしれませんね。

eo光では不定期に天満天神繁昌亭にて寄席を行っています。是非チェックしてみてください。
天満天神繁昌亭 eo光寄席

  • 喜楽亭・席亭 中川政雄さん
  • PROFILE

    喜楽亭・席亭 中川政雄

    1942年、大阪生まれ。高校卒業後、地元の信用金庫に入庫。28歳で支店長に抜擢され、 第一線で活躍。常務理事を経て2002年に退社し、全国で年間200回もの講演を行うなど、「元気コメンテーター」として第2の人生を歩む。2017年に地元・八尾初の寄席小屋「喜楽亭」をオープンし、地元民に愛されている。

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