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最新ネットトラブル事情 [2020/9/28]

家族を守ろう!ネットの情報に踊らされない
"賢い人"のメディアリテラシー

ネットの情報とどう向き合うか

インターネットの常時接続が当たり前になり始めた2005年頃、ネットは人類の英知が集まって、それが共有される未来は素晴らしいものになるということがよく言われていました。 しかし、スマートフォンやSNSなどが広まり、個人が情報発信することが日常的になっていくと、ネット上は不確かな情報や、嘘や煽り、悪徳商法やネット詐欺まで、これまでリアルの世界にあった有象無象の混沌とした情報であふれかえってしまいました。ここ最近の10年で、ネットとリアルの世界の境目は無くなり、善も悪も人々の日常生活と隣り合わせに存在する状態になったと言えます。

これから私たちは、どのようにネットと一体化した社会と付き合っていけば良いのでしょうか?おそらく正解はありません。ここでは、どうネット上の情報と安全に付き合っていくかという観点で、考えるためのヒントを提供していきたいと思います。

ネット上の情報はウソ、ホント?

皆さんが知りたいことを調べるときどうしますか?いま一番手軽な方法は、ネットで検索するということです。よく「ググる」という言葉が使われますが、それはGoogle社のネット検索サイトでキーワードを入力して検索するということを意味します。

でも、いざ検索してみると、驚くほどの数の検索結果が出てきます。中でも人々の関心の高い医療や美容などの事柄には、とんでもない量の多種多様な情報が検索結果に表示されます。そしてリストの一番上には検索キーワードに合わせた「広告」も表示される始末。もう、どれを選んだら、自分に必要な情報が手に入るのか、検索した後の情報の取捨選択の方に時間がかかってしまいます。

なぜこんなにも、有象無象の情報が出回るのでしょうか?

ネットで無料利用できる検索サイトやニュースサイト、専門情報サイトなどには、全てお金がかかっています。そして継続的に運用していくために、コストを回収し、ビジネスとして儲けを出す必要があります。無料サイトやウェブサービスの収入は、サイトに表示する広告収入や、サイト訪問者へのプロモーションを行う事業で賄われています。
また、商売をしている人であれば、自分のビジネスに集客するために、検索結果でも上位に表示されたい事でしょう。

ネット上の情報は、このような商業的な動機で公開されているものが非常に多いと考えてください。集客を増やすためには、受け手の目に留まりやすい誇張された表現が多用されます。もっとも情報ソースとして信頼性の高い新聞社やNHKなどのニュースサイトでも、読者の関心を煽るインパクトのある見出しを付けることがよくあります。

人の感情を煽るような攻撃的なタイトルでも、記者の書いた内容はいたって客観的なケースもよくあります。これは、編集者が真面目に集客するための工夫をした結果とも言えるのですが、背景に集客数ありきのメディアのビジネスの仕組みがあることを、知っておくことが大事です。

ネットの情報の真偽を確かめる方法はいくつかありますが、次のような3つの観点で見る事がとても大切です。

 1) 調査や研究などのエビデンス(根拠)がはっきり示されているか?
 2) 情報の発信者は誰で、情報ソースはどこか?信用に足るのか?
 3) その情報によって誰が得をするのか?

意外にも私たちが、真偽を確かめようとしても、確信できる情報にたどり着くことはとても困難です。その場合、より信頼性の高い情報はどこにあるかを考えることが大切です。

例えば「がん治療」の情報を得ようとした場合を考えてみましょう。
その場合、最も信頼できると考えられるのは「国立がん研究センター」のホームページでしょう。なぜならお金儲けではなく公共の利益を目的に運営されていると考えられるからです。

このような観点で考えていくことで、真偽を判断するセンスが養われていくものと考えます。

<ワンポイント情報1>

根拠の無い情報を掲載したウェブサイトが問題になった事件が、2016年末に起きました。「WELQ」という医療関係の情報サイトで、ここで問題になったのは、サイト訪問者の数を稼ぐために、ネット上の情報をコピーしたり、不確かな情報、嘘の情報を次々に作って掲載するという、運営者と記事ライターの存在です。メディア運営会社は、記事を執筆したライターに責任転嫁して難を逃れようとしましたが、最終的に親会社の判断でサイトの休止と経営者の謝罪会見が開かれるという事態になりました。

感情をあおる情報、正義感の暴走とネット炎上

ネット上の情報は、なにも商業的な目的のものだけではありません。自分の主義主張を通すためや、個人的な欲求のために発信された情報もたくさんあります。

その中で、人々が反応しやすいカテゴリーのものがあることはご存知でしょうか。最近では、地球環境問題を訴えているグレタさんの話題などは、賛否両論を巻き起こしました。また、芸能人の不倫、反社会組織との癒着などの話題。政治家の不適切発言。いじめ問題の隠蔽。韓国や中国を批判する記事などなど。皆さんも、思い当たる節がたくさんありますね。

以下に挙げるような項目に当てはまるものは、人々の感情的な反応を得やすく、ネットの集客を得やすい話題です。

  • 政治、宗教、国家、民族の話題
  • 地球環境の問題
  • 男女差別、LGBTなどのジェンダー問題
  • 差別、人権侵害などの話題
  • 災害や事故などの話題
  • 恋愛、結婚、不倫などの男女問題
  • 違法行為、企業の不祥事などの話題
  • 有名人やお金持ちなど嫉妬の対象になる人の話題

これらは、人々の様々な感情を呼び起こします。「感動した」「うれしい」「可哀そう」「助けてあげたい」といったポジティブな感情。「怒った」「悲しい」「傷ついた」「許せない」などのネガティブな感情。

その中でも怒り、憤りのネガティブな感情が最もエネルギーが高く、人から人へ伝播しやすいのです。その極端な例が、ネット上での暴動ともいうべき、炎上、個人情報の暴露、バッシング、誹謗中傷などです。

ネット炎上に加わる人は、わずか1.1%という現実

SNSの発達によって、誰でも自分の感情をすぐに公共の場に発信することができるようになりました。「許せない」「こらしめてやりたい」といった極端な行動をネットを通じて行う人も多くなったように見えます。

しかし、本当にそういう人が増えているのでしょうか?ネット炎上について学術的な研究をされている山口真一氏の著作「ネット炎上の研究」によると、ネットユーザーのわずか1.1%の人がこのネガティブな情報発信を強烈に行い、その結果20%ぐらいの人に情報が伝わり、あたかも世の中の全員が非難しているようなイメージを作り上げているということです。実際に世の中の8割以上の人は良くも、悪くも思っておらず批判に加わることもありません。

自分の周囲の人間関係で考えると、100人に1人の極端な行動を取る人の言動に、その他の人の全てが同意することなどそうそうありません。「またあの人が変な事を言い出した」と言われるのが関の山でしょう。しかし、SNSで伝えられる情報は過激な見出し、文章の方に目が行ってしまい、情報発信する人が信用に値するかどうかまで見られない事がよくあります。これがSNSの特徴であり、炎上を簡単に拡散、増幅させる要因となっているのでしょう。

そして、もうひとつの炎上を助長する要因として、このわずか約1%しかいない人の起こした騒動を、テレビなどのマスメディアが面白おかしく取り上げてしまうことがあります。よくニュースで「ネット上での意見では」と前置きして紹介された情報は、このわずか1%を取り上げている可能性が極めて高いということです。

ネット上のニュースや投稿、テレビのワイドショー、バラエティ番組で扱われる話題を見て、感情がゆすぶられたら、それは関心を集めるために意図的に流されている情報なのかも知れないと考えてみてください。そして、真偽を見分ける3つのポイントについて、じっくり情報を読み込んで見ることをお勧めします。

<ワンポイント情報2>

最近では、煽り運転で逮捕された男性と同乗していた女性の事件がありました。ネットの動画やテレビ報道を見たネットユーザーが、一緒に映り込んでいた同乗女性の映像を見て、まったく見当違いの女性をネットから探し出して、名指しで誹謗中傷を始めたのです。その間違った情報に踊らされた多くの人が情報を拡散しました。誹謗中傷の被害にあった女性は情報を拡散した人を突き止め謝罪を要求し、応じない人には訴訟することとなりました。内容を確かめずに安易に炎上に加担したために裁判沙汰になってしまうこともあるのです。

正しく怖がるインターネット、情報の判断力を養うために

ここまで紹介してきた内容は、ネット上にあふれる情報、ネットを通じてやってくる情報の見分け方のほんの一部にしか過ぎません。

情報の確かさを調べることは、意外に骨が折れる作業です。たとえ信用できる知人から教えてもらった情報でも、それが正しいとは限りません。日頃から、自分がネット上の情報で、煽られたり行動させられたりしていることを、客観的に見つめること。それが賢くネット上の情報と付き合っていく第一歩だと思います。特にこれから、社会に出ていく私たちの子どもにはこのネットリテラシー、賢いネット情報との向き合い方を教えていくことが重要であると考えます。

最後に、ネットトラブルで困った時に相談する窓口を記載しておきます。不安に思ったり、自分の判断に自信がない場合は、一人で悩まずぜひ相談してみることをお勧めします。 世の中には、困った人を助けるための専門知識をもった人が必ずいることを心にとめて、楽しく、便利にインターネットやスマートフォンを活用していただけたらと思います。

【ネットトラブルの主な相談窓口】

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